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またたびはだめにゃー!
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寝たふりを続ける私に、騒ぎながら、攻撃するふりをするおかあさん。慌てた“かいぬし”がやってきた。
「おい、お前の子供ってわからないのか? この猫は宝なんだ! やめろ!」
「シャーーーーー!」
「だから、やめろって!」
“かいぬし”がおかあさんに夢中な隙に、おとうさんが鍵を壊す。これで一見鍵が閉まってるように見えても、抜け出せる。玄関以外は、来客に見せるための猫用扉が付いていた記憶だ。外に出るには……確か、寝室の窓は空いてたはず! あとは、夜を待つだけ。
おとうさんが無事鍵を壊したことを確認して、私はしっぽを少し動かしておかあさんに合図する。
「にゃあん?」
何事もなかったかのように、私を舐め始めるおかあさん。嬉しいなぁ。
「あ? なんだ? あぁ、自分の子供って気づいたのか」
満足げに“かいぬし”は出て行った。おかあさんは、“かいぬし”に殴られないように、華麗に避けていたから無事だった。あんなにも凶暴なのは想定外だ……次からは、もっと慎重にいこう。
ーーーー
夜になり、寝静まった。おかあさんとおとうさんと一緒に、そっと部屋を抜け出す。
「にゃ」
寝室はこっちだ、と自信満々なお父さんを先頭にそーっと歩く。
「ぐごごごごご」
“かいぬし”が大きないびきをかいて寝ている。本当だ、あそこの窓が開いている。おかあさんがそっと窓を開けると、外に出た。
「にゃ」
大丈夫そうよ? リリー、出てらっしゃい。
私は慎重に慎重に窓を出た。
「ちりん」
チャールズにもらった首輪が、窓に引っかかってしまった。安全のために引っ張ったら外れるようになっているが、大切な首輪! ちゃんとつけて帰りたい!
慌てる私に、近づいてきたおとうさんが一生懸命首輪を窓から外そうとしてくれる。
ガタガタ、ガタガタ……。
「にゃ」
静かにしないと“かいぬし”が起きちゃうわ、大丈夫なの? リリー、おとうさん。
おかあさんが心配そうにこちらを見ている。
「うぅん? なんだ? あ! こら! 脱走する気か!」
“かいぬし”が起きてしまった。私の首を思いっきり引っ張る。首輪が外れて……力強い! 苦しい! 死んじゃう!
力一杯私の首を抑える飼い主は、私が死にそうなことに気づいていない。
「シャーーーーー!」
おとうさんが、慌てて飼い主の手に本気で噛み付く。
「いってーー! 何すんだよ! このクソ猫が!」
“かいぬし”が、おとうさんを思いっきり投げる。
「ぎゃっ」
おとうさんの口から変な声が出る。
「にゃー!」
おとうさん、おとうさん、大丈夫?
私が必死に呼びかけても、返事がない。
「ってぇな! 血が出てきた! 許さねー!」
“かいぬし”が、おとうさんを蹴り飛ばそうと歩いていく。
「にゃーーーー!」
やめて。やめて。チャールズ、助けて!
「何やってるんだ!?」
「にゃ!」
チャールズ! 助けに来てくれた!
騎士姿のチャールズはすごくかっこよかった。文官と勘違いされがちだけど、チャールズは騎士だ。文官の仕事もピカイチにできるだけ。
「あ、いや、その、これは……」
「リリー、大丈夫だった? 首輪が外れたら、位置情報が飛んでくるようにしてあったんだよ。間に合ってよかった」
「にゃー」
チャールズが優しく私を抱き上げ、おかあさんも近寄ってきた。
“かいぬし”の家には、チャールズが連れてきた騎士たちが入っていく。
「にゃ?」
おとうさんは無事? 私を守ってくれたの。
「あいつに蹴り飛ばされそうになっていた猫は、生きているようだよ。ただ、何ヶ所か骨が折れているようで、医師に診てもらわないとな?」
よかった……そう思って、おかあさんと顔を合わせる。
「……すごく似てるな? もしかして、親子、か?」
「にゃっ」
そうだよ!
「模様が一緒……? まさか……中にいるのは、父親猫?」
チャールズが、慌てた様子で確認に行く。飼育状況とかも気づいてくれるかな? チャールズなら、きっと気づいてくれるよね?
「にゃー」
チャールズを連れて、飼育スペースを案内した。
「これは……ひどいな……」
ついでに、机を漁って不正の証拠っぽいのも探す。
「にゃー」
ほら、チャールズ。これ。
「え!? これ!? でかした。リリー」
敵国に武器の密売もしていたらしい。“かいぬし”終わったな。
数日後、チャールズたちの調査の結果、“かいぬし”は投獄された。猫好きの陛下とチャールズ、私のファンとやらのおかげで、トラウマものの口撃にあったようだ。猫を見ると、失禁するレベルらしい。一度、顔見に行ってみようかな? 片付ける人が大変だから、まぁいいや。
ーーーー
「にゃーお!?」
あれ? 久しぶり!
「にゃー!?」
え、その子猫、あんたたちの子か?
陛下の猫とおとうさん、おかあさんが知り合いだと判明した。陛下の猫も“かいぬし”のところで飼われていたらしい。最初、“かいぬし”は、おかあさんだけじゃなくて陛下の猫ともおとうさんと繁殖させようとしてたらしいが、嫌がって逃げ出したらしい。
「にゃー」
わて、人のもん盗るくらいなら死んだほうがマシ。
「にゃーーー」
おとうさんとおかあさんは、王城で暮らし、私はチャールズと暮らすことになりましたとさ。
「にゃー」
子猫を産まないと殺されるから、産み続けてたけど、もう子供はいいかな?
おとうさんとおかあさんは、友達の陛下の猫とのんびり暮らす予定らしい。
「にゃー!!」
だから、病気になったら治癒魔法で治すんじゃなくて、予防が大事なの! そのために、下水道を整備しなさいよ! 掘って、ほら掘ってる! 見て! わかった、出すわよ? 構えれば伝わる?
「わー! リリー! そこでしちゃダメ!」
「そうか。道の下に穴を掘り、汚物を流せばいいのか……臭いがなくなるな……でも、道の下に穴を掘ったら、道が崩れるぞ?」
「にゃっ!」
あ! ちょうどいい! これ借りるね! ほら、鉄と陶器、混ぜたら、伝わらない? 鉄筋コンクリート!
「うん? おお! そうか! 壁に使う土を使って、土台に鉄を使うのか! 賢いな!」
「にゃ!」
やった! 伝わった!
喜びで飛び上がった瞬間、陶器のやつが落ちた。……ぱりん。
「あ……」
やばいって顔して振り返ると、またあの人が嘆いてた。
「あぁ……初めてのボーナスで買った……デザイナーが作った一品もののマグカップ……」
「にゃー」
ごめんって! ほら、お腹撫でていいから! ほら!
「……今回も、リリーの案のために犠牲になったんだ。代わりに私が賠償しよう。デザイナーを呼んで、好きなデザインで作ってもらうといい」
「にゃー!」
陛下、太っ腹! 助かるー。
次は、陛下に駆け寄って、お腹を出しながらゴロゴロいう。あ、そこだめ。力抜ける。
「リリーには、またたびな?」
「にゃ!?」
それダメぇ。癖になるやつ。おとうさんおかあさんにも差し入れしよ。
「おい、お前の子供ってわからないのか? この猫は宝なんだ! やめろ!」
「シャーーーーー!」
「だから、やめろって!」
“かいぬし”がおかあさんに夢中な隙に、おとうさんが鍵を壊す。これで一見鍵が閉まってるように見えても、抜け出せる。玄関以外は、来客に見せるための猫用扉が付いていた記憶だ。外に出るには……確か、寝室の窓は空いてたはず! あとは、夜を待つだけ。
おとうさんが無事鍵を壊したことを確認して、私はしっぽを少し動かしておかあさんに合図する。
「にゃあん?」
何事もなかったかのように、私を舐め始めるおかあさん。嬉しいなぁ。
「あ? なんだ? あぁ、自分の子供って気づいたのか」
満足げに“かいぬし”は出て行った。おかあさんは、“かいぬし”に殴られないように、華麗に避けていたから無事だった。あんなにも凶暴なのは想定外だ……次からは、もっと慎重にいこう。
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夜になり、寝静まった。おかあさんとおとうさんと一緒に、そっと部屋を抜け出す。
「にゃ」
寝室はこっちだ、と自信満々なお父さんを先頭にそーっと歩く。
「ぐごごごごご」
“かいぬし”が大きないびきをかいて寝ている。本当だ、あそこの窓が開いている。おかあさんがそっと窓を開けると、外に出た。
「にゃ」
大丈夫そうよ? リリー、出てらっしゃい。
私は慎重に慎重に窓を出た。
「ちりん」
チャールズにもらった首輪が、窓に引っかかってしまった。安全のために引っ張ったら外れるようになっているが、大切な首輪! ちゃんとつけて帰りたい!
慌てる私に、近づいてきたおとうさんが一生懸命首輪を窓から外そうとしてくれる。
ガタガタ、ガタガタ……。
「にゃ」
静かにしないと“かいぬし”が起きちゃうわ、大丈夫なの? リリー、おとうさん。
おかあさんが心配そうにこちらを見ている。
「うぅん? なんだ? あ! こら! 脱走する気か!」
“かいぬし”が起きてしまった。私の首を思いっきり引っ張る。首輪が外れて……力強い! 苦しい! 死んじゃう!
力一杯私の首を抑える飼い主は、私が死にそうなことに気づいていない。
「シャーーーーー!」
おとうさんが、慌てて飼い主の手に本気で噛み付く。
「いってーー! 何すんだよ! このクソ猫が!」
“かいぬし”が、おとうさんを思いっきり投げる。
「ぎゃっ」
おとうさんの口から変な声が出る。
「にゃー!」
おとうさん、おとうさん、大丈夫?
私が必死に呼びかけても、返事がない。
「ってぇな! 血が出てきた! 許さねー!」
“かいぬし”が、おとうさんを蹴り飛ばそうと歩いていく。
「にゃーーーー!」
やめて。やめて。チャールズ、助けて!
「何やってるんだ!?」
「にゃ!」
チャールズ! 助けに来てくれた!
騎士姿のチャールズはすごくかっこよかった。文官と勘違いされがちだけど、チャールズは騎士だ。文官の仕事もピカイチにできるだけ。
「あ、いや、その、これは……」
「リリー、大丈夫だった? 首輪が外れたら、位置情報が飛んでくるようにしてあったんだよ。間に合ってよかった」
「にゃー」
チャールズが優しく私を抱き上げ、おかあさんも近寄ってきた。
“かいぬし”の家には、チャールズが連れてきた騎士たちが入っていく。
「にゃ?」
おとうさんは無事? 私を守ってくれたの。
「あいつに蹴り飛ばされそうになっていた猫は、生きているようだよ。ただ、何ヶ所か骨が折れているようで、医師に診てもらわないとな?」
よかった……そう思って、おかあさんと顔を合わせる。
「……すごく似てるな? もしかして、親子、か?」
「にゃっ」
そうだよ!
「模様が一緒……? まさか……中にいるのは、父親猫?」
チャールズが、慌てた様子で確認に行く。飼育状況とかも気づいてくれるかな? チャールズなら、きっと気づいてくれるよね?
「にゃー」
チャールズを連れて、飼育スペースを案内した。
「これは……ひどいな……」
ついでに、机を漁って不正の証拠っぽいのも探す。
「にゃー」
ほら、チャールズ。これ。
「え!? これ!? でかした。リリー」
敵国に武器の密売もしていたらしい。“かいぬし”終わったな。
数日後、チャールズたちの調査の結果、“かいぬし”は投獄された。猫好きの陛下とチャールズ、私のファンとやらのおかげで、トラウマものの口撃にあったようだ。猫を見ると、失禁するレベルらしい。一度、顔見に行ってみようかな? 片付ける人が大変だから、まぁいいや。
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「にゃーお!?」
あれ? 久しぶり!
「にゃー!?」
え、その子猫、あんたたちの子か?
陛下の猫とおとうさん、おかあさんが知り合いだと判明した。陛下の猫も“かいぬし”のところで飼われていたらしい。最初、“かいぬし”は、おかあさんだけじゃなくて陛下の猫ともおとうさんと繁殖させようとしてたらしいが、嫌がって逃げ出したらしい。
「にゃー」
わて、人のもん盗るくらいなら死んだほうがマシ。
「にゃーーー」
おとうさんとおかあさんは、王城で暮らし、私はチャールズと暮らすことになりましたとさ。
「にゃー」
子猫を産まないと殺されるから、産み続けてたけど、もう子供はいいかな?
おとうさんとおかあさんは、友達の陛下の猫とのんびり暮らす予定らしい。
「にゃー!!」
だから、病気になったら治癒魔法で治すんじゃなくて、予防が大事なの! そのために、下水道を整備しなさいよ! 掘って、ほら掘ってる! 見て! わかった、出すわよ? 構えれば伝わる?
「わー! リリー! そこでしちゃダメ!」
「そうか。道の下に穴を掘り、汚物を流せばいいのか……臭いがなくなるな……でも、道の下に穴を掘ったら、道が崩れるぞ?」
「にゃっ!」
あ! ちょうどいい! これ借りるね! ほら、鉄と陶器、混ぜたら、伝わらない? 鉄筋コンクリート!
「うん? おお! そうか! 壁に使う土を使って、土台に鉄を使うのか! 賢いな!」
「にゃ!」
やった! 伝わった!
喜びで飛び上がった瞬間、陶器のやつが落ちた。……ぱりん。
「あ……」
やばいって顔して振り返ると、またあの人が嘆いてた。
「あぁ……初めてのボーナスで買った……デザイナーが作った一品もののマグカップ……」
「にゃー」
ごめんって! ほら、お腹撫でていいから! ほら!
「……今回も、リリーの案のために犠牲になったんだ。代わりに私が賠償しよう。デザイナーを呼んで、好きなデザインで作ってもらうといい」
「にゃー!」
陛下、太っ腹! 助かるー。
次は、陛下に駆け寄って、お腹を出しながらゴロゴロいう。あ、そこだめ。力抜ける。
「リリーには、またたびな?」
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それダメぇ。癖になるやつ。おとうさんおかあさんにも差し入れしよ。
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