25 / 25
25.番外編元国王の女たちの回顧録
しおりを挟む「マカロフ卿こっちは終わったわよ。お蔭さまで私のMPは残り僅かね」
「そのスキルがあれば対個人戦は無敵なんじゃないか? ナリユキ・タテワキにも勝てそうだ」
「そうなの? まあいいわ。残りのあの日本人は任せたわ」
「何だ知っていたのか。それにしても仕事が早いな」
「そうかしら? 長期戦になりそうな相手は先手必勝するほうが手っ取り早いのよ」
ちょっと待って? どういう事? 何でアマミヤさんがあんな隙だらけで、マカロフ卿と話しているの?
私は身体向上を使ってジャンプした。こんなところを抜け出すのはいとも簡単。
クレーターから抜けだして私は絶望した。
アリスちゃんが凍っている……。
全身の力が抜けて私の活力という活力は抜けきってしまった。なんで――。
「メンタルブレイクってやつだな」
「2人もやられてしまったら当然の事ね」
「2人? 他にもいるのか?」
「ええ。お蔭で本当にへとへとなの。他の人間が絶対零度を2度も使ったらMPが0になる可能性多いわね」
「確かにそうだな。まあそこは転生者補正ってやつだろうさ」
ここで戦わないといけないのに、私は全身の力が入らなかった――。手と足、そして先程のダメージで一旦自動消滅した天使の翼は出すことすらできない感覚に陥っている。
「ほら、見ろ。完全に戦意喪失しているようだ。お嬢様よ良く聞け。大人しく捕まれ」
「大人しく言うことを聞けば酷い仕打ちをするような部屋には連れて行かないわ」
そうか。ここで私が捕まればアードルハイム帝国の拷問部屋に連れていかれることになるのか――。でも――。どう考えてもこの2人を相手にして勝つ方法が見当たらない。ここで、アリスちゃんの氷を持って、天使の翼で空を飛びながら逃げた方がよいのだろうか?
「大人しく言う事を聞けば、アリスちゃんとノア君を元通りにしてくれるの?」
「そんな訳ないでしょ。特にあの少年を元に戻したら脅威になるじゃない」
「あの少年ってあれか? 緑色の髪をした奴か?」
「そうよ。マーズベルに行った時にいたの?」
「ああ。念波動の数値は5,200だ」
「――。冗談キツイわ」
「ナリユキ・タテワキも同じ数字だったな」
「帯刀さんも同じ数値なのね。まあ流石といったところね」
「知っているのか?」
「ええ。地球にいたときの知り合いというか――。先輩だったから」
先輩? 本当にナリユキさんとこの女性はどういう関係なのだろうか?
「成程な。さてお嬢様。ラストチャンスだ。大人しく捕まれ」
私が捕まれば計画は大狂いのなるのではないか? それだけが心配だった。
ふと、見上げて視界に入ったマカロフ卿の顔――。彼の瞳はどこか悲しさを持ち合わせていた。
そして思う。彼は悪い人じゃないのかもしれない。
私は不思議と両手を差し出していた。これは意識してではない。無意識のうちだった。
「あら。案外素直なのね。どういう風の吹きまわしかしら」
アマミヤさんはそう言いながら私に手枷と足枷をした。これで私はもう何も抵抗することはできない。この手枷と足枷を外す方法は、自力で何とかするか、無難に鍵を探すかの二択になる。
「そんなことはいいだろう。お嬢様も馬鹿ではない。なにせナリユキ・タテワキの側近だからな。とは言っても俺からすればまだまだ甘ちゃんだがな」
「元軍人が言うと皆がひよっ子に見えてしまうわ。いずれにしても連れて行きましょう。裏ルートからでいいはね?」
「そうだな」
そう言って私とアリスちゃんは馬車に乗せられて運ばれることになった。
そして気になったのは裏ルートという言葉。一体何を考えているのだろう。じゃない! 1つ肝心な事を聞いていなかった!
「少し聞きたいんだけど、ティラトンのbarを襲ったのは?」
「貴女が気にする必要はないわ。と言っても貴女にはもうスキルを発動することができないから、何もすることができないんだけど」
まあそうだよね。教えてくれないよね。
「ラングドールさんはどうなるの?」
「彼は大方死刑ね。貴女はあくまで転生者。彼はこっちの世界の人間。元々干渉することが無い次元から来た私達が、彼の命を気にかける意味なんてないのよ。所詮他人の命なのだから、今は自分の命を大切にしなさい」
言っていることが意味が分かるようで分からない。自分の命を大切にしなさいなんて、どういう意図があってそんな事を言うのだろう。マカロフ卿もアマミヤさんも一体何を企んでいるのだろう。考えれば考えるほど沼になりそうだ。
「ラングドールが死刑って聞いて驚かないんだな」
「予測はできていたからね。それに私の印象では彼は死を恐れていない。やれること全力でやった。例え死んでも誰か繋いでくれる。そう考えているような気がするから」
「凄いわね。貴方今いくつ?」
「22だよ」
「よく見ているわね。肝心なところで鈍感な帯刀さんとは大違い」
その言葉にふと疑問を抱く。私の印象だとなりゆき君は凄く優しくて気配りができて、尚且つ腰が適度に低い謙虚な男性だ。私とアマミヤさんの印象に大きなズレが生じているだけだろうか。
いや……。この人は私が知らないなりゆき君を知っている。そう考えただけで知りたいという欲と、嫉妬が半々ほどの割合で沸々と込み上げてきた。
「そのスキルがあれば対個人戦は無敵なんじゃないか? ナリユキ・タテワキにも勝てそうだ」
「そうなの? まあいいわ。残りのあの日本人は任せたわ」
「何だ知っていたのか。それにしても仕事が早いな」
「そうかしら? 長期戦になりそうな相手は先手必勝するほうが手っ取り早いのよ」
ちょっと待って? どういう事? 何でアマミヤさんがあんな隙だらけで、マカロフ卿と話しているの?
私は身体向上を使ってジャンプした。こんなところを抜け出すのはいとも簡単。
クレーターから抜けだして私は絶望した。
アリスちゃんが凍っている……。
全身の力が抜けて私の活力という活力は抜けきってしまった。なんで――。
「メンタルブレイクってやつだな」
「2人もやられてしまったら当然の事ね」
「2人? 他にもいるのか?」
「ええ。お蔭で本当にへとへとなの。他の人間が絶対零度を2度も使ったらMPが0になる可能性多いわね」
「確かにそうだな。まあそこは転生者補正ってやつだろうさ」
ここで戦わないといけないのに、私は全身の力が入らなかった――。手と足、そして先程のダメージで一旦自動消滅した天使の翼は出すことすらできない感覚に陥っている。
「ほら、見ろ。完全に戦意喪失しているようだ。お嬢様よ良く聞け。大人しく捕まれ」
「大人しく言うことを聞けば酷い仕打ちをするような部屋には連れて行かないわ」
そうか。ここで私が捕まればアードルハイム帝国の拷問部屋に連れていかれることになるのか――。でも――。どう考えてもこの2人を相手にして勝つ方法が見当たらない。ここで、アリスちゃんの氷を持って、天使の翼で空を飛びながら逃げた方がよいのだろうか?
「大人しく言う事を聞けば、アリスちゃんとノア君を元通りにしてくれるの?」
「そんな訳ないでしょ。特にあの少年を元に戻したら脅威になるじゃない」
「あの少年ってあれか? 緑色の髪をした奴か?」
「そうよ。マーズベルに行った時にいたの?」
「ああ。念波動の数値は5,200だ」
「――。冗談キツイわ」
「ナリユキ・タテワキも同じ数字だったな」
「帯刀さんも同じ数値なのね。まあ流石といったところね」
「知っているのか?」
「ええ。地球にいたときの知り合いというか――。先輩だったから」
先輩? 本当にナリユキさんとこの女性はどういう関係なのだろうか?
「成程な。さてお嬢様。ラストチャンスだ。大人しく捕まれ」
私が捕まれば計画は大狂いのなるのではないか? それだけが心配だった。
ふと、見上げて視界に入ったマカロフ卿の顔――。彼の瞳はどこか悲しさを持ち合わせていた。
そして思う。彼は悪い人じゃないのかもしれない。
私は不思議と両手を差し出していた。これは意識してではない。無意識のうちだった。
「あら。案外素直なのね。どういう風の吹きまわしかしら」
アマミヤさんはそう言いながら私に手枷と足枷をした。これで私はもう何も抵抗することはできない。この手枷と足枷を外す方法は、自力で何とかするか、無難に鍵を探すかの二択になる。
「そんなことはいいだろう。お嬢様も馬鹿ではない。なにせナリユキ・タテワキの側近だからな。とは言っても俺からすればまだまだ甘ちゃんだがな」
「元軍人が言うと皆がひよっ子に見えてしまうわ。いずれにしても連れて行きましょう。裏ルートからでいいはね?」
「そうだな」
そう言って私とアリスちゃんは馬車に乗せられて運ばれることになった。
そして気になったのは裏ルートという言葉。一体何を考えているのだろう。じゃない! 1つ肝心な事を聞いていなかった!
「少し聞きたいんだけど、ティラトンのbarを襲ったのは?」
「貴女が気にする必要はないわ。と言っても貴女にはもうスキルを発動することができないから、何もすることができないんだけど」
まあそうだよね。教えてくれないよね。
「ラングドールさんはどうなるの?」
「彼は大方死刑ね。貴女はあくまで転生者。彼はこっちの世界の人間。元々干渉することが無い次元から来た私達が、彼の命を気にかける意味なんてないのよ。所詮他人の命なのだから、今は自分の命を大切にしなさい」
言っていることが意味が分かるようで分からない。自分の命を大切にしなさいなんて、どういう意図があってそんな事を言うのだろう。マカロフ卿もアマミヤさんも一体何を企んでいるのだろう。考えれば考えるほど沼になりそうだ。
「ラングドールが死刑って聞いて驚かないんだな」
「予測はできていたからね。それに私の印象では彼は死を恐れていない。やれること全力でやった。例え死んでも誰か繋いでくれる。そう考えているような気がするから」
「凄いわね。貴方今いくつ?」
「22だよ」
「よく見ているわね。肝心なところで鈍感な帯刀さんとは大違い」
その言葉にふと疑問を抱く。私の印象だとなりゆき君は凄く優しくて気配りができて、尚且つ腰が適度に低い謙虚な男性だ。私とアマミヤさんの印象に大きなズレが生じているだけだろうか。
いや……。この人は私が知らないなりゆき君を知っている。そう考えただけで知りたいという欲と、嫉妬が半々ほどの割合で沸々と込み上げてきた。
835
お気に入りに追加
1,827
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(5件)
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
結婚しましたが、愛されていません
うみか
恋愛
愛する人との結婚は最悪な結末を迎えた。
彼は私を毎日のように侮辱し、挙句の果てには不倫をして離婚を叫ぶ。
為す術なく離婚に応じた私だが、その後国王に呼び出され……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】公爵令嬢は、婚約破棄をあっさり受け入れる
櫻井みこと
恋愛
突然、婚約破棄を言い渡された。
彼は社交辞令を真に受けて、自分が愛されていて、そのために私が必死に努力をしているのだと勘違いしていたらしい。
だから泣いて縋ると思っていたらしいですが、それはあり得ません。
私が王妃になるのは確定。その相手がたまたま、あなただった。それだけです。
またまた軽率に短編。
一話…マリエ視点
二話…婚約者視点
三話…子爵令嬢視点
四話…第二王子視点
五話…マリエ視点
六話…兄視点
※全六話で完結しました。馬鹿すぎる王子にご注意ください。
スピンオフ始めました。
「追放された聖女が隣国の腹黒公爵を頼ったら、国がなくなってしまいました」連載中!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
「いなくても困らない」と言われたから、他国の皇帝妃になってやりました
ネコ
恋愛
「お前はいなくても困らない」。そう告げられた瞬間、私の心は凍りついた。王国一の高貴な婚約者を得たはずなのに、彼の裏切りはあまりにも身勝手だった。かくなる上は、誰もが恐れ多いと敬う帝国の皇帝のもとへ嫁ぐまで。失意の底で誓った決意が、私の運命を大きく変えていく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結保証】わたくしは結構ですから、どうぞお好きに地獄をご覧ください
ネコ
恋愛
第一王子アルトの婚約者ヴァネッサは、高貴でありながら誰よりも地味で献身的。だが、アルトは華やかで刺激的な令嬢コーネリアに夢中になり、ヴァネッサを蔑ろにして婚約破棄を宣言する。悲嘆に暮れながらも、ヴァネッサは逆に「これで肩の荷が降りました」と丁寧に礼を述べて去っていった。すると王宮はコーネリアが引き起こすトラブルの連続で混乱し、アルトは急速に追い込まれていく。すべてを捨てたヴァネッサは、その頃笑顔で新たな未来を歩んでいた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄された令嬢のささやかな幸福
香木陽灯(旧:香木あかり)
恋愛
田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。
しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。
「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」
婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。
婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。
ならば一人で生きていくだけ。
アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。
「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」
初めての一人暮らしを満喫するアリシア。
趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。
「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」
何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。
しかし丁重にお断りした翌日、
「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」
妹までもがやってくる始末。
しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。
「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」
家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】婚約者に忘れられていた私
稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」
「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」
私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。
エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。
ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。
私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。
あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?
まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?
誰?
あれ?
せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?
もうあなたなんてポイよポイッ。
※ゆる~い設定です。
※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。
※視点が一話一話変わる場面もあります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
妹が欲しがるものは全部譲れと言うので
ネコ
恋愛
二歳下の妹は“可憐で聡明”と誉れ高く、両親は何もかも妹優先。兄にも愛されたくて、私はひたすら耐え続けた。けれど今度は「姉の婚約者も奪いたい」と言い放たれ、さすがに我慢の限界に達する。しかも、両親は「そうね、譲ってあげなさい」と当然のように命じてきて――。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
(*´・д・)? イノーマスは『帝国』なんですか? 『王国』なんですか?
元王国の女達・国民に寄生して自分のやりたい事のみを追求したと解釈していいですか⁉️🐛⁉️💢😠💢。
19話 素直に取り組む子にはつい手伝いたくなるよね❗(・・;φ。