2 / 12
出会い編
2
しおりを挟む
「見ろ! あの速さ! あれこそ愛の証だ!!」
「……縛り首にしたいくらい愛されているってことだな、レオン」
「そうだとも。まさにデンジャラス・イン・ラブラブだ」
レオンは色気たっぷりにウィンクする。マルコはこりゃ駄目だというように、後ろにいるヴァイオに注意した。
「やばくなったら、いつでも船ごとどこかへ飛ばしてくれ」
「へいさー」
サンタ・マリア海賊団お抱え魔術師ヴァイオは、凛々しい少年の姿できりっと答えた。昨日は魔術『立体三次元』でブロンド美女の姿をして、女に飢えている仲間からグラビア代として小銭をふんだくっていたが、将来のためのアルバイトは終わったようだ。
「爺さん、元気かな? しばらく会っていないから、心配になってきた」
レオンは無事な右目だけを器用に細める。左目は一文字の傷痕があって、まったく開かない。
「バデーリ提督が聞いたら、泣きながらロープを首に巻いてくれるぞ、レオン」
「そうだな、爺さんのために俺も一肌脱いで、一回くらい死んでやるかな」
やる気満々で両腕を振り回す。一度も死んだことがないくせにとマルコはぼやきながら、とりあえず甲板にいる仲間たちへ注意した。
「おい、おめーら。適当に相手してやれよ。俺たちは問題を起こさない海賊団として、アル&マーニーともブランド契約しているんだからな。くれぐれも海賊になりたい子供の夢を壊すなよー」
「へいさー」
海賊たちはまるで遠足へ行くような気軽さで飛びあがる。サンタ・マリア海賊団は過去に新大陸で発行されている雑誌「フォーブスブス」で世界のセレブ一〇〇にも選ばれたことがあり、旧大陸の著名なファッションデザイナーであるアル&マーニーの専属モデル軍団としても有名である。
「よーし、俺も燃えてきたぜ! 爺さん! 今から会いに行くからな!」
レオンはへりの上にのりあがると、どんどん近づいてくるロイヤル・ネルソン号へ盛大な投げキッスをする。その後ろでイエーイイエーイと肩を組んで踊りだす仲間たちに、真面目な副船長は、半分白けながら一言注意した。
「おめーら、一応戦闘準備くらいしろ……」
ほどなく戦いは始まった。
まずロイヤル・ネルソン号がサンタ・マリア号へ向けて至近距離から大砲を撃ち込んだ。この大砲は新大陸のマウンテンロッキード社製のもので、去年古代都市カ・タールで開催された世界武器屋ショーで紹介された新商品である。従来の大砲に命中率二〇〇パーセントの魔術をインプットし、宝くじより絶対に当たる! というキャッチフレーズとともに現在世界中で売り出されている。そのキャッチフレーズどおりに、派手に撃ち込んだが、サンタ・マリア号にはかすりもしなかった。
サンタ・マリア号のマストの上には、推定年齢不詳の魔術師ヴァイオがいた。今は美少年の姿をしているヴァイオは、めんどくさいな~と欠伸をしながら、魔術師のマストアイテムである魔術書『仮想空間』をポケットから取り出して、密林の書を開くと、きりりっと呪文を唱えた。
「アレクサーラ! 飛んでくる弾丸をつぶせ!」
すると、その本がピカーッと光り、にょきにょきと巨人族の腕が本のページから浮き出ると、弾丸を気持ちよく手で押し潰していった。
宝くじより絶対に当たるはずの弾丸が当たらないどころか簡単に潰されるのを目撃したロイヤル・ネルソン号は、若き海軍提督の怒りの号令もと、突撃アタックを決行した。二つの大型帆船が波しぶきを上げてぶつかりあう。
海賊たちと海軍兵士たちはそれぞれ剣や銃を手にすると、互いに雄叫びをあげながら相手帆船に乗り込んでいった。
「臆するな! 海賊どもを打ち倒せ!!」
バスターはそう鼓舞しながら、かかってきた海賊の一人をなぎ倒した。手には女王陛下より賜った円卓の剣の一つランスロットがある。
「戦え!!」
そう叫びながら、バスターは周囲に目を散らしていた。探しているのは、勿論、サンタ・マリア海賊団の船長である。
どこにいると目を皿のようにしながら、バスターは憎い敵を探し回っていた。脳裏に甦るのは、同じく円卓の剣の一つであるガラハッドをまんまと盗み出し、その後なんと「Hello ОK」誌の独占インタビューを受けていたレオンの記事である。七つの海にも知れ渡る恐るべきパパラッチーズの一角を担う「Hello ОK」誌は独自ルートで隻眼のレオンに接触、独占インタビューに成功すると、特集を組んでその詳細な活動を記していた。
バスターはまだロイヤル・ネルソン号に乗船する前であったが、その記事を読んであやうく憤死するところであった。盗まれた円卓の剣は、イングレス女王国の国宝で、遥かに遠い昔に当時の女王グウィネスに仕えていた円卓の騎士たちが帯びていた剣の総称である。ガラハッドは女王の弟公が所有していたが、愉快な弟公が一緒にいたジェントルマンと熱いティータイムをしている時に、堂々と盗み出したと告白。海賊家業でいい仕事ができたと笑顔でウィンクするレオンの写真を睨みつけながら、世界の果てまでも追いかけてやると誓ったバスターであった。
――あのふざけた連中を絶対に縛り首にしてみせる!
日頃の清楚で品格のある顔立ちに血圧を上昇させて、鼻息荒く剣を振り回す。
「……縛り首にしたいくらい愛されているってことだな、レオン」
「そうだとも。まさにデンジャラス・イン・ラブラブだ」
レオンは色気たっぷりにウィンクする。マルコはこりゃ駄目だというように、後ろにいるヴァイオに注意した。
「やばくなったら、いつでも船ごとどこかへ飛ばしてくれ」
「へいさー」
サンタ・マリア海賊団お抱え魔術師ヴァイオは、凛々しい少年の姿できりっと答えた。昨日は魔術『立体三次元』でブロンド美女の姿をして、女に飢えている仲間からグラビア代として小銭をふんだくっていたが、将来のためのアルバイトは終わったようだ。
「爺さん、元気かな? しばらく会っていないから、心配になってきた」
レオンは無事な右目だけを器用に細める。左目は一文字の傷痕があって、まったく開かない。
「バデーリ提督が聞いたら、泣きながらロープを首に巻いてくれるぞ、レオン」
「そうだな、爺さんのために俺も一肌脱いで、一回くらい死んでやるかな」
やる気満々で両腕を振り回す。一度も死んだことがないくせにとマルコはぼやきながら、とりあえず甲板にいる仲間たちへ注意した。
「おい、おめーら。適当に相手してやれよ。俺たちは問題を起こさない海賊団として、アル&マーニーともブランド契約しているんだからな。くれぐれも海賊になりたい子供の夢を壊すなよー」
「へいさー」
海賊たちはまるで遠足へ行くような気軽さで飛びあがる。サンタ・マリア海賊団は過去に新大陸で発行されている雑誌「フォーブスブス」で世界のセレブ一〇〇にも選ばれたことがあり、旧大陸の著名なファッションデザイナーであるアル&マーニーの専属モデル軍団としても有名である。
「よーし、俺も燃えてきたぜ! 爺さん! 今から会いに行くからな!」
レオンはへりの上にのりあがると、どんどん近づいてくるロイヤル・ネルソン号へ盛大な投げキッスをする。その後ろでイエーイイエーイと肩を組んで踊りだす仲間たちに、真面目な副船長は、半分白けながら一言注意した。
「おめーら、一応戦闘準備くらいしろ……」
ほどなく戦いは始まった。
まずロイヤル・ネルソン号がサンタ・マリア号へ向けて至近距離から大砲を撃ち込んだ。この大砲は新大陸のマウンテンロッキード社製のもので、去年古代都市カ・タールで開催された世界武器屋ショーで紹介された新商品である。従来の大砲に命中率二〇〇パーセントの魔術をインプットし、宝くじより絶対に当たる! というキャッチフレーズとともに現在世界中で売り出されている。そのキャッチフレーズどおりに、派手に撃ち込んだが、サンタ・マリア号にはかすりもしなかった。
サンタ・マリア号のマストの上には、推定年齢不詳の魔術師ヴァイオがいた。今は美少年の姿をしているヴァイオは、めんどくさいな~と欠伸をしながら、魔術師のマストアイテムである魔術書『仮想空間』をポケットから取り出して、密林の書を開くと、きりりっと呪文を唱えた。
「アレクサーラ! 飛んでくる弾丸をつぶせ!」
すると、その本がピカーッと光り、にょきにょきと巨人族の腕が本のページから浮き出ると、弾丸を気持ちよく手で押し潰していった。
宝くじより絶対に当たるはずの弾丸が当たらないどころか簡単に潰されるのを目撃したロイヤル・ネルソン号は、若き海軍提督の怒りの号令もと、突撃アタックを決行した。二つの大型帆船が波しぶきを上げてぶつかりあう。
海賊たちと海軍兵士たちはそれぞれ剣や銃を手にすると、互いに雄叫びをあげながら相手帆船に乗り込んでいった。
「臆するな! 海賊どもを打ち倒せ!!」
バスターはそう鼓舞しながら、かかってきた海賊の一人をなぎ倒した。手には女王陛下より賜った円卓の剣の一つランスロットがある。
「戦え!!」
そう叫びながら、バスターは周囲に目を散らしていた。探しているのは、勿論、サンタ・マリア海賊団の船長である。
どこにいると目を皿のようにしながら、バスターは憎い敵を探し回っていた。脳裏に甦るのは、同じく円卓の剣の一つであるガラハッドをまんまと盗み出し、その後なんと「Hello ОK」誌の独占インタビューを受けていたレオンの記事である。七つの海にも知れ渡る恐るべきパパラッチーズの一角を担う「Hello ОK」誌は独自ルートで隻眼のレオンに接触、独占インタビューに成功すると、特集を組んでその詳細な活動を記していた。
バスターはまだロイヤル・ネルソン号に乗船する前であったが、その記事を読んであやうく憤死するところであった。盗まれた円卓の剣は、イングレス女王国の国宝で、遥かに遠い昔に当時の女王グウィネスに仕えていた円卓の騎士たちが帯びていた剣の総称である。ガラハッドは女王の弟公が所有していたが、愉快な弟公が一緒にいたジェントルマンと熱いティータイムをしている時に、堂々と盗み出したと告白。海賊家業でいい仕事ができたと笑顔でウィンクするレオンの写真を睨みつけながら、世界の果てまでも追いかけてやると誓ったバスターであった。
――あのふざけた連中を絶対に縛り首にしてみせる!
日頃の清楚で品格のある顔立ちに血圧を上昇させて、鼻息荒く剣を振り回す。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします
椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう!
こうして俺は逃亡することに決めた。
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
騎士エリオット視点を含め全10話。
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
その空を映して
hamapito
BL
――お迎えにあがりました。マイプリンセス。
柔らかな夏前の風に乗って落とされた声。目の前で跪いているのは、俺の手をとっているのは……あの『陸上界のプリンス』――朝見凛だった。
過去のある出来事により走高跳を辞めてしまった遼平。高校でも陸上部に入ったものの、今までのような「上を目指す」空気は感じられない。これでよかったのだと自分を納得させていた遼平だったが、五年前に姿を消したはずの『陸上界のプリンス』朝見凛が現れて――?
※表紙絵ははじめさま(https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/830680097)よりいただいております。
身代わりオメガの純情
夕夏
BL
宿無しの少年エレインは、靴磨きで生計を立てている。彼はある日、死んでしまったレドフォード伯爵家の次男アルフレッドに成り代わり嫁ぐことを伯爵家の執事トーマスに提案され、困惑する。しかし知り合いの死を機に、「アルフレッド」に成り代わることを承諾する。
バース性がわからないまま、オメガのふりをしてバーレント伯爵エドワードと婚約したエレイン。オメガであることを偽装するために、媚薬を飲み、香水を使うも、エドワードにはあっさりと看破されてしまう。はじめは自分に興味を示さないかと思われていたエドワードから思いもよらない贈り物を渡され、エレインは喜ぶと同時に自分がアルフレッドに成り代わっていることを恥じる。エレインは良心の呵責と幸せの板挟みにあいながら、夜会や春祭りでエドワードと心を通わせていく。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる