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愛娼として

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 その日も呼びつけられて王家の寝室に行ってみれば、嫉妬深い幼なじみが待っている。
 もうじき皇帝として即位するようだ。宰務官も行政官もその身分を疑うことはない。

 彼もまた「印」を持っているからだ。
 かつて経験のある「印を調べるための交わり」をしようとすれば、顔を真っ赤にして必要ない、と断られる。
 彼の容姿を見れば王太子として疑う者は一人もいない。彼は皇帝とリリアナとの間の落胤なのだ。


「そろそろ預言者はやめたらどうだろう?」
 そんな風に言ってから、私の手を取り寝台へといざなう。もう婚姻を望むことはしない。けれど、十一回目の人生で初めて子どもを成していた。


 血塗られた剣士の役目は、今では病弱な剣士が担っている。箱入りの身の上では荷が重い仕事だが、静寂な森の中は彼の病気を平癒される効果があったらしい。彼の病は環境由来だったようだ。

 剣士の手によって聖女の森には相変わらず何体もの遺体が転がり続けているが、聖女信仰はいまだに消えない。
 新しい聖女が生まれてしまったからだ。
 私たちの娘として。


 王太子からは懇ろな遊び女として毎夜のように寝室へ呼ばれる。今もまた私は、
「ちゃんと、前から重ねてください」
 と言うのだった。
 そうすると、前世のことを何度もなじらないでくれ、と何度目でも初々しく恥ずかしがる。

「おいで、もっと近づいて」
 腕を広げる彼のラピスラズリ色の瞳は柔らかに光る。

 私はまた聖女として転生するだろうか?
 それは分からないけれど――――

 今は何も考えずに初恋の幼なじみの腕におさまり、きつく抱き合う。
 その髪からはもう孤児院の香りはしない。


                     了
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