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57. 僕達の初夜をはじめよう

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この話の後は初夜で1話目となります。
次話の58は1話の後という流れとなりますのでご承知おき下さい。
また、こちらはムーンライトで先行して公開しておりますが、現在追いついて参りましたので、投稿数を減らし今週土曜日で完結となります。

********************************


 ヒューベルは自室のドアを開けて、ヒミツの部屋まで歩を進める。

「殿下っ、シェリル様は······ッ!?」

 ヒューベルに抱かれた服の破れたシェリルを見て、ロイは息をのむ。

「直ぐにお召替えを······」
「良い、私がやる。ロイ、エヴァンが戻り次第、ライザルという······酒場の店主にシェリルの護衛に頼むように手配してくれ。こんなんでは私の心臓がいくつあっても持たない」

 言葉の節々から彼の怒りが滲みでて、ロイは深く腰を折った。

「はい。承知致しました、必ずお伝え致します」
「ああ、それと。神殿の者を連れてきてくれ。今から、シェリルとの初夜を執行する」

「へ?は······はい······」

 ロイはあまりに急な事に一瞬思考が停止し、咄嗟に頷いた。

「あ、あの······初夜の準備などは······?」
「必要ない。これは既成事実を作る為のものだ」

「わ、分かりました······」

 ヒューベルが部屋に入ったのを見送って、ロイは直ぐに言われた事を実行するため王城を飛び出した。

「シェリル······ッ、くそ······私の所為だな······」

 シェリルを寝台に横たえ、ヒューベルは紐を優しく解いていく。
 強く掴まれたからか、乱暴に扱われたのか······真っ白な肌に内出血が出来ていて、くっきりと付いた赤黒い痕にヒューベルは顔を歪めた。

「貴女を学園に行かせなければ······こんな事には······」

 温かい湯を張った桶に布を浸し、シェリルの背中を優しく拭きながら、彼は赤紫になった緊縛痕に口づけを落としていく。

 こんなに愛おしい存在を男達に手荒く扱われ、憤慨しない男がいるのだろうか?
 二人の大切な存在すらも守れなかった自分に、シェリルの処女を奪う権利なんてないのかもしれない。
 けれど、自分は彼女がいなければ、どうにかなってしまうから。

「完全に僕の自己満足だ······すまない······」

 ヒューベルは拳を握りしめる。

 仰向けにして横たえ、涙で濡れた顔を優しく拭って、ヒューベルはキスを落としていく。
 破れたドレスから純白の夜着に着替えさせ、彼は彼女を見下ろした。

「シェリル······こんなにまでされて、僕はおかしくなってしまいそうだ······。君をグチャグチャにして、自分の色に染めたいと思ってしまうなんて······、僕も変、なんだろうね······」

『人間なんか、皆”変”だろ、主?』

 突如リルの声が聞こえた気がして、ヒューベルは部屋は咄嗟に顔を上げる。

『主、大丈夫。シェリルは触られていないよ。ボクが死守したんだ。だから、落ち着いて······ここで、二人の気持ちが離れてしまったら駄目だ······』

「······リル、念話を使っているのか?どこから······?」

『シェリルの中さ。ボクも知らなかったんだけど、あのイヤな女、シェリルにもう一つ設定があるって言ったんだよ』
「今、あの女の話はしたくないが······重要な繋がりがあるのかい?」

『うん。あの女、シェリルは”神の器”を持ってるって』

「それは······名器、という事を言いたいのかい?」
『うーん、いうなれば神に捧げられる名器という事なんじゃない?』

「待て······その神とは、国王の事を指しているのか?それとも大精霊か?」

 そう、この国の信仰対象は神ではなく、大精霊。
 精霊が気まぐれで魔法を行使し人を助けると信じられているが、肉眼で見る事がない為、その頂点となる大精霊が実態のない”神”という事になって拝められているのだ。

 そして、この国の国王も唯一魔法が使える存在である事から、大精霊の祝福を受けた存在で”神”と例えられる事がある。

『主······大精霊様は女性なんだ。シェリルを主から奪ったりしないって······』
「······それで?」

『って事は、大精霊すら体内に宿せる器となり得るんじゃないかと思ったんだよ』
「なるほど?だから高位精霊の君が宿れた······という事か」

『そう、でもやっぱり体力を取ってしまったみたい······僕も力を使い過ぎてしまって······だから、もう一旦お別れだ······シェリルはもう目覚めるよ······』

 ヒューベルはか弱くなっていくリルの声を聞いて、立ち上がった。

「リル、どうやったらお前はまた具現化できる?」
『それは······シェリルがこの力を操れるようになれば······きっと······』

 変態覗き見野郎なんて罵っていたが、ヒューベルにとってリルは心の底から繋がりを持った相棒。それは、魔法の力を得られるからという理由ではなく、ただ一人の友人として、だ。
 だから、彼にはまだ言いたい事も食べさせてやりたい物も沢山あった。

「リル、シェリルを助けてくれて、ありがとう。······大精霊の祝福があらん事を」
『主······ボクの大切な友人達へ······精霊は君たちに祝福を······』

 リルの声がしなくなって、ヒューベルはシェリルを抱きしめた。

「二人が無事で本当に良かった。······でもね、シェリル、僕は怒っているんだよ」

 ガシャリと鈍い金属音をさせ、ヒューベルはシェリルの両腕を手錠で繋ぐ。

「もう、どこにも行かせないし、危ない目にも合わせないよ。君を失う事なんて、僕にはできないんだ······」

 ヒューベルはシェリルの額にキスを落とし、そのまま浴室に向かうと自分の身体を清める。真っ白な美しいローブに身を包んだ彼はシェリルの横たわる寝台の隣に腰掛けて髪を撫でながら一房掬い取り耳に掛けた。

「シェリル、起きて。少し前倒しになってしまったけど······僕達の初夜を始めよう」

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