悪女で候。十回の前世で聖女はやめました、現世は聖痕を血痕で塗りかえます。

KUMANOMORI(くまのもり)

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娼館をめざして

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 翌日、祝福の儀式で聖痕が浮かびあがってしまったことで、孤児院内は大騒ぎになる。
 髪の毛を切ったくらいではダメだったか、とがっかりしたけれど、逃げる手はずは立っていた。私は夜明けを待たずに、逃げることにする。

 ザックに詰めた荷物を持ち外套を身につけて、私は孤児院を飛び出した。目指すのは、聖女信仰に反旗を翻している帝国軍の領地だ。
 聖女信仰と戦うつもりだったし、我が国の防衛の逆をつくことを考えていた。我が国がどんな侵略をされたらいやなのか。聖女として生きてきた十回の人生で知っていた。

 軍人御用達の娼婦として、あるいは誰かの妾、預言者となり、口添えしようと思っている。
「聖女なのに淫ら、昼は聖女、夜は娼婦のようだな」
 と言われ続けたことに、嫌気がさしていた。

 ならば、最初から娼婦になろうと決める。

 孤児院のある小国ルートグリムから出て、焦土となり白茶けた土ばかりの街道を東方へと進んでいく。要塞都市と化しているルドキアへと向かった。徒歩では難しいので、街道から馬車に乗り込むことにする。
 手持ちは孤児院で貯めていった微々たる身銭なので、きっと足りない。そのときはこの身体を使ってどうにかしよう、と思う。

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