ちょうどいい私は、無理めの宮久土先輩のくるぶしをかじりたい

KUMANOMORI(くまのもり)

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私達の約束

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 ベッドに移動して、ついばむようなキスをした。
 先輩の静かな瞳に私の姿が映っているのが見える。

「今もちょうど、芦野さんが好き」
「ちょうどいい、ですか?」
「うん」

「ちょうどいいって、完璧って意味になっちゃいますよ」
 ずっとそういう意味で使ってるよ、と宮久土先輩は言いながら、私の右目の瞼にキスをしてくる。

「私も先輩を待っていました、ずっと」
 私は思わず左目も閉じてしまった。私の両目を手の平で優しく撫でてくれる。

「うーん、思っていたのと違う」
 と宮久土先輩は呟いた。
「がっかりしましたか?」

 そうじゃなくて、あまり触ってなくても、スイッチが――――皆まで言わずに、
「早いのと遅いのどっちが好き?」
 と聞いてきた。

 あまりに直接的だと思う。でも、宮久土先輩はそういう人だったと思いだしていた。
「遅いのって言ったら?」
「お酒入れる。最近はあまり飲んでないから、すぐに回ると思う」

「じゃあ、飲まなくていいです」
 そう、と言った宮久土先輩は私の右足を抱えあげて、くるぶしを噛んだ。
 さらに指の先まで噛んでくる。
 わ、と声が出る。

 十数年経った今となってはかじるというのは、単なる言い回しにすぎなくて、本音はもっと別のところにあった。

 一度身体を離して、ほら、いいよ、と言って宮久土先輩が出して来た。足首はあれから大分経った今でも、ピカピカッと光って見える。

 芦野さんが見てるとやっぱり痺れる、と宮久土先輩は言った。

 顔を寄せて――――私は――――。

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