ちょうどいい私は、無理めの宮久土先輩のくるぶしをかじりたい

KUMANOMORI(くまのもり)

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速攻だだもれ

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 陸上部の集まりに向かえば、近づいてきた航先輩は、
「星井さん、やめるってさぁ。もったほうだね」
 とのんびりと言う。

「そんなに簡単に?」
「馳が落とせないとなれば、頑張る意味ないんじゃない?」
「大会前なのに。一乃は本当に宮久土先輩のことが好きだったんでしょうか?」

「うーん、試し撃ち感が強いよね、星井さんは。誤解されやすそうな危険分子」
「試し撃ち?意味わかんない」

「かけるみたいに遊び割り切ってる奴は釣れるけど。馳は難しいと思うよ。思考回路が読めないし、傷が深い」
「傷」
 呟いても航先輩は首を横にふった。本人が言ってないことは言わない、その辺は紳士なの俺は、と言うのだ。

「星井さんが釣りたいのは、大物だよねぇ」
 とぽつりと漏らす。大物?

「航先輩は、一乃と一緒に帰ってたよね?その後一乃の様子は変だったけど何かあったの?」
「苦手意識でちょっと圧をかけたかも?星井さんは俺のことを恐い先輩だと思ってると思うよ」
「女の子好きな航先輩でも、苦手ってあるんだね」

「誤解だって、一周まわってピュアだから。意外と可愛いもんだと思うよ?」
「ふーん?」

「馳の奴ズルいなぁ。うらちゃんは俺の方が前から狙ってたのに」
「嘘嘘。航先輩の狙ってる人数は百万人規模でしょ」

 私が適当に放り込んだ言葉に、航先輩は目を丸くしてこちらを凝視する。何か変なこと言ったかな、と思うけれど、
「あながち外れじゃないなぁ」
 航先輩は軽快な調子で言って来た。

「最悪~」
 と不満が口から出たところで、
「おはよ、芦野さん」
 後ろから声がかかり、宮久土先輩がやって来る。
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