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皇帝の印

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 テントが荒らされたとの話は、なぜか宰務官の元に届いていたようだ。見舞金なるものを持った遣いがやって来る。
「ジェリー、住まいを移してはどうだろう?」
 レグノはそう言って、屋敷を用意しようかと提案して来るのだった。

 この頃は宰務官の元へ招かれるようになっている。その間にも何度となくテントが荒らされており、宰務官の自作自演を疑うのだ。
 私はレグノ相手に「仕事」はしていない。

 彼はお茶会をしよう、と言ってお茶を飲みかわすために私を招くだけだ。女性がお好みじゃないかもしれない、と私はひそかに思う。

「王太子が病弱なんだ。皇帝は側室の子を後継者に立てたいようだけれど。ことごとく謀殺されていく。正室の気性がとてつもなく荒くてね、どうしようもない」
 レグノは肩をすくめる。紅茶に焼き菓子を添えて、まさにお茶会を楽しんでいた。

「そのような内部事情を私に漏らしてしまっていいのですか?」
「良くはないね。けれど、私が個人的に君を気に入っているんだ。貴婦人やご令嬢方とはまた違った面白味がある」
「それは、それは。どうもありがとうございます」
 私は紅茶をすする。こんなお茶会の機会は、これまでの人生で経験したことはない。

「色好みの皇帝陛下には何人もの子どもがいる。我こそは後継者だと言ってくる者も多い。それをさばき切るのに、とても手を焼いているんだ」
「いっそのこと皇帝の資質のある者を、王太子だと偽ってまつりあげてしまえばよいのでは?病弱であっても正室の王太子を望まなければいけないほど、強い血統主義なのですか?」

「皇帝の子には必ず印が現れ出るから、紛れることはできないんだ」
「なら余計と簡単です。印がない者は門前払いでいいでしょう」

「ただし印が出るのは、性的に興奮しているときだとか。そうではないとか」
「なるほど?」
 だからこそ、私に声がかかったのか、とここで理解する。
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