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暗黒剣士

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「宰務官殿は男色家なのか?」
「女性にいいようにされるのがお好きらしいわ。張り型も鞭もご自分でご用意してくださる」
 はあ、とゼリュードがため息のような声を出した。気乗りしない時の返事だ。

「あなたからの教えがかなり活きている」
 私が悪戯心からあえて足を広げてみせれば、はしたないことはやめろよ、と言って彼は私の膝頭を合わせ、足を閉じさせた。
 この場所は誰にも許していない。許そうとしても、彼が許してくれないからだ。

 ゼリュードは私の手を取る。相変わらず、宝物を扱うかのように、丁重な仕草で指先に口付けてきた。

「この清らかな手で、男たちを導いていくのだと思うと。理解はしていてもやっぱり苦しい」
「そんなことを今さら言ってどうするの。私の稼業なのよ」
「今さらなのは、君だけなんだよ。オレはずっと心の中では反対している」

「あなたが、教えてくれた」
 私はゼリュードの手を握りかえす。
「そのおかげでこうしてお屋敷を持てているの。ルドキアにも招き入れられた」

 彼はいつも浮かない顔をしている。理由は私の稼業だとは分かっているけれど、やめるわけにはいかないのだ。
 聖女信仰を血で汚すまでは。

「さっきはああ言ったけれど。行方不明と国へ送り返すのでは、どちらが効果的かな」
「行方不明にして使者を引きずり込むのも手じゃない?」
「分かった」

 そう言ってゼリュードは倒れた伯爵子息をシーツでくるんでしまい、抱えあげた。漆黒の聖女の元に、捨て置かれるようだ。
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