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彼の真実、私の現実
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店に出て開口一番、
「六割がた話はついたな」
とゼリュードは言う。そんなに感触がよかったとは、私は思わない。
「普通の娼館ならジェラートの見た目があれば十分だ。お客も勝手に盛りあがって去って行ってくれるだろ。でも、高級娼館となればそれなりの技術がなければ難しい」
「そうみたいね」
私は嘆息する。自ら娼婦を志しながら、覚悟の甘さを痛感した。
「婚姻経験なんて意味がないのね。相手がどんな身分であろうと、私はただ好き放題を許していただけ。娼婦も同じで足を開けばいいんでしょ、と簡単に思っていたかもしれない」
私が呟くと、ゼリュードは猥雑な表情をする。彼は私の婚姻経験の話を信じたわけじゃないだろうに、どうしてあんなほらを吹いたんだろう?
「オレが鍛えてやるよ、明日までに。ジェラートが客を取るために十分な技を使えるように」
――――なにを、言っているの?
ゼリュードの顔を見あげれば、彼はその瞳に悲しみの色をたたえていた。
「ジェラートが転生しているのをオレは知っている。これは十一回目だということも。前回盗賊に襲われたことにして自害してしまったことも」
お腹の辺りからぞわっと湧きあがるものを感じて、私は言葉をつげない。
「オレとの婚姻が、死ぬほどいやだったのは知ってるんだよ」
「ゼリュード、なんで……」
「ジェラートと結ばれたかった。だから何度も転生して来たし、ジェラートがどこに召し抱えられても絶対にそばにいようと誓っていたんだ。でもさ」
ゼリュードは私の頬を包み込むようにして手の平を触れさせた。彼のラピスラズリ色の瞳は悲しい瞳をたたえている。
「死なれてしまったら、もう諦めるしかない。オレとの婚姻生活が自害するほどいやだったとは、思わなかったんだ」
ゼリュードはぶんぶんと頭をふった。
「悪かった、ジェラート」
「ゼリュード、それは」
違うっ、と言おうとしたら、手を引かれる。
「宿を取ろう。そこで、教えてやる。オレが知っている限りの性技を。そしたら本当にお別れだ」
「六割がた話はついたな」
とゼリュードは言う。そんなに感触がよかったとは、私は思わない。
「普通の娼館ならジェラートの見た目があれば十分だ。お客も勝手に盛りあがって去って行ってくれるだろ。でも、高級娼館となればそれなりの技術がなければ難しい」
「そうみたいね」
私は嘆息する。自ら娼婦を志しながら、覚悟の甘さを痛感した。
「婚姻経験なんて意味がないのね。相手がどんな身分であろうと、私はただ好き放題を許していただけ。娼婦も同じで足を開けばいいんでしょ、と簡単に思っていたかもしれない」
私が呟くと、ゼリュードは猥雑な表情をする。彼は私の婚姻経験の話を信じたわけじゃないだろうに、どうしてあんなほらを吹いたんだろう?
「オレが鍛えてやるよ、明日までに。ジェラートが客を取るために十分な技を使えるように」
――――なにを、言っているの?
ゼリュードの顔を見あげれば、彼はその瞳に悲しみの色をたたえていた。
「ジェラートが転生しているのをオレは知っている。これは十一回目だということも。前回盗賊に襲われたことにして自害してしまったことも」
お腹の辺りからぞわっと湧きあがるものを感じて、私は言葉をつげない。
「オレとの婚姻が、死ぬほどいやだったのは知ってるんだよ」
「ゼリュード、なんで……」
「ジェラートと結ばれたかった。だから何度も転生して来たし、ジェラートがどこに召し抱えられても絶対にそばにいようと誓っていたんだ。でもさ」
ゼリュードは私の頬を包み込むようにして手の平を触れさせた。彼のラピスラズリ色の瞳は悲しい瞳をたたえている。
「死なれてしまったら、もう諦めるしかない。オレとの婚姻生活が自害するほどいやだったとは、思わなかったんだ」
ゼリュードはぶんぶんと頭をふった。
「悪かった、ジェラート」
「ゼリュード、それは」
違うっ、と言おうとしたら、手を引かれる。
「宿を取ろう。そこで、教えてやる。オレが知っている限りの性技を。そしたら本当にお別れだ」
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