【第二章/皇国・慣らし五夜編】王太子に離縁されました?上等です。最強の皇帝陛下の【魔眼】と共に、世界攻略を致しますので!【R18・完結】

猫まんじゅう

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11. 獣人の友、白猫セシル

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ああ、来ますね。悪役のご令嬢が・・・、皆様、彼女には感情移入しないようにお気を付けを。この国で悪い事をする人間は良い結末を迎えませんのでね。良い子にしているに限ります。
端折っている裏の状況は白猫セシル6,7,8頃。https://novel18.syosetu.com/n8750ia/

*****************************

 
 リリアーナは後宮の自室の寝台で目を覚ました。
 寝台の目の前の椅子に座って、見守っていてくれたらしいシャルロッテが直ぐに立ち上がり心配そうに声をかける。


「リリアーナ様っ、良かった。心配致しました」
「ええと······、、」


 リリアーナは脳裏に残る、最後の記憶を呼び起こした。 確か、シルフィアと初めてお茶会をして、その途中で美しい白猫の少女を見つけこの離宮に連れてきた。

 確か、、名前は······セシル。とそこまで思い出して記憶が雪崩のように鮮明に蘇ってくる。

 セドリックに恋心を寄せているであろうその少女は、この国の皇帝であるヴィクトールによって縁談を持ち掛けられた。 それに加えて、セドリックの方も既に婚約者がいて確か······“初夜”を迎えると言っていたのだっけ。

 そして、そのあまりに切ないすれ違いに完全に感情移入してしまい、怒りが抑えられず······そこからの記憶は全くない。


「・・・私、眠っていたのね?」

「はい、もう丸一日はお目覚めにならず。直ぐにメイドを呼びますね。食事はいかが致しますか?」

「シャル、貴女は大丈夫?」

「? 何故、私の心配をしてくださるのですか?」

「当たりまえでしょう? ヴィクトール様に怒られてはいない?」

「大丈夫です。私は怒られておりません。」

 それに、リリアーナの気を失っている間ずっとお世話ができたし役得だった。と、彼女は口には出さずにほほ笑んだ。

「セドリック様、怒ってらしたわよね。でもセシル様が可哀想で······私、放っておけなくて」

「あの方は、貴族の責務とやらに憑りつかれているんでしょうね。きっと、」

 シャルロッテはため息を零しながら言葉を続ける。

「宰相のご婚約者は子爵家の二女という身分はそこまで高くない方のようですし、きっと体裁だけの問題だったんでしょう」


 特に彼はヴィクトール陛下のことしか考えてないようですし。とシャルロッテは遠くを見て呟いた。
 どうせ、同じタイミングで子供を作りたいとかそんな所だろう。 と心の中で結論づけて。


「でも、ヴィクトール様は自由恋愛も寛容なのではないのかしら? とても臣下想いで、柔軟な思考をしていらっしゃると思うのだけど、」 

「確かにそうですね、ヴィクトール様はとても柔軟です。でも、リリアーナ様もなんとなく感じていらっしゃるかもしれませんが、皇国は神殿がかなりの幅を利かせています。 初夜も婚儀も『慣らし五夜』も、男女に関わる事は全て神殿が深く関わっていますから。」


 確かに、この国の、特に男性は信仰心が熱い。
 神殿に訪れた時も男性信者が多くいた、とリリアーナは納得した。
 今後、皇后としての地位に就いたならば一度歴史とその関係性、神殿についても学びなおした方がいいだろうかとリリアーナは漠然と考える。



 そしてそれから数日経ち、シャルロッテはセシルが皇城に保護されたという情報を一早く持ってきた。

 詳細は彼女の尊厳を重んじるために制限されているようであったが、どうやらリリアーナが気を失っていたあの日、セドリックの初夜が始まるタイミングで獣人であるセシルの発情期が重なり、セドリック(が自身の初夜を放棄して彼女の純潔を奪ったのだとか。

 そしてそれだけに留まらず、彼女セシルを軟禁し、婚約者を放置した事でヴィクトールの怒りを買った。

 その結果、セシルは皇城で保護されたらしい。

 シャルロッテの話によれば、貴族や名のある大きな名家や商家に嫁ぐのには少なくとも”初夜の儀”は必須であり、破瓜の際に使用したシーツを証として神殿に提出しなければ婚姻は成立しないようだ。


「最悪『慣らし五夜』はそこまで重要視されない平民の名家は多いですが、”初夜の儀”は確実に必須になります。セドリック様が責任を取られない場合、セシル様は本当に身分の低い方としか婚姻できないでしょう。」


 まあ、最近の皇国には身分が低くても有能な人材が溢れていますし、研究所で彼女は人気の様ですから、困らないとは思いますが。 とシャルロッテは言葉をつけ加えた。

「なるほど。では、シャル、早急にセシル様と面会できるように頼めるかしら?」




 こうして、初めて会った日から五日後という早さでリリアーナはセシルと皇城の庭園で再び面会することとなった。


「セシル様っ!」
「り、リリアーナ様におかれましては、、」


 慣れないカーテシーを頑張って行う様子を見てリリアーナは頬を緩ませた。

「こんなに直ぐに会えるなんて嬉しいわ! 畏まらないで、友達なのだから。さあ、座って?」

 リリアーナは彼女と向かい合せに座る。
 シャルロッテから聞いていた突然の発情期の話や、セドリックとの話は今日はしない事に決めていたのだ。 他愛のない話でセシルと話の花を咲かせる。


「セシル様は、研究所に勤めているのでしたっけ?」

「セシルとお呼びください・・・。はい、研究員として、魔道具を作成しています。」

「では、セシュはどう? 可愛い呼び名だわ! そう呼んでもいいかしら? そういえば魔道具って、素晴らしい発明品よね。私は魔法が使えないから······ 「────え? 魔法が、使えない?」」

「ええ、変でしょう? 魔力はあるみたいなのだけど、魔法は使えないのよ」


 突如セシルの瞳がきらきらと輝き、リリアーナはその瞳に見つめられて、中に吸い込まれていくような感覚を覚える。


「····それは変、です。私には、魔力とその温かい色がしっかり見えるし、何か詳しくは分かりませんが、属性もありそうなのに」

「凄いわ、有能な貴女が言うのだから、そうなのでしょうね。けど、きっとそれを引き出す才能がないのかしら?」

 寂しそうに呟くリリアーナを見て、セシルは首を傾げた。魔力回路の見える魔眼持ちの自分が間違える筈はない。

 確かに魔力も循環しているし、陛下の魔力も勿論混じってはいるが、彼女自身の魔力もかなり強い。
 それも、これだけ温かみのある属性は・・・、と考えてリリアーナの声に現実へと引き戻された。

「そのうち研究所にも行ってみたいわね。魔法の使えない私にも何か作って欲しいくらいだわ、」

「も、もちろん、お作りしますっ!」


 二人は席を立ち、庭園の散策へと歩き出す。

 どんな魔道具を作ればリリアーナの為になるだろうか、魔力を使う事ができない彼女のために何かそれを補えるような······、とセシルは一人想像を膨らませながら先に歩き出したリリアーナの後を追いかけようと足を踏み出した。

 そんな時たまたますれ違った数人のご令嬢のうち一人と肩がぶつかってしまう。
 重心が崩れ、地面に尻もちをついてその痛みを抑えながら上を見上げ、すぐに貴族のご令嬢だと認識してセシルは急いで頭を下げた。


「────────っ、申し訳ございません!」
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