5 / 49
十一回目の宣言
1
しおりを挟む
18歳の成人を迎える前夜に私は断髪した。成人の祝福の儀式で、聖女として聖痕が現れてしまったことで、前十回の人生で聖女としての歩みがはじまってしまった。私は魔力を宿すとされる髪を切る。
そして、儀式が終わったらすぐに孤児院を出ると決めていた。
聖女がいると聞きつけた神官が迎えに来たことにより、私は神殿付きの聖女にさせられたと記憶しているからだ。
友人のキャロンに断髪を手伝ってもらい、染色の葉を手配してもらった。
ブロンドヘアをワインレッドに染める。
「本当にいいの?綺麗なブロンドなのに」
と言いつつも、キャロンは手伝ってくれた。短くなった髪に染めの葉で色を入れ込んでいく。
「ウィッグを作って販売するのはどう?ブロンドヘアを好む方はいらっしゃる様子だし。さらに魔力がこもっているとうたえば、高値で売れるかもしれない」
と私は言う。髪の束をキャロンに渡す。
「なるほど、いいアイデアかも」
「いくらでも伸びてくるもの。身銭が手に入れば、身を立てられるかもしれない」
院内の共用スペースで髪染めをしていたら、ゼリュードに見つかってしまった。
「ジェラート?」
ゼリュードが慌てた様子で声をかけてきた。私の姿を見て、驚きの声をあげる。あ、と私は声をあげて、そっぽを向く。
ゼリュードは同じ孤児院で育った、仲のいい幼なじみだ。さらに言えば、私の初恋の相手であり前世では夫だった。
ただ前世の婚姻で私は彼の本音を知っていたので、現世ではもう、彼に近づこうとは思わない。
あんな風に優しさの欠片もない人だとは、知らなかった。
そして、儀式が終わったらすぐに孤児院を出ると決めていた。
聖女がいると聞きつけた神官が迎えに来たことにより、私は神殿付きの聖女にさせられたと記憶しているからだ。
友人のキャロンに断髪を手伝ってもらい、染色の葉を手配してもらった。
ブロンドヘアをワインレッドに染める。
「本当にいいの?綺麗なブロンドなのに」
と言いつつも、キャロンは手伝ってくれた。短くなった髪に染めの葉で色を入れ込んでいく。
「ウィッグを作って販売するのはどう?ブロンドヘアを好む方はいらっしゃる様子だし。さらに魔力がこもっているとうたえば、高値で売れるかもしれない」
と私は言う。髪の束をキャロンに渡す。
「なるほど、いいアイデアかも」
「いくらでも伸びてくるもの。身銭が手に入れば、身を立てられるかもしれない」
院内の共用スペースで髪染めをしていたら、ゼリュードに見つかってしまった。
「ジェラート?」
ゼリュードが慌てた様子で声をかけてきた。私の姿を見て、驚きの声をあげる。あ、と私は声をあげて、そっぽを向く。
ゼリュードは同じ孤児院で育った、仲のいい幼なじみだ。さらに言えば、私の初恋の相手であり前世では夫だった。
ただ前世の婚姻で私は彼の本音を知っていたので、現世ではもう、彼に近づこうとは思わない。
あんな風に優しさの欠片もない人だとは、知らなかった。
0
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる