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「俺たちは付き合っている。そうだろう?」
「もちろんだ。だからここにいる」
「そうだ。とてもシンプルだ。だが、それだけだ。俺たちにはこういったロマンスが足りないんだ。わかるだろう?」
ジェレミーは何を今さらというような視線をそそぐ。
「別に足りなくても構わない。支障はない」
「それだ、ジェレミー。お前も足りない」
自分のことを棚にあげて、トラヴィスは説教をかます。
「お前が口にする言葉は、くそったれな捜査官そのものだ。俺は今事件を捜査しに来ているんじゃない。お前と仲良く休暇を過ごすために来ているんだ、このアリゾナという惑星にな。二人きりの世界だ。喧嘩もするだろうし、寝相が悪ければベッドから蹴落とすだろう。明日にはネバダに脱出してUFОを探しに行くかもしれない。だがらサプライズが必要だ。この眩しいイルミネーションのようなドラマチックなサプライズがな」
よほど周辺の景観がトラヴィスの心のスイッチに触れたのか、もしくは先程の赤ワインで酔ったのか、激しく熱弁を振るう。
「何をして欲しいんだ」
やや呆れたようにジェレミーは単刀直入に聞く。
「簡単だ。俺は今、あまり頭が正気じゃない」
どうやら浮かれているようだと、当人が驚いた口調でつけ加える。
「それで」
「正気じゃないから言う。もっと恋人同士というものを満喫したい」
「満喫している。私はな」
「俺が言いたいのは」
くそったれめというように言い返す。
「俺たちには足りないものがある。ここへ来て理解した。もっとスイートな付き合いにレベルアップしようぜ。せめてここにいる間はな」
「わかった」
ジェレミーは即答する。
「本当にわかったのか」
「お前が酔っているのはわかった」
「酔っているわけがないだろう。あれっぽっちの赤ワインで」
「ワインではない」
腰に両手をやって堂々と否定するトラヴィスから顔を少しだけ逸らす。自分の口元に浮かんだ苦笑を隠すためだ。
「お前が酔っているのは、周辺の雰囲気にだ。浮かれているという自己認識は正しい」
トラヴィスはムッとしたように男らしい眉を吊り上げた。この全くスイートではない恋人にジョークの刑でも喰らわせてやろうかと口を開きかけたが、代わりに頭をかいた。
「くそったれめ。だがお前の言っていることは正しいんだろう。それで、俺の提案に乗るのか乗らないのかどっちだ?」
「もちろん、答えはイエスだ」
ジェレミーは先に立ってコテージのドアの鍵を開けると、ドアの縁を手で押さえながらトラヴィスを振り返った。
「さあ、スイートな時間を始めようか」
キングサイズのベッドは上質で頑丈だったので、体格の良い男二人が横になってもビクともしなかった。
「スイートなリクエストはあるか?」
リネンの白いシーツの上で仰向けになったトラヴィスを、ジェレミーが背中を屈めて見下ろしている。二人が着ていた衣類はソファーの上に散らかっている。室内の照明を消し、互いの裸体も見えない暗闇の下、ベッドサイドのランプだけが点いている。
「そうだな、まずはオーソドックスなところからだな」
トラヴィスは両腕をジェレミーの背中へ回し、自分へ引き寄せる。
「ああ、甘ったるい匂いがする。さっきのワインだな」
「嫌な匂いではないだろう」
ジェレミーはトラヴィスの頭を両手で抱くと、自然に唇を重ねる。じっとりと味わうように繰り返しキスをする。
「――お前も甘い味がする。悪くはないな」
唇を離して、ジェレミーがからかう。
「お互いにワインを味わいながらセックスなんて最高だな、ジェレミー」
「そうだな。休暇に相応しい行為だ」
トラヴィスの首筋に顔を埋めて唇を這わせる。首筋から肩へ、厚い胸へ。
唇の柔らかい感触を肌で感じながら、トラヴィスは微かに息を吐き出した
。
「……お前は、腕のいいマッサージ師になれるぞ」
「私は専門だ、お前のな」
胸の表面を口元でなぞっていく。鍛えている肉体はとても優雅だ。優雅でいて、男らしく、挑発的だ。
「俺はお前の雇い主ってわけか?」
トラヴィスは面白そうに声をあげる。
「それも悪くはない」
ジェレミーは左腕をトラヴィスの腰の下まで伸ばした。足の間に手を忍ばせて、ペニスを触る。ペニスはもう濡れていた。
「とうに準備なら出来てい……」
ふっくらとした白い枕の上でトラヴィスは言葉を切ると、息を吐いて頭を横に向けた。ジェレミーはペニスを握ると、優しく扱き始めた。
気持ちの良い快感が、腰下から這い上がってくる。無意識に腰が動いた。
「……ジェレミー」
「何だ」
「お前は……興奮させるのがうまい……」
トラヴィスの声はかすれている。
ジェレミーは笑って頭をあげた。
「お前こそ、トラヴィス。人の煽り方をよく知っている」
とろりとなったペニスを手離し、トラヴィスの両足を両手でこじ開けた。剥き出しになった恥部を触ると、冷たく湿っていてシーツを濡らしている。
ジェレミーはトラヴィスの両足を押さえて、恥部に顔を埋める。よい感じに湿ったペニスを口に含んだ。
トラヴィスは胸を反らして息をつく。ベッドサイドのランプが視界にちらつく。暗い空間に慣れてきた目には、火花のように眩しい。
「……明日は」
ジェレミーに吸われているのを感じながら、熱くなった声をあげる。
「明日のことは、明日考えればいい」
ペニスから口を離し、手の甲で口元を拭う。
「明日のことよりも、今を楽しむんだな、トラヴィス」
ジェレミーはベッドサイドのランプを消し室内を暗闇にする。それからトラヴィスの膝を折り曲げると、下から両腕で抱え込む。両手で色っぽくくびれた腰を掴むと、自分のペニスを秘所に押し当てた。
「ああ……そうだな」
硬い感触に、こそばゆい笑いがこぼれる。
「お前とのセックスアトラクションを楽しまないとな」
「満足するはずだ」
ジェレミーは不敵に言うと、キングサイズのベッドを揺らすほどに抱き始めた。
「もちろんだ。だからここにいる」
「そうだ。とてもシンプルだ。だが、それだけだ。俺たちにはこういったロマンスが足りないんだ。わかるだろう?」
ジェレミーは何を今さらというような視線をそそぐ。
「別に足りなくても構わない。支障はない」
「それだ、ジェレミー。お前も足りない」
自分のことを棚にあげて、トラヴィスは説教をかます。
「お前が口にする言葉は、くそったれな捜査官そのものだ。俺は今事件を捜査しに来ているんじゃない。お前と仲良く休暇を過ごすために来ているんだ、このアリゾナという惑星にな。二人きりの世界だ。喧嘩もするだろうし、寝相が悪ければベッドから蹴落とすだろう。明日にはネバダに脱出してUFОを探しに行くかもしれない。だがらサプライズが必要だ。この眩しいイルミネーションのようなドラマチックなサプライズがな」
よほど周辺の景観がトラヴィスの心のスイッチに触れたのか、もしくは先程の赤ワインで酔ったのか、激しく熱弁を振るう。
「何をして欲しいんだ」
やや呆れたようにジェレミーは単刀直入に聞く。
「簡単だ。俺は今、あまり頭が正気じゃない」
どうやら浮かれているようだと、当人が驚いた口調でつけ加える。
「それで」
「正気じゃないから言う。もっと恋人同士というものを満喫したい」
「満喫している。私はな」
「俺が言いたいのは」
くそったれめというように言い返す。
「俺たちには足りないものがある。ここへ来て理解した。もっとスイートな付き合いにレベルアップしようぜ。せめてここにいる間はな」
「わかった」
ジェレミーは即答する。
「本当にわかったのか」
「お前が酔っているのはわかった」
「酔っているわけがないだろう。あれっぽっちの赤ワインで」
「ワインではない」
腰に両手をやって堂々と否定するトラヴィスから顔を少しだけ逸らす。自分の口元に浮かんだ苦笑を隠すためだ。
「お前が酔っているのは、周辺の雰囲気にだ。浮かれているという自己認識は正しい」
トラヴィスはムッとしたように男らしい眉を吊り上げた。この全くスイートではない恋人にジョークの刑でも喰らわせてやろうかと口を開きかけたが、代わりに頭をかいた。
「くそったれめ。だがお前の言っていることは正しいんだろう。それで、俺の提案に乗るのか乗らないのかどっちだ?」
「もちろん、答えはイエスだ」
ジェレミーは先に立ってコテージのドアの鍵を開けると、ドアの縁を手で押さえながらトラヴィスを振り返った。
「さあ、スイートな時間を始めようか」
キングサイズのベッドは上質で頑丈だったので、体格の良い男二人が横になってもビクともしなかった。
「スイートなリクエストはあるか?」
リネンの白いシーツの上で仰向けになったトラヴィスを、ジェレミーが背中を屈めて見下ろしている。二人が着ていた衣類はソファーの上に散らかっている。室内の照明を消し、互いの裸体も見えない暗闇の下、ベッドサイドのランプだけが点いている。
「そうだな、まずはオーソドックスなところからだな」
トラヴィスは両腕をジェレミーの背中へ回し、自分へ引き寄せる。
「ああ、甘ったるい匂いがする。さっきのワインだな」
「嫌な匂いではないだろう」
ジェレミーはトラヴィスの頭を両手で抱くと、自然に唇を重ねる。じっとりと味わうように繰り返しキスをする。
「――お前も甘い味がする。悪くはないな」
唇を離して、ジェレミーがからかう。
「お互いにワインを味わいながらセックスなんて最高だな、ジェレミー」
「そうだな。休暇に相応しい行為だ」
トラヴィスの首筋に顔を埋めて唇を這わせる。首筋から肩へ、厚い胸へ。
唇の柔らかい感触を肌で感じながら、トラヴィスは微かに息を吐き出した
。
「……お前は、腕のいいマッサージ師になれるぞ」
「私は専門だ、お前のな」
胸の表面を口元でなぞっていく。鍛えている肉体はとても優雅だ。優雅でいて、男らしく、挑発的だ。
「俺はお前の雇い主ってわけか?」
トラヴィスは面白そうに声をあげる。
「それも悪くはない」
ジェレミーは左腕をトラヴィスの腰の下まで伸ばした。足の間に手を忍ばせて、ペニスを触る。ペニスはもう濡れていた。
「とうに準備なら出来てい……」
ふっくらとした白い枕の上でトラヴィスは言葉を切ると、息を吐いて頭を横に向けた。ジェレミーはペニスを握ると、優しく扱き始めた。
気持ちの良い快感が、腰下から這い上がってくる。無意識に腰が動いた。
「……ジェレミー」
「何だ」
「お前は……興奮させるのがうまい……」
トラヴィスの声はかすれている。
ジェレミーは笑って頭をあげた。
「お前こそ、トラヴィス。人の煽り方をよく知っている」
とろりとなったペニスを手離し、トラヴィスの両足を両手でこじ開けた。剥き出しになった恥部を触ると、冷たく湿っていてシーツを濡らしている。
ジェレミーはトラヴィスの両足を押さえて、恥部に顔を埋める。よい感じに湿ったペニスを口に含んだ。
トラヴィスは胸を反らして息をつく。ベッドサイドのランプが視界にちらつく。暗い空間に慣れてきた目には、火花のように眩しい。
「……明日は」
ジェレミーに吸われているのを感じながら、熱くなった声をあげる。
「明日のことは、明日考えればいい」
ペニスから口を離し、手の甲で口元を拭う。
「明日のことよりも、今を楽しむんだな、トラヴィス」
ジェレミーはベッドサイドのランプを消し室内を暗闇にする。それからトラヴィスの膝を折り曲げると、下から両腕で抱え込む。両手で色っぽくくびれた腰を掴むと、自分のペニスを秘所に押し当てた。
「ああ……そうだな」
硬い感触に、こそばゆい笑いがこぼれる。
「お前とのセックスアトラクションを楽しまないとな」
「満足するはずだ」
ジェレミーは不敵に言うと、キングサイズのベッドを揺らすほどに抱き始めた。
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