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25.番外編元国王の女たちの回顧録
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王妃編
あのお方は可哀想なお方なのです。父を国民に殺され、その国民のために命を捧げる毎日。
そんなお方なのだから、わたくしがそばにいてあげなくては。
「……イノーマス帝国、」
聞くつもりはなかったけれど、聞こえてきてしまったイノーマス帝国とのやりとり。わたくしは、悟りました。このお方は、自国を売るつもりだと。わたくしの故郷ですらも。
それでも、わたくしはあのお方に寄り添いたかった。だって、愛していたのだから。
あのお方はきっとわたくしの愛に気がついていないわ。
あのお方はすごく忙しくなさっていた。仕事をわたくしがこっそりと手伝ったりしていたわ。
ある日を境に、あのお方の仕事の量が激減したわ。
そのおかげであのお方は復讐に動けるようになったわ。わたくしは、尚もあのお方の仕事を手伝い続けたわ。だって、わたくしはあのお方と共にありたかったもの。
わたくしだけじゃないわ。息子だって、そばにいるべきだわ。だって、あなたはあのお方の息子なのだから。
そう思っていたのに。あの子はあのお方を裏切って、元婚約者を救おうとしたのよ。断罪せずに。なんて親不孝者なのかしら。そう思ったわ。
だからわたくし、あの子が気に入っている彼女に言ったの。
「今ならあなただけ逃がしてあげるから、あの子を捨ててお逃げなさい、と」
結局、あの子は彼女すら国に売って捕まったわ。
わたくしは、あのお方と共に天に昇りたいのに。ボレアースの姫という身分がわたくしを殺してくれない。わたくしのことをあのお方と共に殺してくれたらいいのに。なんで姫なんていう身分に生まれてしまったのかしら。
メイド編
狂っている。そう思ったわたくしは一目散に逃げ出しました。子を残して。
わたくしは、前国王陛下の愛人のような真似事をしました。もちろん、祖国イノーマスについて知るために。前国王陛下は、祖国イノーマスについて詳しかったですし、イノーマス人と知ったわたくしに興味を抱きました。
イノーマスの元姫という身を平民に偽装したわたくし。わたくしのことを平民と疑うこともなかったですが。……そんなにわたくし、平民らしいかしら?
近づくにつれて、前国王陛下の恐ろしさに気がつきました。自国を売ろうとしているのです。気づいた時には、子がいました。わたくしは、前国王陛下に殺される、そう思い逃げ出しました。子のことは心配でしたが、王の息子であれば悪く扱われることはないだろうと信じておりました。従者として扱われて育つことは想定外でした。何度助けに行こうかと悩みましたが、前国王陛下は聡く、近寄ることができませんでした。
新ミリュー王国が発足した時、あの子が国王となった時。安心したのです。幸せをつかんだのだと。今更母親ヅラできませんでした。
あの子に助けを求められた時、やっと親らしいことができると嬉しく思ったのです。
あの子は大切な人を手に入れて、やっと笑うことができたのですから。
あのお方は可哀想なお方なのです。父を国民に殺され、その国民のために命を捧げる毎日。
そんなお方なのだから、わたくしがそばにいてあげなくては。
「……イノーマス帝国、」
聞くつもりはなかったけれど、聞こえてきてしまったイノーマス帝国とのやりとり。わたくしは、悟りました。このお方は、自国を売るつもりだと。わたくしの故郷ですらも。
それでも、わたくしはあのお方に寄り添いたかった。だって、愛していたのだから。
あのお方はきっとわたくしの愛に気がついていないわ。
あのお方はすごく忙しくなさっていた。仕事をわたくしがこっそりと手伝ったりしていたわ。
ある日を境に、あのお方の仕事の量が激減したわ。
そのおかげであのお方は復讐に動けるようになったわ。わたくしは、尚もあのお方の仕事を手伝い続けたわ。だって、わたくしはあのお方と共にありたかったもの。
わたくしだけじゃないわ。息子だって、そばにいるべきだわ。だって、あなたはあのお方の息子なのだから。
そう思っていたのに。あの子はあのお方を裏切って、元婚約者を救おうとしたのよ。断罪せずに。なんて親不孝者なのかしら。そう思ったわ。
だからわたくし、あの子が気に入っている彼女に言ったの。
「今ならあなただけ逃がしてあげるから、あの子を捨ててお逃げなさい、と」
結局、あの子は彼女すら国に売って捕まったわ。
わたくしは、あのお方と共に天に昇りたいのに。ボレアースの姫という身分がわたくしを殺してくれない。わたくしのことをあのお方と共に殺してくれたらいいのに。なんで姫なんていう身分に生まれてしまったのかしら。
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狂っている。そう思ったわたくしは一目散に逃げ出しました。子を残して。
わたくしは、前国王陛下の愛人のような真似事をしました。もちろん、祖国イノーマスについて知るために。前国王陛下は、祖国イノーマスについて詳しかったですし、イノーマス人と知ったわたくしに興味を抱きました。
イノーマスの元姫という身を平民に偽装したわたくし。わたくしのことを平民と疑うこともなかったですが。……そんなにわたくし、平民らしいかしら?
近づくにつれて、前国王陛下の恐ろしさに気がつきました。自国を売ろうとしているのです。気づいた時には、子がいました。わたくしは、前国王陛下に殺される、そう思い逃げ出しました。子のことは心配でしたが、王の息子であれば悪く扱われることはないだろうと信じておりました。従者として扱われて育つことは想定外でした。何度助けに行こうかと悩みましたが、前国王陛下は聡く、近寄ることができませんでした。
新ミリュー王国が発足した時、あの子が国王となった時。安心したのです。幸せをつかんだのだと。今更母親ヅラできませんでした。
あの子に助けを求められた時、やっと親らしいことができると嬉しく思ったのです。
あの子は大切な人を手に入れて、やっと笑うことができたのですから。
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