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2.この国の行方
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「ツリア、婚約破棄してしまって本当に良かったのか?」
「ええ、お父様。だってこの国に未来があるとお思いで?」
内政に深く絡んでいたわたくしは、知っております。我が国の財政がもはや破綻していることも、我が国の将来などないことも。
「我が領地を守ることを最優先にいたしましょう」
我が国が他国に蹂躙される可能性は、隣国五カ国とのやり取りでわたくしがすんでのところで回避しておりました。あと少しで、五等分の分国にされるところでしたもの。
となると、わたくしが王家の中枢から抜けた今、各国が王家を乗っ取り傀儡となすことを考えるでしょう? 実際、ルチル様のお母様は東の隣国であるエステ王国のご出身。お父様は東南のティモルト王国のご出身でいらっしゃいましたわ。第二王子の婚約者候補とされているお方は、南にあるシューデン王国の姫君の血が入ったお方です。現王妃は北にあるボレアース王国の姫君で、王弟の奥方は西にあるオヴェスト王国の王族のお方と伺っております。
もはや、我がミリュー王家に純血のミリュー人はいないのです。
昨今の政策を見ても、各国への融通ばかりです。わたくしが精一杯止めておりましたが、各国からの労働者のみの賃金を上げ、優遇しているのが実情ですわ。
「ヤリアント様は、いつ頃領地におつきになるのかしら?」
「引き継ぎを終えたら、即座に辞表を出して我が領にきてくださると言っていたが……」
「では、ヤリアント様がいらしたら、わたくしがプロポーズをするわ。婚姻の準備を進めておいてくださる?」
「その、ヤリアント様がツリアのことを気に入らない可能性は……」
「お父様ったら心配性ね! それならば、お父様の養子にすればいいだけよ! 優秀な人材は我が家で抱え込まなければ、独立国家なんて作れないわ?」
ヤリアント様を我が領地に引き込んだ頃、きっと内乱が勃発するでしょう。わたくしという止金が外れてしまったのだから。
◇◇◇
「お待たせして申し訳ございません。フェイジョア公爵令嬢、そして、フェイジョア公爵」
「もう! ヤリアント様ったら。待っていたわ。早速だけど、わたくしと婚姻してくださるかしら?」
わたくしの差し出す書類を受け取ったヤリアント様は、思わずと言った様子で固まられました。
「ヤリアント様?」
そう言って顔を覗き込むと、顔を真っ赤にして背けてしまわれました。お嫌だったのかしら?
「お嫌でしたら、お父様との養子縁組でもよろしくてよ?」
「僕が、フェイジョア公爵令嬢と婚姻を結ばなければ、貴女を守る方法がなくなってしまうでしょう? 僕を王家の崩壊から救ってくださった貴女を……」
ヤリアント様は、公式にはされていませんが、先の国王がメイドに手をつけてお生まれになったお方です。王国に飼い殺しにされるところを私が引き抜いたのです。賠償金代わりとして。
賠償金を支払う余裕のない王国は、喜んで承認してくださいました。このやりとりは、書類だけ準備してお父様に任せてあったので、わたくしは、ヤリアント様が領地にいらっしゃるのを今か今かとお待ちしていたのですわ。
「僕が王都を出る頃には、世論に扇動された国民たちの反乱が、起こっていました」
「では、各国から圧力がかかるのはもう少し先かしら? その前に婚姻を済ませてしまいましょう?」
わたくしがそう微笑むと、照れくさそうにヤリアント様がおっしゃいました。
「こういうときは、せめて僕に言わせてください。ツリアーヌ嬢、僕と結婚してくださいますか?」
「えぇ、もちろん喜んで。ヤリアント様のこと、大好きですわ」
「ですから、あなたというお方は……」
顔を真っ赤にしてヤリアント様が続けます。
「僕の言いたいことを先に言わないでください。……絶対にあなたを幸せにします」
「ええ、お父様。だってこの国に未来があるとお思いで?」
内政に深く絡んでいたわたくしは、知っております。我が国の財政がもはや破綻していることも、我が国の将来などないことも。
「我が領地を守ることを最優先にいたしましょう」
我が国が他国に蹂躙される可能性は、隣国五カ国とのやり取りでわたくしがすんでのところで回避しておりました。あと少しで、五等分の分国にされるところでしたもの。
となると、わたくしが王家の中枢から抜けた今、各国が王家を乗っ取り傀儡となすことを考えるでしょう? 実際、ルチル様のお母様は東の隣国であるエステ王国のご出身。お父様は東南のティモルト王国のご出身でいらっしゃいましたわ。第二王子の婚約者候補とされているお方は、南にあるシューデン王国の姫君の血が入ったお方です。現王妃は北にあるボレアース王国の姫君で、王弟の奥方は西にあるオヴェスト王国の王族のお方と伺っております。
もはや、我がミリュー王家に純血のミリュー人はいないのです。
昨今の政策を見ても、各国への融通ばかりです。わたくしが精一杯止めておりましたが、各国からの労働者のみの賃金を上げ、優遇しているのが実情ですわ。
「ヤリアント様は、いつ頃領地におつきになるのかしら?」
「引き継ぎを終えたら、即座に辞表を出して我が領にきてくださると言っていたが……」
「では、ヤリアント様がいらしたら、わたくしがプロポーズをするわ。婚姻の準備を進めておいてくださる?」
「その、ヤリアント様がツリアのことを気に入らない可能性は……」
「お父様ったら心配性ね! それならば、お父様の養子にすればいいだけよ! 優秀な人材は我が家で抱え込まなければ、独立国家なんて作れないわ?」
ヤリアント様を我が領地に引き込んだ頃、きっと内乱が勃発するでしょう。わたくしという止金が外れてしまったのだから。
◇◇◇
「お待たせして申し訳ございません。フェイジョア公爵令嬢、そして、フェイジョア公爵」
「もう! ヤリアント様ったら。待っていたわ。早速だけど、わたくしと婚姻してくださるかしら?」
わたくしの差し出す書類を受け取ったヤリアント様は、思わずと言った様子で固まられました。
「ヤリアント様?」
そう言って顔を覗き込むと、顔を真っ赤にして背けてしまわれました。お嫌だったのかしら?
「お嫌でしたら、お父様との養子縁組でもよろしくてよ?」
「僕が、フェイジョア公爵令嬢と婚姻を結ばなければ、貴女を守る方法がなくなってしまうでしょう? 僕を王家の崩壊から救ってくださった貴女を……」
ヤリアント様は、公式にはされていませんが、先の国王がメイドに手をつけてお生まれになったお方です。王国に飼い殺しにされるところを私が引き抜いたのです。賠償金代わりとして。
賠償金を支払う余裕のない王国は、喜んで承認してくださいました。このやりとりは、書類だけ準備してお父様に任せてあったので、わたくしは、ヤリアント様が領地にいらっしゃるのを今か今かとお待ちしていたのですわ。
「僕が王都を出る頃には、世論に扇動された国民たちの反乱が、起こっていました」
「では、各国から圧力がかかるのはもう少し先かしら? その前に婚姻を済ませてしまいましょう?」
わたくしがそう微笑むと、照れくさそうにヤリアント様がおっしゃいました。
「こういうときは、せめて僕に言わせてください。ツリアーヌ嬢、僕と結婚してくださいますか?」
「えぇ、もちろん喜んで。ヤリアント様のこと、大好きですわ」
「ですから、あなたというお方は……」
顔を真っ赤にしてヤリアント様が続けます。
「僕の言いたいことを先に言わないでください。……絶対にあなたを幸せにします」
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