ちょうどいい私は、無理めの宮久土先輩のくるぶしをかじりたい

KUMANOMORI(くまのもり)

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攻撃の理由は

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 一乃がすごく悲しそうな顔をしていた瞬間を、思い出した気もする。
 いつだっけ?まだ、彼女が家に来ていた頃のような気がしたけれど。

 眉根を寄せて、目を伏せる表情を私は見た気がした。

 あれは――――

 記憶に引っかかりを覚えたときに、紫のテカテカ髪がクラスの戸を叩いてくるのを見た。クラスの男子が一斉に硬直し、女子がざわめきだす。
 窓際にいた反鳥の怯え方と言ったら、気の毒なほどだ。広めの肩がフルフルと震えていた。

「お兄ちゃんっ!何しに来たの、めちゃくちゃ迷惑なんだけどっ!」
 ドアの前に言って不満を告げても、兄は意に介さない。

「母さん出張でつやは研修、俺は夜間バイトなんで。戸締りしっかりな」
 と言ってくるのだ。

「そんなのさ、直接言ってこなくていいじゃん」
 クラスに来るな、と言いたい。
「馳に泊まりに来てもらえば」
「はぁあ!?」

「それか、和華奈ちゃん泊まりに来る?」
 と傍にいた和華奈に声をかけている。

「いいですけど。ひょう先輩、過保護すぎません?」
 と和華奈は言った。
「うん、過保すぎるくらいでオーケー」

 とだけ兄は言う。
 これにはさすがの和華奈もきょとんとしていた。

「戸締りしっかりするから、大丈夫」
 と念を押す。

 でも、そっか、今晩はひとりなんだ、と思った。
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