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しょっぱなから妊活

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 初恋なんて実らない。遠目に見ているだけでよかったのに、欲を出したから裏切られたのだと思っている。
 愛されていない相手と子どもを作る?
 別れると分かっているのに、子どもを作る?
 そんなのは、バカげていると思うのだ。

 たった今、私はバカさ加減にうんざりしながらも、自分の正直な身体の反応に途方に暮れていた。
 ぱちんぱちんとリズミカルに太腿の裏にぶつかる元カレの腰骨を感じて、乱れそうな声のトーンを必死で一定に保ちながら、元カレに告げる。

「もうっ、さっさといってよ……!」

 私の中におさまる彼自身は念入りに内部こすりあげて、緩急をつけてきた。間隙を開けずにぐいぐいと這いのぼる動きは私をオルガズムにつれていきたいときの、定番だ。こちらの反応をみて、その都度角度もスピードも変えてくる。
 でも、定番を定番として受け入れるためには、関係が安定していなきゃいけない。
 私達の関係は安定してないし、崩壊しつくしたと思っている。

「まだ、余裕あるみたいだな」

 たった今、私の裸の胸に冷たい唇で吸いついてきていたのは、一年前に自分をふった元カレであり、たった今強制的に懐妊させようとしてくる相手だ。彼の舌は温度が低く、爬虫類の肌を思わせた。

 元カレの胸を押して唇を離させれば、彼の口元に唾液の糸が光り私は目を逸らした。指先で胸の先をねじりあげられれば、内側からじれったい感覚が湧きあがってくる。唇を噛みしめて、懸命にやり過ごした。

「そういうの、いらないからっ。さっさと出して」
 表情の読み取りにくい温度の低い眼差して、こちらを見おろす男、これが私の元カレ、秋彌輝夜だ。影の落ちる高い鼻筋と目元の涙袋が色っぽく、その表情に一時見惚れてしまっていた。向かい合って結ばれるときに、いつも影が落ちる彼の顔を、かつての私がどこか切ない思いで見ていたことを思い出す。

 でも今は、彼の顔が好きなわけじゃない、愛着があっただけだ、と言い訳をする。
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