ちょうどいい私は、無理めの宮久土先輩のくるぶしをかじりたい

KUMANOMORI(くまのもり)

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ふってください、宮久土先輩

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「芦野さんもフツーじゃないよ。大切にしなきゃいけない子だ」
 宮久土先輩を目が合うと、目の奥がぼっと熱くなる。
 少しぼやけて見にくいけれど、視線がこっちに向いているのが分かった。

「争いが起こると空気がよくなくなるから。好きな気持ちが溶けちゃいましたか?」
 前に宮久土先輩が言った言葉をくり返す。

「全然溶けてないよ。芦野さんのことは好き。でも、今は一緒にいちゃいけない。良くない感じがする。芦野さんの昔話が復活してしまったから。今のオレ達は昔話に闘えるほど、強くないみたいだ」

「今はダメですか?じゃあ、もしもっと先。付き合えたらそのときはまた」

 付き合えますか?と聞きたかったけれど、聞けなかった。

 言葉は――――
 宮久土先輩が飲み込んでしまったから。
 初めて、宮久土先輩からキスされた。

 離れた唇を見つめ、そして先輩の瞳を見つめる。

「前より少し弱いけど。芦野さんが見ている場所には、まだビリビリって何かを感じるよ」
「私は宮久土先輩が見ている場所に熱を感じます」

 私は宮久土先輩のことが好きだ。好きだと伝える前に、付き合うことになったのは初めてだった。相手から告白されたのも初めての経験だ。私の昔話は宮久土先輩は上書きしてしまったから。

「今から、告白します。だからふってください、宮久土先輩」

 先輩の静かな瞳がこちらを真っすぐに見つめてきた。
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