ちょうどいい私は、無理めの宮久土先輩のくるぶしをかじりたい

KUMANOMORI(くまのもり)

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好きの一歩

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 休日の部活は半日で終わる。

 その日は宮久土先輩がトロフィーを取りに来てくれることになっていた。
 練習後に家に来た宮久土先輩を見て、たまたま居合わせた、姉も兄も一言。

「馳なら問題ない」
「馳は仕方ない」
 とだけだ。

 勝手に謎の審査をされた宮久土先輩だけれど、
「つや先輩、久しぶり。ひょうはいつも通り暑苦しいね」
 とマイペースに挨拶をする。

 姉はさっさと出て行き、兄は宮久土先輩と話をし始めていた。
 宮久土先輩にリビングで待っていてもらって、私は部屋にトロフィーを取りに行く。リビングのドアの前に立ったとき、
「引きずってんの?」
 と兄が宮久土先輩に何か話しかけているのを聞いた。

「引きずってないよ。ただ、最近までは走るのがあまり楽しくなかっただけ」
 宮久土先輩がいつもの低め安定のトーンで言う。

「あんなの、かける先輩の当てつけだったと思うけど。幕内の本命は馳だったんじゃね?」

 本命。

 あ、これは聞いちゃいけない話だ、と思った。友達関係ですら壊れてしまう、厄介な恋愛関係の話だ。
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