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婚約期間の過ごし方
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「オズは、今日の試験でも満点を取ったのよ? 貴女との結婚のために本当に頑張っているわ」
「まぁ、そうなのですね。さすが優秀な第一皇子ですわ」
“なんとか第一皇子の気持ちが伝わって、マリーにも反応して欲しい”という皇后の思いも虚しく、マリーの笑顔は作られたものだ。
「マリー、見てちょうだい? オズはもう外国語の習得を終わらせたのよ?」
「私も頑張らなくてはなりませんね」
そう微笑むマリーに、違う、伝えたいことはそうじゃない、と思いながらも、第一皇子も皇后も何も言えなかった。
他の者たちにはわからないだろうが、マリーのことを見続けてきた皇后や第一皇子には、微笑みが作り上げられたものだと一見してわかってしまう。
ただ、マリーの胸中は素直に優秀な皇子に関心し、お世辞であろうと自らのために頑張ってくれていることを嬉しく思っていたのだった。 しかし、その想いには2人は気づかなかった。
ーーーー
「マリー、今日は皇后陛下やオズベルト様とどんなお話をしたの?」
帰宅したマリーに母が問いかける。
「今日は、楽しくお茶を飲みましたの。第一皇子様は大変優秀で、皇后陛下は私のために頑張っているって言ってくださったわ」
「そう、よかったわね?」
「はい、お母様。途中でお父様と皇帝陛下もいらして……」
そう話すマリーは楽しそうであった。
ーーーー
「マリーとの関係がなかなか好転しないのよ……このままだと、オズがマリーに飽きて、他の女にうつつを抜かすような男になってしまったら、どうしましょう……」
「うーん、第一皇子様はまだ幼いからどうなるかわからないですものね。他の女性に興味を持たせないようにするのなら、男子校への進学を勧められてはいかがでしょうか?」
「そうね……聞いてみるわ、ありがとう」
6歳になった第一皇子の進学先は男子校となった。
皇后の意向だ。
もしも、愛する息子までも浮気をする男になってしまったら、今度こそ立ち直れない。
息子のことを信じてはいるものの、そう考えた皇后は、女性と関わることのない男子校への進学を第一皇子に勧めた。
「他の学校でしたら会う機会が減るかもしれませんが、その分お茶会を開催して、2人だけの時間を持った方が、大切な時間という印象がついてよろしいのではないでしょうか? 学内で他の男子生徒と会話する姿も見なくて済みますし」
第一皇子本人も、もしもマリーが他の男と微笑んで話している姿を見たら耐えられない。
マリーと緊張して話すことのできない自分と他の男を比べて欲しくないという劣等感もあったのだろう。
あっさり男子校行きを決めた。
マリーへの感情はただのお気に入りなだけで、まだまだ幼いと思っていた第一皇子は、いつの間にか一端の恋愛感情をマリーに抱いていたのだった。
ーーーー
マリーの月に一度の謁見の日。
「とても、お上手ですわ。そうそう、こうやってやると……」
「マリーおねぇしゃま、こうやりゅ?」
時には、謁見時に第二皇子が混ざることもあった。マリーは、面倒見よく、第二皇子のことも可愛がっていた。
その姿を遠巻きながら少し嫉妬心を抱きつつもマリーに会えることを喜び、見つめる第一皇子。
もちろん、マリーは愛らしい子供という気持ちで第二皇子に接していたが、第二皇子は憧れを募らせていった。
「マリーは、おにーしゃまのおよめしゃんになるの? 僕のおよめしゃんにもなって!」
一度、そう駄々をこねたらマリーは困った顔をしていた。もっとも、表情には出ないが。
「ごめんなさい。第二皇子様。私は、第一皇子の婚約者ですわ」
“マリーは、おにーしゃまのおよめしゃんだから、ぼくのおよめしゃんにはなれないの”
一度マリーに困った様子で断られた第二皇子は、幼いながらもその想いにそっと蓋をしたのだった。
「まぁ、そうなのですね。さすが優秀な第一皇子ですわ」
“なんとか第一皇子の気持ちが伝わって、マリーにも反応して欲しい”という皇后の思いも虚しく、マリーの笑顔は作られたものだ。
「マリー、見てちょうだい? オズはもう外国語の習得を終わらせたのよ?」
「私も頑張らなくてはなりませんね」
そう微笑むマリーに、違う、伝えたいことはそうじゃない、と思いながらも、第一皇子も皇后も何も言えなかった。
他の者たちにはわからないだろうが、マリーのことを見続けてきた皇后や第一皇子には、微笑みが作り上げられたものだと一見してわかってしまう。
ただ、マリーの胸中は素直に優秀な皇子に関心し、お世辞であろうと自らのために頑張ってくれていることを嬉しく思っていたのだった。 しかし、その想いには2人は気づかなかった。
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「マリー、今日は皇后陛下やオズベルト様とどんなお話をしたの?」
帰宅したマリーに母が問いかける。
「今日は、楽しくお茶を飲みましたの。第一皇子様は大変優秀で、皇后陛下は私のために頑張っているって言ってくださったわ」
「そう、よかったわね?」
「はい、お母様。途中でお父様と皇帝陛下もいらして……」
そう話すマリーは楽しそうであった。
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「マリーとの関係がなかなか好転しないのよ……このままだと、オズがマリーに飽きて、他の女にうつつを抜かすような男になってしまったら、どうしましょう……」
「うーん、第一皇子様はまだ幼いからどうなるかわからないですものね。他の女性に興味を持たせないようにするのなら、男子校への進学を勧められてはいかがでしょうか?」
「そうね……聞いてみるわ、ありがとう」
6歳になった第一皇子の進学先は男子校となった。
皇后の意向だ。
もしも、愛する息子までも浮気をする男になってしまったら、今度こそ立ち直れない。
息子のことを信じてはいるものの、そう考えた皇后は、女性と関わることのない男子校への進学を第一皇子に勧めた。
「他の学校でしたら会う機会が減るかもしれませんが、その分お茶会を開催して、2人だけの時間を持った方が、大切な時間という印象がついてよろしいのではないでしょうか? 学内で他の男子生徒と会話する姿も見なくて済みますし」
第一皇子本人も、もしもマリーが他の男と微笑んで話している姿を見たら耐えられない。
マリーと緊張して話すことのできない自分と他の男を比べて欲しくないという劣等感もあったのだろう。
あっさり男子校行きを決めた。
マリーへの感情はただのお気に入りなだけで、まだまだ幼いと思っていた第一皇子は、いつの間にか一端の恋愛感情をマリーに抱いていたのだった。
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マリーの月に一度の謁見の日。
「とても、お上手ですわ。そうそう、こうやってやると……」
「マリーおねぇしゃま、こうやりゅ?」
時には、謁見時に第二皇子が混ざることもあった。マリーは、面倒見よく、第二皇子のことも可愛がっていた。
その姿を遠巻きながら少し嫉妬心を抱きつつもマリーに会えることを喜び、見つめる第一皇子。
もちろん、マリーは愛らしい子供という気持ちで第二皇子に接していたが、第二皇子は憧れを募らせていった。
「マリーは、おにーしゃまのおよめしゃんになるの? 僕のおよめしゃんにもなって!」
一度、そう駄々をこねたらマリーは困った顔をしていた。もっとも、表情には出ないが。
「ごめんなさい。第二皇子様。私は、第一皇子の婚約者ですわ」
“マリーは、おにーしゃまのおよめしゃんだから、ぼくのおよめしゃんにはなれないの”
一度マリーに困った様子で断られた第二皇子は、幼いながらもその想いにそっと蓋をしたのだった。
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