上 下
48 / 63

47. 私はどうしたら・・・※

しおりを挟む


「っ、ひぁっ」

 妖艶な雰囲気の彼に見つめられながら、臀部を撫でられ、シェリルはびくりと身体を震わせた。

「シェリルは勿論そのままでも美しいけど、身体は清めないとね」

 そう言いながら微笑んだヒューベルの指がするりと尻の間を撫で、シェリルは片方の胸を優しく触っている彼の手を掴んだ。

「ッ、やぁ······っ」 
「可愛い声がでているよ、シェリル?どうしたの?」

 ヒューベルの大きな手が今度は前から当てられ恥部を撫で、シェリルの身体が一瞬硬直する。

「待っ······て、なにか······変でっ······」

 すぐに割れ目に沿って指が入り込み、ぬるりと彼の指が滑る感覚の後、シェリルはある一部に触れられた時に感じるそのピリピリとした刺激に息を止めた。

「ッ、は······っだめぇ、」

 分からないけれど、痛いような気持ちいような感覚。
 もっと触れて欲しいような······でも、怖いような。

「大丈夫だよ、シェリル。でも······そうか。もう僕を受け入れる準備が整っているんだね」
「うけいれる······?ヒューさま······を?」

 逆上せたような表情で『どういう意味ですか?』というシェリルの疑問にヒューベルが答える事はなかった。
 彼は笑顔を張り付けたまま、淡々とシェリルの身体を隅々まで湯で流し、身体を温めるとにっこりと微笑む。

「うん、今日も綺麗になったね、シェリル」
「ヒューさま······っ」
「ん?風邪を引いては大変だから、もう出ようか。僕の魔法で乾かしてあげる」
「は······い······」

 ヒューベルに渡された新たなローブに身を包み、彼の魔法で髪を乾かされながら。
 シェリルは後悔の念と共にぎゅっと瞳を閉じた。

 本当に、はしたない······。
 私、今なんて思った?なんて言おうとしたの?
 一瞬でも、もっと触って欲しい······。ここで口づけをして欲しい。そう強張りたくなった······。

 そう考えただけで、お腹の奥がムズムズとするような感じがして、シェリルはお腹を手でおさえた。
 それを見ていたヒューベルはシェリルの手を握りしめると顔を覗き込む。

「どうしたの、シェリル?体調が悪いかい?君の食べる物には全て毒見を入れているから、変な物は入っていないとは思うんだけど」
「いえ······大丈夫です」

 そっか、と笑ったヒューベルは自分の衣服も魔法で乾かすと、シェリルを横抱きに抱き上げた。
 そして寝台へ下ろすと自分も隣に腰掛ける。

「じゃあシェリル、もう寝る時間だね。おやすみ、僕の姫。もし、何かがあったらすぐに言うんだよ?僕は隣の部屋に居るし、明日もまた来るから、心配いらないよ」

 ヒューベルが徐に立ち上がって、シェリルは咄嗟に彼の上着の裾を掴んだ。

「······?」
「っ······ごめ、んなさい」
「どうしたの、シェリル?」

「い、え······」

 行ってしまう前に、キスして欲しい、なんて言えない······。
 だって本当はこんな事考えてはいけない筈だから。
 なのに、ずっと此処でヒュー様と居ると、このまま彼と恋をしても良いのではないかという気がしてしまう······。

 そんな事を考えていた瞬間、身体が寝台に沈み、両手がヒューに押さえ付けられる。目を開ければ、彼の美しい顔が目の前にあってシェリルは息をのんだ。

「っあ······あ、の······?」
「また、何か考えなくて良い事を考えているね?余計な事は考えなくていいんだよ。シェリルは自分の欲しいもの、やりたい事に忠実になるべきだ。欲望に忠実になるのが”悪役令嬢”への第一歩だと思うけど?
 シェリル、貴女は何が欲しい······?」

 シェリルはその言葉に覚悟を決める。

 だって、どうせ今自分は囚われの身で、もうこの外にすら出る事も敵わないのだ。
 それなら、彼の言う通り”悪役令嬢”としての役ができるように、自分の欲望を伝えられるようにした方が良いのかもしれない。

 そう思って、シェリルは両腕をまっすぐヒューベルの元に伸ばす。
 美しい彼の髪にそっと触れ、シェリルは少し首を傾けてその紫の瞳を覗き込んだ。

「ヒュー様······口づけを······してくださぁっ······、んうぅ」

 ”して欲しい”という言葉を最後まで待たず、ヒューベルに強引に唇を塞がれて、シェリルはドクドクと煩く鳴る心臓を必死で制御しようと必死になる。
 しかし、少し開いた唇の隙間から彼の舌が侵入してきて、シェリルはその意思を手放した。

「っふぅ、んんぅ」

 彼の熱い舌が歯列をこじ開け、自分の舌を絡めて、じゅるじゅると音を立ててまた戻り。

「っ、ひゅー······さまぁ······、もっ「シェリル······」

 あまりに情熱的なキスに頭がくらくらして、思考が蕩けそうになった所でヒューベルは口を離した。

「ごめん、シェリル、やりすぎてしまったね······。今日は良く寝るといい。また明日来るよ」
「え······?っあ、······」

 ポンポンとシェリルの頭を撫でたヒューベルは、腕で顔の下半分を隠しながらそそくさと部屋を出て行く。
 シェリルは身体を起こすこともできずに一人、彼の出て行った部屋で天蓋を見つめた。
 
 「ヒューさま······なんで······」

 身体が火照って、どうにかなりそうなのに、彼が出て行ってしまった······。
 でも、この熱を逃す方法なんて分からなくて。

 「私はどうしたら······良いのっ······」

 シェリルは大きな枕をきつく抱きしめると脚の間に挟んで押し付ける。

「ッ、ん、あぁ······っ」

 気持ちいい······何故、こんなに気持ちいいの······。

「ヒューベルさま······っ、」

 シェリルは抑えきれない思いを忘れ去るように、瞳をきつく閉じた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

ハズレ令嬢の私を腹黒貴公子が毎夜求めて離さない

扇 レンナ
恋愛
旧題:買われた娘は毎晩飛ぶほど愛されています!? セレニアは由緒あるライアンズ侯爵家の次女。 姉アビゲイルは才色兼備と称され、周囲からの期待を一身に受けてきたものの、セレニアは実の両親からも放置気味。将来に期待されることなどなかった。 だが、そんな日々が変わったのは父親が投資詐欺に引っ掛かり多額の借金を作ってきたことがきっかけだった。 ――このままでは、アビゲイルの将来が危うい。 そう思った父はセレニアに「成金男爵家に嫁いで来い」と命じた。曰く、相手の男爵家は爵位が上の貴族とのつながりを求めていると。コネをつなぐ代わりに借金を肩代わりしてもらうと。 その結果、セレニアは新進気鋭の男爵家メイウェザー家の若き当主ジュードと結婚することになる。 ジュードは一代で巨大な富を築き爵位を買った男性。セレニアは彼を仕事人間だとイメージしたものの、実際のジュードはほんわかとした真逆のタイプ。しかし、彼が求めているのは所詮コネ。 そう決めつけ、セレニアはジュードとかかわる際は一線を引こうとしていたのだが、彼はセレニアを強く求め毎日のように抱いてくる。 しかも、彼との行為はいつも一度では済まず、セレニアは毎晩のように意識が飛ぶほど愛されてしまって――……!? おっとりとした絶倫実業家と見放されてきた令嬢の新婚ラブ! ◇hotランキング 3位ありがとうございます! ―― ◇掲載先→アルファポリス(先行公開)、ムーンライトノベルズ

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

異世界召喚されたけどヤバい国だったので逃げ出したら、イケメン騎士様に溺愛されました

平山和人
恋愛
平凡なOLの清水恭子は異世界に集団召喚されたが、見るからに怪しい匂いがプンプンしていた。 騎士団長のカイトの出引きで国を脱出することになったが、追っ手に追われる逃亡生活が始まった。 そうした生活を続けていくうちに二人は相思相愛の関係となり、やがて結婚を誓い合うのであった。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

シスコン弟に手込めにされるのが嫌で、獣人国の王子と婚約したのですが彼にとろあまに甘やかされて、幸せすぎです。

にのまえ
恋愛
ある日、弟の独り言を聞いてしまった。 私への歪んだ愛。 怖い、怖いわ。逃げなくては! すみません、のんびり手直しを始めました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...