ちょうどいい私は、無理めの宮久土先輩のくるぶしをかじりたい

KUMANOMORI(くまのもり)

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目覚めた偏愛

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 ぐいんと何かがしなる音を聞く。片づけを終えた私たちの横を横切った影があった。
「遅れた、ごめんっ」

 ――――え?

 びゅっという風の音と地面をたんっと蹴る靴の音がする。次の瞬間に見えたのは日焼けしたくるぶしとアキレス腱だ。
 スニーカーの踵が見えて、アキレス腱と左右のくるぶしが見える。左右交互に見え隠れするくるぶしのふくらみに、私は目を奪われたままだった。

「うら、行くよ?」
 和華奈に声をかけられるまで、私はぼんやりと駆けていく背中を眺めている。

「おっそ~、もう準備したって~」
 と航先輩が言って、その人は走って乱れた髪をさらにかき乱される。背中を叩かれているその人を見て、そのくるぶしを再び見た。

 めくりあげた体育着の裾から、覗くアキレス腱の左右の出っ張り。逆ハの字型の深いくびれに、目を奪われる。しなやかなバネのあるアキレス腱が眩しい。

 ――――誰?

 ぼんやり眺めていたら、ゆらりとその人は振り返った。その静謐な瞳が私をとらえる。
 切れ長の目を持ち、静かな瞳を持つ美青年。
 私の視線に気づいて、何?と口の形だけで聞いてくる。
 宮久土先輩だ。

 すぐに、どーした?と航先輩が振り返って来たので、私は即座に視線を逸らした。宮久土先輩は首をかしげてから前へと向きなおる。

 あれ、うらちゃん?と航先輩の声を背中に聞きながら、和華奈の後を追う。

 私は神様を呪った。

 ああ、ダメなんだよ~イケメンかつモテ男は!

 しかし、そのくるぶしが目の奥に焼き付いて離れない。
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