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宮久土兄弟
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「この前ゆらぎが行っただろ?馳んとこ」
別れ道に差しかかったところで、かける先輩が言った。宮久土先輩は、うん、と答える。
私は脇腹の当たりが引きつる感覚になった。
ゆらぎ。
きっとそれは、あのときの彼女の名前なんだと思う。
「忘れた」
と宮久土先輩は言うのだ。
「マジで都合いいよなぁ、その頭」
かける先輩は宮久土先輩といると、妙に刺がある。かける先輩は私の方を見てくるのだった。
「うら、あの時ぶり」
右側からかける先輩が話しかけてくる。
「うん」
「芦野さん、焼肉行って帰ろ」
今度は左側から宮久土先輩に言われた。
「焼肉は、昨日も行きましたよ?」
そう言ったら、昨日も?と繰り返す声がして、宮久土先輩がそうだよ、と答える。
かける先輩は、見たこともないほど複雑な顔になった。
「俺も行く」
と言ってかける先輩は私の右側の手を取って来る。身体が硬直した。そしたら、左側の手を宮久土先輩が繋いでくる。
「兄さんのおごりだね」
と宮久土先輩が言ったら、かける先輩は乾いた笑い声をあげた。
仲が悪いわけじゃ、ないのかな?
「うそ。焼肉、行けんの?馳ってやっぱり、どっか抜けてると思うわ」
「一人じゃ行けない」
私を間に挟んで始まる話に、耳を傾けていた。一々首をあげるのが疲れるので、左右の繋いだ手を交互に見ながら歩く。
二人に手を繋がれる現状は不思議だ。
「それが余計とおかしいんだって。まだ二年しかたってない」
「今以外は昔だよ」
「一緒に行ったら相手が死ぬとか思わないんだ」
「し、死ぬっ!?」
宮久土先輩を見あげたら、グイッと逆方向の手を引かれた。
「発言者は俺、こっち見てよ」
一瞬だけ目が合って逸らす。
かける先輩がため息をついた。かける先輩と話をするのは、やっぱり難しい。
別れ道に差しかかったところで、かける先輩が言った。宮久土先輩は、うん、と答える。
私は脇腹の当たりが引きつる感覚になった。
ゆらぎ。
きっとそれは、あのときの彼女の名前なんだと思う。
「忘れた」
と宮久土先輩は言うのだ。
「マジで都合いいよなぁ、その頭」
かける先輩は宮久土先輩といると、妙に刺がある。かける先輩は私の方を見てくるのだった。
「うら、あの時ぶり」
右側からかける先輩が話しかけてくる。
「うん」
「芦野さん、焼肉行って帰ろ」
今度は左側から宮久土先輩に言われた。
「焼肉は、昨日も行きましたよ?」
そう言ったら、昨日も?と繰り返す声がして、宮久土先輩がそうだよ、と答える。
かける先輩は、見たこともないほど複雑な顔になった。
「俺も行く」
と言ってかける先輩は私の右側の手を取って来る。身体が硬直した。そしたら、左側の手を宮久土先輩が繋いでくる。
「兄さんのおごりだね」
と宮久土先輩が言ったら、かける先輩は乾いた笑い声をあげた。
仲が悪いわけじゃ、ないのかな?
「うそ。焼肉、行けんの?馳ってやっぱり、どっか抜けてると思うわ」
「一人じゃ行けない」
私を間に挟んで始まる話に、耳を傾けていた。一々首をあげるのが疲れるので、左右の繋いだ手を交互に見ながら歩く。
二人に手を繋がれる現状は不思議だ。
「それが余計とおかしいんだって。まだ二年しかたってない」
「今以外は昔だよ」
「一緒に行ったら相手が死ぬとか思わないんだ」
「し、死ぬっ!?」
宮久土先輩を見あげたら、グイッと逆方向の手を引かれた。
「発言者は俺、こっち見てよ」
一瞬だけ目が合って逸らす。
かける先輩がため息をついた。かける先輩と話をするのは、やっぱり難しい。
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