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昔々
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触ってよ?
何を、と思ったらその人は、忙しい動きでベルトを外して、ボトムスの前を開いた。私は首を振る。さすがに私でも分かった。
逃げようとしたら、もう一度手を掴まれる。無理矢理手をあてがわれそうになって、手を振ったら、手首を逆方向に曲げられた。
痛いっ、と声が出る。その人の目には爛々とした奇妙な光が宿っていて、私は身体の芯が震えてくるのが分かった。
「じっとしてればいいんだよ」
と言って、今度は私の足の当たりを触って来る。身体が硬直した。
その瞬間に焦げ臭い匂いを感じ、視線を下に向ければ、煙草の火がキッチンのラグに燃え移っているのが見える。
「あ」
私が声をあげたら、その人は私の視線を追う。ラグを見つめたとたんに、私の手を離し逃げ去って行った。
慌ててしまった私は燃えているキッチンラグを足で踏みつぶしてみる。あつっ、と声が漏れて、今度は水道水をかけてみようとした。震える手で水をカップに入れて、水をかける。
そんなに燃え広がっていなかったから、何回か水をかければ消えた。
でも、足腰の震えは止まない。
しゃがみ込んでいたら、姉が帰って来て、その後兄が返って来る。
私が出来事をそのまま話したら、二人は静かに聞いていた。そして、残っていた煙草の吸殻を丁寧に保管しておいて、すぐに通報する。
でも、前科がなかったとか、サンプリングがなかったとかでその人は捕まらなかった。不法侵入、放火未遂、そんな風な罪になると思う、と姉からは聞かされたけれど、もう一つの私にとって恥ずかしい罪については、姉は触れない。
その日からしばらくの間、姉と兄は一緒に登下校してくれていた記憶がある。
何を、と思ったらその人は、忙しい動きでベルトを外して、ボトムスの前を開いた。私は首を振る。さすがに私でも分かった。
逃げようとしたら、もう一度手を掴まれる。無理矢理手をあてがわれそうになって、手を振ったら、手首を逆方向に曲げられた。
痛いっ、と声が出る。その人の目には爛々とした奇妙な光が宿っていて、私は身体の芯が震えてくるのが分かった。
「じっとしてればいいんだよ」
と言って、今度は私の足の当たりを触って来る。身体が硬直した。
その瞬間に焦げ臭い匂いを感じ、視線を下に向ければ、煙草の火がキッチンのラグに燃え移っているのが見える。
「あ」
私が声をあげたら、その人は私の視線を追う。ラグを見つめたとたんに、私の手を離し逃げ去って行った。
慌ててしまった私は燃えているキッチンラグを足で踏みつぶしてみる。あつっ、と声が漏れて、今度は水道水をかけてみようとした。震える手で水をカップに入れて、水をかける。
そんなに燃え広がっていなかったから、何回か水をかければ消えた。
でも、足腰の震えは止まない。
しゃがみ込んでいたら、姉が帰って来て、その後兄が返って来る。
私が出来事をそのまま話したら、二人は静かに聞いていた。そして、残っていた煙草の吸殻を丁寧に保管しておいて、すぐに通報する。
でも、前科がなかったとか、サンプリングがなかったとかでその人は捕まらなかった。不法侵入、放火未遂、そんな風な罪になると思う、と姉からは聞かされたけれど、もう一つの私にとって恥ずかしい罪については、姉は触れない。
その日からしばらくの間、姉と兄は一緒に登下校してくれていた記憶がある。
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