ちょうどいい私は、無理めの宮久土先輩のくるぶしをかじりたい

偏愛彼氏たち

6

　半年経った辺りで、そろそろダメ？と聞かれる。
　ひょうには許可もらったけど、と一々言い添えるあたりが気まずい。

　航先輩の部屋は元々配信をしていたこともあり、防音部屋になっているらしく、照明やマイクも複数置かれていた。
　スタジオになっているらしい。
　高校時代からの副業により、自分でアパートを借りているようだ。

　この部屋に来て、特別な関係になったことで航先輩もまた、偏愛を秘めていたことを知る。航先輩は音声を拾いたがるのだ。

　例えば身体がぶつかり合う音、声、その他の諸々の音を拾いたがる。
　録音も撮影もしないけれど、本来聞こえないような音をマイクで拾いながら進む行為に私は恥ずかしくてたまらなくなるのだ。

　自然と、声を出すのはこらえるようになる。一方で、
「すっごく、いい」
　と航先輩自身は乗り気だ。

「全部聞きたい、うらちゃん」
　と甘い声で言うし、その高まっている気持ちは身体の反応でとても分かりやすい。
　防音されているとはいえ、ボリュームアップされている内緒の音声に、私は最初からギブアップ気味だ。

　これが航先輩のフツーだとしたら、私には付き合い切れそうにない。二ヶ月の交際でついに敗北宣言をして、こちらからお別れを告げた。

「うらちゃんは、持った方だよ。こればっかりは仕方ないな。これでもヤバいって自覚あるんだよ」
　と航先輩はあっさりと告げてくる。

　そして、
「エッチなのしないなら、しばらく彼女してくれる？」
　と逆に提案を受けた。

「友達としてならいいですよ」
　と答える。
「うらちゃんの声が好きなんだよね、だから。歌声を録音させてよ」
　と言われるのだ。

　ただし、録音した後は、ちょっとグッと来ちゃったな、と抱き寄せられる。その後は、結局なし崩しに偏愛を押しつけられるのだった。声、出してと言ってエコーをかけられるのは、もはや通例だ。

　耐えられないっ！