恋はいつでも…

麻実

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不思議な客

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「春ちゃん、巻き寿司用のご飯を炊いといて。ちょっとお花を買ってくるわ」
そう言って出て行ったママさん。

店内は道夫と春子の二人きりになった。
どちらからともなく、ふたりの視線が絡み合う。程よく背の高い彼は屈んで春子に口づけをする。
春子は彼の首に手を回して更に深いキスをねだる。

「すみません。笠原春子さんお願いします」
「ごめんなさい。まだ準備中です」

慌てている道夫と女性客のやり取りを背中で聞いて、振り向いた。

年は春子の夫と同じくらい、茶髪の編み込み、顔の造作はひとつひとつが大きめだ。胸を誇示しているが生憎胴回りも同じくらい誇示されていた。

「笠原部長から言付かりました」
春子を凝視しつつその顔は無表情。
封筒をカウンターの上に置き、後は何も言わず立ち去った。

「吃驚したわ。ドアの音がしなかったけど・・」
「僕のこと、上から下まで見ていたよ。気味が悪いな」

二人で顔を見合わせた。





何事もなかったように、
今夜も
店内は軽快なピアノの音と弾むような歌声、一曲終わる毎に大勢の拍手。
ジャズの譜面を持って順番を待つ着飾った女性客。
ジャズ専門のバー『カサブランカ』の夜は更けていく・・・。


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