ちょうどいい私は、無理めの宮久土先輩のくるぶしをかじりたい

KUMANOMORI(くまのもり)

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好きの一歩

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 パクパクパクと三口で餃子を食べきってしまい、宮久土先輩はごちそう様、と手を合わせた。

「誰かと奪い合ってまで、誰かを好きになりたくないなぁ」

 私が思っていたのと同じことを宮久土先輩は言うのだった。
 その人を奪い合っていたのは、かける先輩なのかな、と想像するに留める。

「昔々、そういうことがありました。今からはありません。宮久土先輩がいい空気感で、好きになれる人はいます」
 前に宮久土先輩が言ったような言い方を真似してみた。私がそう言ってみたら、宮久土先輩は目を丸くする。

「やるなぁ」
 そして小さく呟くのだった。

 帰り道では、
「ランニングしていい?」
 と聞かれる。腹ごなしにランニングしたいんだよね、と宮久土先輩は言うのだ。

「後から行きますね」と答えたら、
「一緒にだよ」
 と言う。

 いやぁ、先輩について行くのは難しいです、と言うのだけど、のんびり行くよ、と言われてしぶしぶ一緒に走るのだった。

 かなりのんびりのペースで少しだけランニングした。スポーツウェアの裾から見えなかったけれど、足首の辺りをチラッと見てしまう。その度に宮久土先輩と目が合って、自分のやましさを隠すために、
「見てませんよっ」
 見え透いた嘘をついてしまうのだ。

「変なの」
 と宮久土先輩は笑う。

 もし、齧ったらどうなるんだろう?何か変わるのかな。
 私の妙な告白から始まったこの関係を、私は気に入っている。
 宮久土先輩はどうなんだろう?こうしてご飯に誘ってくれるくらいだから、嫌われてはいないんだろうけれど。
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