ちょうどいい私は、無理めの宮久土先輩のくるぶしをかじりたい

KUMANOMORI(くまのもり)

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宮久土兄弟

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 大会の日は幸い天候に恵まれる。
 宮久土先輩は大会新記録を出してアナウンスをされていた。宮久土先輩は表彰台に乗りトロフィーを受けとる。

 危なげなく記録更新をする姿は眩しい。表彰台に上った宮久土先輩の視線がある一点に留まるのを私が気づいた。視線を追った先にいた人物と視線が合い、驚いてしまう。

「かける先輩」
 同じように、宮久土先輩もかける先輩へと視線を注いでいた。

 しばらくして、かける先輩は表彰台から降りた宮久土先輩の元に近づいていく。部活のメンバーも航先輩も、そして私もその様子を見守っていた。
 陸上部の二、三年生の反応が顕著だ。

「かける先輩っ」
「来てたんですね」
 と次々に声がかかる。

「別に、暇つぶし~」
 とかける先輩は答える。有名人なんだ?
 二、三年生は嬉しそうに話しかけていく。様子を見る限り、慕われているようにも見えた。

 かける先輩は宮久土先輩を見て、それから私に視線をすべらせてくる。手を振って来たので、お辞儀だけした。あの時から、かける先輩とは会っていない。

「すごいじゃん、大会新」
「うん」
 宮久土先輩はあっさりと返事をして、
「何しに来たの?」
 とかける先輩に尋ねる。

「陸上再開するわ」
 と一言だけ。宮久土先輩が珍しく目を丸くして、言葉を失う姿を見た。

「この前さ、お前とうらがオレんちのそばにいたのを見た。つまりそういうこと」
 思い当たるのは、宮久土先輩と付きあうことになった日のことだ。

「つまりって何?」
 航先輩が口を挟んでくるけれど、説明は出来ない。

 悲しみ、驚き、喜びと色んな感情がまざっていて、私にはジェットコースター状態だった出来事だ。

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