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プロローグ
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人々が行き交うストリートで、建物の陰に隠れて辺りを窺う少年たちがいた。
「あそこだ、ほら」
薄い金髪の少年が、顎で指した先には、店がある。雑貨屋だ。
「あそこのじいさん、この間、ぼくのこと万引き犯人扱いしたんだよ」
「なんで?」
「じいさんが置いたばっかりの商品がなくなっていたんだ。お会計もしていないし、その時店にいたのはぼくだけだったんだ」
「へーえ、マヌケだな!」
「ほんとだよ! まだ盗む前だったのにさ!」
万引き目的で雑貨屋に入ったことを隠さない少年に、他の少年たちはげらげらと笑った。
「で、万引きした奴は、誰だったんだ?」
「ぼくが入るのと、すれ違いに出て行った男だよ。たぶんね。タイミングがよかったもん。ぼくになすりつけようとしたんだよ」
「お前よりアタマいいな」
また遠慮なく笑う少年たちに、金髪の少年はアッカンベーをした。
「冷やかしに来たんなら、あっち行けよ」
「怒るなよ、サイモン。それで、どうする?」
「あのじいさんに文句言いたいけど、それより本当の犯人を捕まえたいんだ。ぼくの名誉のために」
「きっとママも喜んでくれるぜ。サイモンちゃん、今度はきちんと盗むのよってな」
「うるさいなあ」
サイモンはふくれっ面をして、リーダー格の少年にお願いする。
「いいだろ、ジャレッド。やったことで叱られるならいいけど、やっていないことで言われるのは許せないんだ。絶対に、あいつを捕まえたいんだ」
「OK」
ジャレッドは座っていたコンクリートブロックから腰をあげた。
「そいつは、またここに来るのか?」
「たぶん! だって一度成功したんだもん。またやりに来るに決まっているよ!」
「わかった。おれたちで捕まえよう。そのろくでなしを、思いっきり蹴っ飛ばしてやろうぜ」
「うん、正義はきちんと行われないとね!」
自分のことを棚にあげて鼻息を荒くするサイモンに、ジャレッドは軽く笑って、傍らの少年を振り返った。
「いいだろ、トラヴィス」
「ああ、そういう嘘つき野郎はボコボコにしてやらないとな」
トラヴィスも立ちあがると、ジャレッドの手のひらに拳を当てた。
「やろうぜ、おれたちで」
「あそこだ、ほら」
薄い金髪の少年が、顎で指した先には、店がある。雑貨屋だ。
「あそこのじいさん、この間、ぼくのこと万引き犯人扱いしたんだよ」
「なんで?」
「じいさんが置いたばっかりの商品がなくなっていたんだ。お会計もしていないし、その時店にいたのはぼくだけだったんだ」
「へーえ、マヌケだな!」
「ほんとだよ! まだ盗む前だったのにさ!」
万引き目的で雑貨屋に入ったことを隠さない少年に、他の少年たちはげらげらと笑った。
「で、万引きした奴は、誰だったんだ?」
「ぼくが入るのと、すれ違いに出て行った男だよ。たぶんね。タイミングがよかったもん。ぼくになすりつけようとしたんだよ」
「お前よりアタマいいな」
また遠慮なく笑う少年たちに、金髪の少年はアッカンベーをした。
「冷やかしに来たんなら、あっち行けよ」
「怒るなよ、サイモン。それで、どうする?」
「あのじいさんに文句言いたいけど、それより本当の犯人を捕まえたいんだ。ぼくの名誉のために」
「きっとママも喜んでくれるぜ。サイモンちゃん、今度はきちんと盗むのよってな」
「うるさいなあ」
サイモンはふくれっ面をして、リーダー格の少年にお願いする。
「いいだろ、ジャレッド。やったことで叱られるならいいけど、やっていないことで言われるのは許せないんだ。絶対に、あいつを捕まえたいんだ」
「OK」
ジャレッドは座っていたコンクリートブロックから腰をあげた。
「そいつは、またここに来るのか?」
「たぶん! だって一度成功したんだもん。またやりに来るに決まっているよ!」
「わかった。おれたちで捕まえよう。そのろくでなしを、思いっきり蹴っ飛ばしてやろうぜ」
「うん、正義はきちんと行われないとね!」
自分のことを棚にあげて鼻息を荒くするサイモンに、ジャレッドは軽く笑って、傍らの少年を振り返った。
「いいだろ、トラヴィス」
「ああ、そういう嘘つき野郎はボコボコにしてやらないとな」
トラヴィスも立ちあがると、ジャレッドの手のひらに拳を当てた。
「やろうぜ、おれたちで」
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