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第五話⑥
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「おお!! 一年生たちではないか!! 真面目で感心感心!!」
白い空手着を着た宇佐美である。なぜか仁王立ちで更衣室のドアの前にいる。
「あれ……ここって空手部だっけ?」
颯天は天然にきょろきょろと見回して呟く。すると宇佐美は腰に両手をやって胸を張る。
「剣道部だ!! 間違ってはいないぞ!! 俺も間違ってはいない!!」
廊下中に咆哮が轟く。
颯天はヤバい物体に遭遇したように伝馬の腕を掴んで身を引く。伝馬も立ち往生した恰好で、どうしようかと宇佐美を仰ぎ見る。何でここにいるのかは不明だが、とりあえず中に入らないと部活ができない。
「あの」
と、落ち着いて声をかけた時、後ろから「宇佐美、何をやってんだ!」と複数の足音と共に麻樹たち三年生が現れた。
「待っていたぞ!!」
宇佐美はまるで果し合いでもするかのような口上で吠える。対して麻樹は足早に駆け寄って「アホ!」と応戦した。
「待ってんじゃねーよ! お前めちゃくちゃ邪魔だろうが!」
宇佐美の前で固まっている一年生二人の横に立って手で追い払う仕草をする。
「お前のせいで一年生たちが入れねーだろう」
「うむ!! それはすまなかった!!」
とか言いながら、宇佐美は筋肉が盛り上がった胸の前で両腕をがっしりと組む。
「上戸を待っていた!! 話がある!!」
「わかったから、どけろって」
麻樹は一向に動こうとしない宇佐美を両手で押し出しながら、伝馬と颯天に顎をしゃくる。
「お前ら、早く入れ」
「――はい」
二人は急いで空いた隙間にドアを開けて更衣室に入る。
「聞け!! 上戸!! 先程生徒会の会合があった!! 上戸と俺でやることが決まった!!!」
「はあ?! 何の話だ?!」
「なぜなら!! 俺と上戸は無二の親友だからだ!!!」
「意味わかんねーぞ!!」
先輩ズの会話が派手に飛びかうのを横目に、伝馬は更衣室のドアをびちっと閉めた。
「あー、びっくりした。もうヤバいって」
颯天は怪奇現象にでも遭ったかのようなビビり方をする。
「何なんだよ、あの先輩。ちょーヤバいじゃんか」
「うん、びっくりしたな」
伝馬は相槌を打ちながらも、おかしそうに表情をゆるめる。とても個性的な先輩だが、上戸先輩とは本当に仲が良いのだと感じられた。二人の会話が成り立っていないような会話が、どことなく勇太と自分との会話にダブった。
「桐枝って、ヤバいよな」
颯天が感心した口調でロッカーを開ける。
伝馬は詰襟の上着を脱ぎながら、どの「ヤバい」なのか考える。颯天は全て「ヤバい」の一言を駆使して毎日暮らしている。
「全然、落ち着いているよな。ヤバいよ。俺はもう無理」
「俺だってびっくりしているって。でもあまり顔に出ないんだと思う」
前に勇太や圭に言われたような気がする。伝馬はぼやきたくなる。だから今自分が落ち込んでいるのもわかってもらえない。いや、わかってもらいたいわけではないが。
白い空手着を着た宇佐美である。なぜか仁王立ちで更衣室のドアの前にいる。
「あれ……ここって空手部だっけ?」
颯天は天然にきょろきょろと見回して呟く。すると宇佐美は腰に両手をやって胸を張る。
「剣道部だ!! 間違ってはいないぞ!! 俺も間違ってはいない!!」
廊下中に咆哮が轟く。
颯天はヤバい物体に遭遇したように伝馬の腕を掴んで身を引く。伝馬も立ち往生した恰好で、どうしようかと宇佐美を仰ぎ見る。何でここにいるのかは不明だが、とりあえず中に入らないと部活ができない。
「あの」
と、落ち着いて声をかけた時、後ろから「宇佐美、何をやってんだ!」と複数の足音と共に麻樹たち三年生が現れた。
「待っていたぞ!!」
宇佐美はまるで果し合いでもするかのような口上で吠える。対して麻樹は足早に駆け寄って「アホ!」と応戦した。
「待ってんじゃねーよ! お前めちゃくちゃ邪魔だろうが!」
宇佐美の前で固まっている一年生二人の横に立って手で追い払う仕草をする。
「お前のせいで一年生たちが入れねーだろう」
「うむ!! それはすまなかった!!」
とか言いながら、宇佐美は筋肉が盛り上がった胸の前で両腕をがっしりと組む。
「上戸を待っていた!! 話がある!!」
「わかったから、どけろって」
麻樹は一向に動こうとしない宇佐美を両手で押し出しながら、伝馬と颯天に顎をしゃくる。
「お前ら、早く入れ」
「――はい」
二人は急いで空いた隙間にドアを開けて更衣室に入る。
「聞け!! 上戸!! 先程生徒会の会合があった!! 上戸と俺でやることが決まった!!!」
「はあ?! 何の話だ?!」
「なぜなら!! 俺と上戸は無二の親友だからだ!!!」
「意味わかんねーぞ!!」
先輩ズの会話が派手に飛びかうのを横目に、伝馬は更衣室のドアをびちっと閉めた。
「あー、びっくりした。もうヤバいって」
颯天は怪奇現象にでも遭ったかのようなビビり方をする。
「何なんだよ、あの先輩。ちょーヤバいじゃんか」
「うん、びっくりしたな」
伝馬は相槌を打ちながらも、おかしそうに表情をゆるめる。とても個性的な先輩だが、上戸先輩とは本当に仲が良いのだと感じられた。二人の会話が成り立っていないような会話が、どことなく勇太と自分との会話にダブった。
「桐枝って、ヤバいよな」
颯天が感心した口調でロッカーを開ける。
伝馬は詰襟の上着を脱ぎながら、どの「ヤバい」なのか考える。颯天は全て「ヤバい」の一言を駆使して毎日暮らしている。
「全然、落ち着いているよな。ヤバいよ。俺はもう無理」
「俺だってびっくりしているって。でもあまり顔に出ないんだと思う」
前に勇太や圭に言われたような気がする。伝馬はぼやきたくなる。だから今自分が落ち込んでいるのもわかってもらえない。いや、わかってもらいたいわけではないが。
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