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あるのは裏切りだけ
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王太子の逝去はルドキアでは後継者探しに大わらわだ。正室がこれまでの謀略を暴かれ後宮に追いやられる。宰務官の息のかかった候補者が次々と現れ始めていた。
しっかりと「印」を持っていることは、私のお墨つきだ。
そんな折、皇帝から直々にお呼びがかかった。レグノ経由の通達だと聞き、いやな予感がする。お仕事ですよ、とだけレグノは言った。
皇帝が呼び出したのは、謁見室ではなく宮殿の一室だ。高い天蓋付きの寝台があり、皇帝はローブ姿で待ちわびていた。
「話はついているのか」
皇帝は伴って来たレグノに視線を向けて問う。
「お仕事だと、それだけはお伝えしています」
「謀りましたね」
私はレグノに言うけれど、責めるつもりはない。
「あなたにとって悪い話ではないはずですよ。皇帝のうら若き後妻におさまる。後継者を産めばあなたの地位は安定する」
「宰務官様。私がこれまでお伝えしてきた、警告を無視されるおつもりですか?ご自身の命運が惜しくないと見えますね」
「孤児院出身の、聖女。後ろ盾はないが、聖女の力を持っている。だとすれば我が国のために使っていただくのが一番いい」
しっかりと「印」を持っていることは、私のお墨つきだ。
そんな折、皇帝から直々にお呼びがかかった。レグノ経由の通達だと聞き、いやな予感がする。お仕事ですよ、とだけレグノは言った。
皇帝が呼び出したのは、謁見室ではなく宮殿の一室だ。高い天蓋付きの寝台があり、皇帝はローブ姿で待ちわびていた。
「話はついているのか」
皇帝は伴って来たレグノに視線を向けて問う。
「お仕事だと、それだけはお伝えしています」
「謀りましたね」
私はレグノに言うけれど、責めるつもりはない。
「あなたにとって悪い話ではないはずですよ。皇帝のうら若き後妻におさまる。後継者を産めばあなたの地位は安定する」
「宰務官様。私がこれまでお伝えしてきた、警告を無視されるおつもりですか?ご自身の命運が惜しくないと見えますね」
「孤児院出身の、聖女。後ろ盾はないが、聖女の力を持っている。だとすれば我が国のために使っていただくのが一番いい」
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