ちょうどいい私は、無理めの宮久土先輩のくるぶしをかじりたい

昔話の復活

7

　掴まれた手を振る。けれど振り払えないので、
「助けてっ」
　と声をあげたら、にわかに人の気配がした。

　視線が集まる気配がしたので、解放されるかと思ったら一度強く電柱に頭を打ち付けられる。

「彼氏なんか、作っちゃダメなんだよ？」
　覆いかぶさるように押さえつけてくるその人は、甘い声で言って、口元をほころばせた。

　もう一度髪の毛を引っ張られて、電柱に身体を打ち付けられたときに、頭を捻ったら、電柱を囲んでいた金具に両目がぶつかる。

　即座に、痛い、と叫び声が出た。駆けてくる足音がして、掴んでいた手が離れたのが分かる。そして男性の短い呻き声がした。

　私はただその音を聞いていて、目を押さえてしゃがみ込む。

「芦野さん、ごめん。迎えに行っていれば」
　宮久土先輩の声だとは分かった。息を切らしていて焦りの色がにじんでいる声だ。

　その後、人が集まって来て、
「お前っ何したんだ」
　と複数の怒号があがるのを聞く。

　男性の呻き声と人が動く音がした。複数の音を聞きながらも目が開かない。目が燃えるように痛み、開こうとすれば激痛が走った。