ちょうどいい私は、無理めの宮久土先輩のくるぶしをかじりたい

KUMANOMORI(くまのもり)

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闘い

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「彼女?その子のどこが好きなの?」
 どこが、の単語に毒を感じた。

「全部。好きにどこがとかあるの?」
 ひぇええと心の中で叫んでしまう。

 照れも何もなくさらっという宮久土先輩だと感じるけれど、こちらは何の準備も出来ていないのだ。ダイレクトにくらってしまって、頬が熱くなってくる。

「駆が陸上再開したのも、その子が何か関係あるの?」
「兄さんの心のことはオレには分からないよ」

「また、家族ぐるみでご飯行ければいいね」
 と女性は言ってくる。明らかに私に向かって言っているのが分かった。

「家族ぐるみは、もう無理だね」
 と宮久土先輩は言って私の手を引く。じゃあね、とひらひらと手を振って宮久土先輩は彼女の脇を通り抜けていった。

「私の方が、昔から知ってるのに」
 呟いた言葉へ宮久土先輩からの答えはない。言葉の持つ湿り気に、心にジトッと何かがまとわりつく感覚を覚えた。

 私は闘うつもりなんてないんだ。

 でも、それは私が決めることじゃないらしい。

 闘いは勝手にはじまっていた――――
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