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王太子暗殺
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染まりきった髪を脱色し、ブロンド髪に戻した。
レグノが侍女を使わせてきたので、髪に櫛を入れて、禊をすませて白いローブに身を包んだ。前十回の人生で行って来た神殿での洗礼式を今度は帝国の教会で行う。
その後、レグノに案内されて城へと行く。聖女の祝福を得れば病気の平癒が可能だと皇帝や王太子には告げているようだ。
謁見室に行ったとき、私は目を疑う。ラピスラズリ色の瞳に亜麻色の髪の毛を持つ王太子殿下は、柔らかな笑みを浮かべ、
「よく来てくれたね、ジェリー。会いたかった」
と言った。
「初めまして、アルヴィース様。この度はお招きいただきありがとうございます」
「清らかな空気を感じられるのは、君が聖女だからなのかな」
「それはもったいないお言葉です」
私はアルヴィースの姿を観察する。
丁寧な仕草、柔らかな笑みに気品あふれる風格。王太子にふさわしい方だ。出会ったことは一度もないけれどその容姿には、安心感のみが募る。
既にいくつかものヒントが与えられてたことを、今になって気づくのだ。
「聖女の祝福とはどんな風に得られるものなんだい?」
アルヴィースが私に向けているのは単純な好奇心だと思う。清らかなのはこの方自身だ、と私は思った。
「人払いをした静かな場所で、行いましょうか」
「それならば、心当たりがありますよ」
レグノが言い添えれば、信頼を寄せている様子のアルヴィースは即座に頷く。
――――なんて、愚かで清らかなの。
レグノが侍女を使わせてきたので、髪に櫛を入れて、禊をすませて白いローブに身を包んだ。前十回の人生で行って来た神殿での洗礼式を今度は帝国の教会で行う。
その後、レグノに案内されて城へと行く。聖女の祝福を得れば病気の平癒が可能だと皇帝や王太子には告げているようだ。
謁見室に行ったとき、私は目を疑う。ラピスラズリ色の瞳に亜麻色の髪の毛を持つ王太子殿下は、柔らかな笑みを浮かべ、
「よく来てくれたね、ジェリー。会いたかった」
と言った。
「初めまして、アルヴィース様。この度はお招きいただきありがとうございます」
「清らかな空気を感じられるのは、君が聖女だからなのかな」
「それはもったいないお言葉です」
私はアルヴィースの姿を観察する。
丁寧な仕草、柔らかな笑みに気品あふれる風格。王太子にふさわしい方だ。出会ったことは一度もないけれどその容姿には、安心感のみが募る。
既にいくつかものヒントが与えられてたことを、今になって気づくのだ。
「聖女の祝福とはどんな風に得られるものなんだい?」
アルヴィースが私に向けているのは単純な好奇心だと思う。清らかなのはこの方自身だ、と私は思った。
「人払いをした静かな場所で、行いましょうか」
「それならば、心当たりがありますよ」
レグノが言い添えれば、信頼を寄せている様子のアルヴィースは即座に頷く。
――――なんて、愚かで清らかなの。
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