ちょうどいい私は、無理めの宮久土先輩のくるぶしをかじりたい

KUMANOMORI(くまのもり)

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当てつけなんて大嫌い

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「お姉ちゃんの知り合いなんです、かける先輩は。だから私も知ってるんですよ」
 私はかける先輩に次の言葉を紡がせないように、キッパリと言った。
 嘘はついてない。

「知り合いって」
 一乃が嘲笑うような言い方をする。
 少し意地悪な表情を浮かべるので、ぎりと胸が痛くなる。一乃は仲が良い友達だったはずだ。
 けれど恋愛が絡むと、私に向けてこういう顔をするんだ、と思うと悲しかった。

 だからいやなんだ、恋愛は。

「で、その子は私の友達です。二人は最近付き合ったみたいで」
「ふぅん?」
 宮久土先輩はどこか半信半疑な声を出す。

「なんでうらと一緒?馳、それは嫌がらせ?それか仕返しのつもりとか?」
 かける先輩が想像以上に剣呑だったので、私は驚いてしまった。こんなかける先輩を見たことはない。

「意味が分かんない。芦野さんはオレのマネージャーだよ」
 そう告げたとたんに、かける先輩が肩をすくめる。

「それこそ、仕返しだろ」
 と言うのだ。宮久土先輩は私の顔を見る。うーん、と小さく口にした後で、
「そう思うなら、それでいいじゃない」
 とのらりくらり返すのだった。

 かける先輩の眉根が寄るのを、私はしっかりと目撃する。
「けどさ、その子は俺の元カノなんだよ。残念、結局勝ててない」
 なんでそんなことを言うの、と私はかける先輩の顔を見る。かける先輩は唇を噛んでこちらを見て、その後宮久土先輩の顔を見た。

 明らかな当てつけを目撃してしまって、私の心はズタズタになる。浮気したくせに、私の新しい希望を消そうとするのだから。
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