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16.オヴェスト王国敗北
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「……ルファエラ王子に絡まれたときは焦りましたが、何事もなく無事帰国できましたわ」
「本当に焦りましたわね! あの王子、ツリアーヌ様のことジロジロ見過ぎですわ!」
「本当にそうだな」
「……って、メルティーヌ様がなぜ我が国に?」
「あの王子が何か仕掛けてくるんじゃないかと不安だから、おそばにいたいと父上に懇願いたしましたわ!」
メルティーヌ様が我が国に遊びにくることが日常となりつつありますわ……。ミカルド王子との婚約話が交渉に入ったと噂で伺っておりますが、実際のところはいかがなのでしょう……そんなことをお聞きするのは野暮ですわね。
「イノーマス帝国は一体何を考えているのでしょうか?」
「王妃陛下! 緊急の連絡です! オヴェスト王国がイノーマス帝国に降伏したそうです!」
わたくしたちの元に文官が駆け込んできました。思ったよりもかなり早くオヴェスト王国が敗北しました。
「メルティーヌ様。わたくしを守ってくださるお気持ちはありがたいですが、帰国が必要になるでしょう。自国にお戻りくださいませ」
「ツリアーヌ様……。ヤリアント様! 絶対にツリアーヌ様をお守りくださいませ!? わかりましたね!」
「我が身に代えても守ろう」
オヴェスト王国の領地がイノーマス帝国領となります。つまり、我が国もボレアース王国も隣国となるわけです。
「オヴェスト王国の内部は、どうなったのでしょうか?」
「国王は処刑され、重鎮はその前にシューデン王国やボレアース王国に逃げ出していたようです」
「……愚かなのは国王であったということですね」
「メルティーヌ様がボレアース王国に帰国され、我が国の武力はかなり減りましたわ。シューデン王国とも調整を図りましょう」
「そうだな。そうしよう」
シューデン王国との調整を図り、隣国エステ王国の混乱の状況を把握し、ティモルト王国の王宮の状態も確認しなければなりません。
「シューデン王国もおそらく情報を得ているでしょう。先日の訪問で同盟の締結を行いましたわ。向こうからも動きはあるでしょうけど、早いに越したことはありませんわ」
国境付近で会合を開き、シューデンはそちらで対応します。残りのエステ王国の様子は……。
「ツリアーヌ王妃陛下。エステ王国のミルフレッツァ王女から使者とお手紙が返ってきました」
支援の感謝と混乱の収拾に向けて動き始めたという報告でした。
これでおそらく、エステ王国が背後から攻めてくることはありませんわ。
「残るは、ティモルト王国ですか……」
帰り支度をしているメルティーヌ様の方向をチラリと見てしまいました。すると、目が合ったメルティーヌ様が嬉しそうに駆け寄っていらっしゃいました。
「お呼びですか!? ツリアーヌ様」
「忙しいところごめんなさい。確認したいことがあって……」
「ツリアーヌ様の願いなら、全てを放り捨てて参りますわ!」
キラキラしたおめめをこちらに向けるメルティーヌ様。お美しいわ。そうではなくて……。
「メルティーヌ様は、ティモルト王国をどれくらい破壊していらしたのかしら?」
「えーと、怒りに任せて暴れ回ってきましたわ~! 修理期間に最低三ヶ月はかかると思いますの!」
胸を張ってお答えになるメルティーヌ様。今はそんな姿が頼もしいですわ。
「ありがとう。メルティーヌ様。では、まだ大丈夫そうね。念のためにお手紙だけ出しておきましょうか」
ものすごい地響きでしたもの。心配の手紙を送ったっておかしくないわよ、ね?
「本当に焦りましたわね! あの王子、ツリアーヌ様のことジロジロ見過ぎですわ!」
「本当にそうだな」
「……って、メルティーヌ様がなぜ我が国に?」
「あの王子が何か仕掛けてくるんじゃないかと不安だから、おそばにいたいと父上に懇願いたしましたわ!」
メルティーヌ様が我が国に遊びにくることが日常となりつつありますわ……。ミカルド王子との婚約話が交渉に入ったと噂で伺っておりますが、実際のところはいかがなのでしょう……そんなことをお聞きするのは野暮ですわね。
「イノーマス帝国は一体何を考えているのでしょうか?」
「王妃陛下! 緊急の連絡です! オヴェスト王国がイノーマス帝国に降伏したそうです!」
わたくしたちの元に文官が駆け込んできました。思ったよりもかなり早くオヴェスト王国が敗北しました。
「メルティーヌ様。わたくしを守ってくださるお気持ちはありがたいですが、帰国が必要になるでしょう。自国にお戻りくださいませ」
「ツリアーヌ様……。ヤリアント様! 絶対にツリアーヌ様をお守りくださいませ!? わかりましたね!」
「我が身に代えても守ろう」
オヴェスト王国の領地がイノーマス帝国領となります。つまり、我が国もボレアース王国も隣国となるわけです。
「オヴェスト王国の内部は、どうなったのでしょうか?」
「国王は処刑され、重鎮はその前にシューデン王国やボレアース王国に逃げ出していたようです」
「……愚かなのは国王であったということですね」
「メルティーヌ様がボレアース王国に帰国され、我が国の武力はかなり減りましたわ。シューデン王国とも調整を図りましょう」
「そうだな。そうしよう」
シューデン王国との調整を図り、隣国エステ王国の混乱の状況を把握し、ティモルト王国の王宮の状態も確認しなければなりません。
「シューデン王国もおそらく情報を得ているでしょう。先日の訪問で同盟の締結を行いましたわ。向こうからも動きはあるでしょうけど、早いに越したことはありませんわ」
国境付近で会合を開き、シューデンはそちらで対応します。残りのエステ王国の様子は……。
「ツリアーヌ王妃陛下。エステ王国のミルフレッツァ王女から使者とお手紙が返ってきました」
支援の感謝と混乱の収拾に向けて動き始めたという報告でした。
これでおそらく、エステ王国が背後から攻めてくることはありませんわ。
「残るは、ティモルト王国ですか……」
帰り支度をしているメルティーヌ様の方向をチラリと見てしまいました。すると、目が合ったメルティーヌ様が嬉しそうに駆け寄っていらっしゃいました。
「お呼びですか!? ツリアーヌ様」
「忙しいところごめんなさい。確認したいことがあって……」
「ツリアーヌ様の願いなら、全てを放り捨てて参りますわ!」
キラキラしたおめめをこちらに向けるメルティーヌ様。お美しいわ。そうではなくて……。
「メルティーヌ様は、ティモルト王国をどれくらい破壊していらしたのかしら?」
「えーと、怒りに任せて暴れ回ってきましたわ~! 修理期間に最低三ヶ月はかかると思いますの!」
胸を張ってお答えになるメルティーヌ様。今はそんな姿が頼もしいですわ。
「ありがとう。メルティーヌ様。では、まだ大丈夫そうね。念のためにお手紙だけ出しておきましょうか」
ものすごい地響きでしたもの。心配の手紙を送ったっておかしくないわよ、ね?
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