ちょうどいい私は、無理めの宮久土先輩のくるぶしをかじりたい

KUMANOMORI(くまのもり)

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寝取り系の奮闘

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 その日は二つの衝撃により、頭がクラクラとしてきてしまった。
 半ば這うようにして校庭へと向かう。
 昨日の夜から、私には誰の心も分からないことだけが、分かった。

 陸上部の練習に向かえば、既に一乃の姿があり、土浦先生からの紹介がある。色めき立つ部員たちに私の心は揺らぐ。
 私だって不純な動機で始めたマネージャーだ。

 一乃がどんな動機で始めたとしても、私には何か言える道理はない。
 一乃ががっちりと宮久土先輩の隣をキープして、
「先輩のご活躍は拝見しています。大会記録のストリーミングで見れた分だけは全部映像を見てきました」
 と強気のアピールをしている姿を見ると、私よりもマネージャーらしいと感じる。
 なんなら見た目も釣りあっているとも思う。

「なんだよー、宮久土狙いかよ」
 ぶつくさ言う先輩部員は、仕方なしに、「私にタイム測ってよ、うらちゃん」と言ってくる。
 妥協先として選ばれたことに不満はあるけれど、宮久土先輩にぴったり張りついている一乃を見ていても、意味がない。

 私は呼ばれるままに他の部員たちのサポートに当たる。航先輩が宮久土先輩に何かを話かける様子だった。
 すかさず一乃が、
「音響先輩の記録会の映像も見てきました~」
 と告げている。

「へぇ、リサーチ力すごいねぇ、星井さん」
 と航先輩がコメントする声を聞いた。

 勉強熱心さや立ち振る舞いの上手さでは、到底一乃にはかなわない。私は大人しく私にもできることをこなす。

 その日は宮久土先輩と話す機会が一度もなかった。

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