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第一章 黒部里奈と黒部真司
なんでもします
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「ちょっと真司、頭上げなさいよ!」
里奈は慌てて俺の頭を上げさせる。そして周囲を見渡して、誰もこちらに気付いてないのを確認する。
「何やってんのよ!こんな光景見たらみんなびっくりするじゃない・・・。」
ちょっとだけ呆れ口調で里奈は俺にそう言ってきた。
「いやでも、これ謝らなきゃダメだろ・・・。」
俺のせいでどれだけ今日のオフ会で里奈を混乱させたかを考えれば、あの泣きそうな顔とか思いだすと、これくらいじゃ全く返せてない。
あいつからすりゃ、覚えていて当然のはずの「約束そのもの」も忘れてたんだからな。
で、思いっきり混乱している姉貴をよそに、俺ときたら調子こいて団長やら明海さんやらと楽しくオフ会満喫しようとしていたわけで。
「あのさ、俺、なんでもするから、だから許してくんないか?」
これが今の俺に出来る精一杯の謝罪だった。
あいつがゲームやめろって言えばやめるし、逆にレベル上げ手伝えって言えばほいほいついていくよ。そんな事を言うとは思えんが、話しかけるなって言われたら甘んじて受け入れます。
「だめか?」
返事がないので、そんくらいの謝罪じゃダメかと思ってたら
「なんでも・・するの?」
と、返事が帰ってきた。
「え?あ、うん。俺に出来る範囲でならなんでもやるよ」
実際そう思ってるし、なんでもする気満々だったよ俺は。かなり寂しい思いもさせてたみたいだしな。
あれ?でもなんか、あいつの目がすげえ輝いてる気がする。今日何度目かの、俺の中の「嫌な予感センサー」がビンビンに反応してるんだけど・・・・。
「指輪買ったの・・・」
「ん?」
「指輪!レッドリング!」
いきなり指輪とか言うから何かと思ったが、どうやらゲーム内アイテムの「レッドリング」の事だったらしい。
レッドリングとは、正式名称を【紅い指輪】と言い、ゲーム内で恋人申請をしたプレイヤー同士が、その証として装備するものだ。
俺と里奈、つまり「エリナ」と「ダーク」も、ゲーム内で恋人申請する気満々で、もうすぐレッドリング買おうねって話をしてたんだよ。
今考えると、実の姉と恋人申請しようとしてたわけで、すげえ恥ずかしいっつーか、おぞましいな。
「あれだろ?前言ってたリングだろ?」
それはわかるが、なんでこのタイミングで言うのか全くわからん。
あれか?リング代返せってことか?それだったら、お安・・・くは無いが全財産つぎ込んでもお返しますけどね。
「そう。二人分買ったから」
あーOKOK。二人分まとめて払いますよ。こんくらいで許してもらえるなら安いもんだよ。
「だから今度、二人で恋人申請にいくからね!」
おーけーおーk・・・・・・・・・・・・・・。
「はああああああ!?」
俺が思い切りでかい声だしたもんだから、部屋中の視線が俺に注がれる。
「えっと、何かあったの?」
心配した団長が声をかけに来てくれた。後で聞いたことだが、俺と里奈の様子が変だったので、一応ずっと気にかけてくれてたらしい。
「いえ、ちょっとびっくりさせる話を私がしちゃって」
間髪入れずに姉貴が団長に返答した。
「そう?」
あまり問題ないのを見ると、団長は向こうへと戻っていった。部屋に再び喧騒が戻ってくる。
「ちょっと!大きな声出さないでよ!」
「あほか!びっくりするに決まっとるわ!恋人申請するって言ったのかお前」
「そうよ!」
なんの気後れも無く胸を張って答える里奈。
いやびっくりしたよ!姉貴に悪いことしたから、その償いも込めてなんでもするって言ったらとんでもない事言いやがった。
「お前、弟と恋人申請とか、もしかして変態!?」
「は、はあ?ばっかじゃないの!誰があんたと付き合うもんですか!」
「いやいやいや、お前自分で何言ってるかわかってんの?」
こいつは一体何を言っとるんだ。恋人申請するのに付き合うわけではないとか意味わからんわ!
「あんた、レッドリングの機能知ってるの?」
あ、物凄いしょっぱい目で俺を見てる。もう、こいつからのまるでゴミでも見るかのような眼差しも慣れてきたな。不本意ながら。
「いや全然」
「そうじゃないかと思ったわよ。」
呆れ返るような口調で里奈は俺に説明をしてくれた。
簡単に言うと、レッドリングには様々な機能が追加されていて、恋人申請したカップルだけが機能を使えるらしい。つまり、姉貴としてはその機能をぜひとも使いたいらしい。
「つまり、リングの機能を使うために付き合う振りをするってことか」
「そういうこと」
なるほどなあ。このリングの機能はとても便利で、お互いに離れた場所にいても、一瞬でお互いの所へ飛んでいけたり出来るらしい。まあ、飛ぶの不可能な場所もあるみたいだけど。
けど、なんでもするって、そんな事でいいんだろうか?俺は無論構わないんだが・・・。そう里奈に尋ねると
「他に何ができるのよ」
って言われた。すんません特に何も出来ません。
「とにかく、私は今やってる回復系の職業を極めたいと思ってるの。その為には相方が必要なのよ。」
確かに回復系のクラスは、単騎でのレベル上げは効率悪いからなあ。その点、俺は里奈との狩りには慣れてるし、気を使う必要もないと言えるかも。
「大体あんたも、黒を征するって目標があるんでしょ?」
「ねーよ!」
姉貴に言わせれば、これまでずっとダークと狩りしてて呼吸はぴったりだし、新たにパートナー見つけるのは面倒だと言うことらしい。
「それにあんた相手なら、変な気を使わずに済みそうだしね!」
遠慮無く文句言いまくる気満々だなこいつ・・・。 でもまあ、最悪な事態にならなくて良かったよ。
あれ?でもちょっと待てよ。俺はある一つの疑問を里奈にぶつけてみる。
「なあ、俺達が姉弟だって事は公表せんの?」
「あんた馬鹿なの?そんな事言ったら恋人申請とか恥ずかしくてできないでしょ!」
そっかあ?明海さんあたりから冷やかされるくらいで、結構みんな気にしないと思うけどな。まあでも、姉貴がそう言うなら俺は別に良いけどね。
しかし今度から、ギルドチャットとかで、どんな態度で「ダーク」として「エリナ」に接すればいいのか全くわからん。その事を里奈言うと、
「ああ、それならスカイプっていう無料ネット通話使えばいいでしょ」
と返事が帰ってきた。
つまり、チャットで会話がなくても「スカイプで話してるんだろう」ってギルドメンバーは考えるでしょ、との事だ。
エリナが里奈ってわかった以上、まあ、あいつもそうだと思うけど、前みたいな会話を皆の前でするのは絶対無理だ。
うわ、一瞬あいつとのの昔の会話を色々と思い出しちゃったよ。これは永久に俺の心の中にしまっておこう、うん。
そんな事を考えながらふと時計をみると20時を回ろうとしていた。俺の初めてのオフ会も、終わりに近づいていた。
まあ色々あったけど、長年・・・はおおげさだが、色々な疑問も解けたし、一応あいつに謝罪も出来たし、ハッピーエンド・・・なのか?
里奈は慌てて俺の頭を上げさせる。そして周囲を見渡して、誰もこちらに気付いてないのを確認する。
「何やってんのよ!こんな光景見たらみんなびっくりするじゃない・・・。」
ちょっとだけ呆れ口調で里奈は俺にそう言ってきた。
「いやでも、これ謝らなきゃダメだろ・・・。」
俺のせいでどれだけ今日のオフ会で里奈を混乱させたかを考えれば、あの泣きそうな顔とか思いだすと、これくらいじゃ全く返せてない。
あいつからすりゃ、覚えていて当然のはずの「約束そのもの」も忘れてたんだからな。
で、思いっきり混乱している姉貴をよそに、俺ときたら調子こいて団長やら明海さんやらと楽しくオフ会満喫しようとしていたわけで。
「あのさ、俺、なんでもするから、だから許してくんないか?」
これが今の俺に出来る精一杯の謝罪だった。
あいつがゲームやめろって言えばやめるし、逆にレベル上げ手伝えって言えばほいほいついていくよ。そんな事を言うとは思えんが、話しかけるなって言われたら甘んじて受け入れます。
「だめか?」
返事がないので、そんくらいの謝罪じゃダメかと思ってたら
「なんでも・・するの?」
と、返事が帰ってきた。
「え?あ、うん。俺に出来る範囲でならなんでもやるよ」
実際そう思ってるし、なんでもする気満々だったよ俺は。かなり寂しい思いもさせてたみたいだしな。
あれ?でもなんか、あいつの目がすげえ輝いてる気がする。今日何度目かの、俺の中の「嫌な予感センサー」がビンビンに反応してるんだけど・・・・。
「指輪買ったの・・・」
「ん?」
「指輪!レッドリング!」
いきなり指輪とか言うから何かと思ったが、どうやらゲーム内アイテムの「レッドリング」の事だったらしい。
レッドリングとは、正式名称を【紅い指輪】と言い、ゲーム内で恋人申請をしたプレイヤー同士が、その証として装備するものだ。
俺と里奈、つまり「エリナ」と「ダーク」も、ゲーム内で恋人申請する気満々で、もうすぐレッドリング買おうねって話をしてたんだよ。
今考えると、実の姉と恋人申請しようとしてたわけで、すげえ恥ずかしいっつーか、おぞましいな。
「あれだろ?前言ってたリングだろ?」
それはわかるが、なんでこのタイミングで言うのか全くわからん。
あれか?リング代返せってことか?それだったら、お安・・・くは無いが全財産つぎ込んでもお返しますけどね。
「そう。二人分買ったから」
あーOKOK。二人分まとめて払いますよ。こんくらいで許してもらえるなら安いもんだよ。
「だから今度、二人で恋人申請にいくからね!」
おーけーおーk・・・・・・・・・・・・・・。
「はああああああ!?」
俺が思い切りでかい声だしたもんだから、部屋中の視線が俺に注がれる。
「えっと、何かあったの?」
心配した団長が声をかけに来てくれた。後で聞いたことだが、俺と里奈の様子が変だったので、一応ずっと気にかけてくれてたらしい。
「いえ、ちょっとびっくりさせる話を私がしちゃって」
間髪入れずに姉貴が団長に返答した。
「そう?」
あまり問題ないのを見ると、団長は向こうへと戻っていった。部屋に再び喧騒が戻ってくる。
「ちょっと!大きな声出さないでよ!」
「あほか!びっくりするに決まっとるわ!恋人申請するって言ったのかお前」
「そうよ!」
なんの気後れも無く胸を張って答える里奈。
いやびっくりしたよ!姉貴に悪いことしたから、その償いも込めてなんでもするって言ったらとんでもない事言いやがった。
「お前、弟と恋人申請とか、もしかして変態!?」
「は、はあ?ばっかじゃないの!誰があんたと付き合うもんですか!」
「いやいやいや、お前自分で何言ってるかわかってんの?」
こいつは一体何を言っとるんだ。恋人申請するのに付き合うわけではないとか意味わからんわ!
「あんた、レッドリングの機能知ってるの?」
あ、物凄いしょっぱい目で俺を見てる。もう、こいつからのまるでゴミでも見るかのような眼差しも慣れてきたな。不本意ながら。
「いや全然」
「そうじゃないかと思ったわよ。」
呆れ返るような口調で里奈は俺に説明をしてくれた。
簡単に言うと、レッドリングには様々な機能が追加されていて、恋人申請したカップルだけが機能を使えるらしい。つまり、姉貴としてはその機能をぜひとも使いたいらしい。
「つまり、リングの機能を使うために付き合う振りをするってことか」
「そういうこと」
なるほどなあ。このリングの機能はとても便利で、お互いに離れた場所にいても、一瞬でお互いの所へ飛んでいけたり出来るらしい。まあ、飛ぶの不可能な場所もあるみたいだけど。
けど、なんでもするって、そんな事でいいんだろうか?俺は無論構わないんだが・・・。そう里奈に尋ねると
「他に何ができるのよ」
って言われた。すんません特に何も出来ません。
「とにかく、私は今やってる回復系の職業を極めたいと思ってるの。その為には相方が必要なのよ。」
確かに回復系のクラスは、単騎でのレベル上げは効率悪いからなあ。その点、俺は里奈との狩りには慣れてるし、気を使う必要もないと言えるかも。
「大体あんたも、黒を征するって目標があるんでしょ?」
「ねーよ!」
姉貴に言わせれば、これまでずっとダークと狩りしてて呼吸はぴったりだし、新たにパートナー見つけるのは面倒だと言うことらしい。
「それにあんた相手なら、変な気を使わずに済みそうだしね!」
遠慮無く文句言いまくる気満々だなこいつ・・・。 でもまあ、最悪な事態にならなくて良かったよ。
あれ?でもちょっと待てよ。俺はある一つの疑問を里奈にぶつけてみる。
「なあ、俺達が姉弟だって事は公表せんの?」
「あんた馬鹿なの?そんな事言ったら恋人申請とか恥ずかしくてできないでしょ!」
そっかあ?明海さんあたりから冷やかされるくらいで、結構みんな気にしないと思うけどな。まあでも、姉貴がそう言うなら俺は別に良いけどね。
しかし今度から、ギルドチャットとかで、どんな態度で「ダーク」として「エリナ」に接すればいいのか全くわからん。その事を里奈言うと、
「ああ、それならスカイプっていう無料ネット通話使えばいいでしょ」
と返事が帰ってきた。
つまり、チャットで会話がなくても「スカイプで話してるんだろう」ってギルドメンバーは考えるでしょ、との事だ。
エリナが里奈ってわかった以上、まあ、あいつもそうだと思うけど、前みたいな会話を皆の前でするのは絶対無理だ。
うわ、一瞬あいつとのの昔の会話を色々と思い出しちゃったよ。これは永久に俺の心の中にしまっておこう、うん。
そんな事を考えながらふと時計をみると20時を回ろうとしていた。俺の初めてのオフ会も、終わりに近づいていた。
まあ色々あったけど、長年・・・はおおげさだが、色々な疑問も解けたし、一応あいつに謝罪も出来たし、ハッピーエンド・・・なのか?
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