20 / 56
18. 欲情と嫉妬の渦、四阿※
しおりを挟む翌日、ヴィクトールとリリアーナは本殿へ向かうため、竜王宮の廊下を歩いていた。
「リリィ、貴女は庭園かどこかで待って居られるか?ロキを供に置いておく。何かあれば守ってくれるだろう」
「はい······」
今日は、新竜王となったロンファからヴィクトールに今後の国との繋がりに関する会合を打診されていたのだ。
リリアーナとは離れたくはないが、国同士の汚い交渉の場に彼女を連れて行くわけにはいかない。とヴィクトールは彼女を見て、その少しの変化に首を傾げた。
「······どうした?」
「······え、いえ?なんでもっ」
リリアーナはヴィクトールに見つめられ、びくりと肩を震わせる。
『昨日ずっとヴィクトールに抱かれ続けており、身体が朝から疼いて』などとは言える筈もない。
魔力の放出も大分制御できるようになり、あまりに感情が昂っている時を除き、治癒魔法の強弱も上手くなってきた。
要するに、リリアーナも自身に治癒魔法を同時に施せるようになったため、全く疲れていないのだ。
「リリィ、もしや、発情してるのか?」
「っ!その言い方は、おやめくださいとっ!」
リリアーナは白いふさふさの尻尾をぶんぶんと振った。竜王宮には純粋な人族は皇国の者以外いない。
あまり目立つのも良くないと、ヴィクトールは獣化の香で常にリリアーナを白狼にしていた。もとい、彼のお気に入りの姿なのだろうが······。
「なるほど······、だが」
ヴィクトールは辺りを見渡した。
ロンファに聞く限り、ドラファルトでは雄の言う事は絶対であり、抱きたいときにいつでもどこでも抱けると言っていた。
そう心の中で考えたヴィクトールは、彼女の腕を掴むとロキを振り返る。
「ロキ、ここで見張りを頼む。誰が来ても絶対に通すな」
「······はっ、おこころのままに······」
ロキにはなんとなく兄ヴィクトールの考えている事が分かった。
渋々了承し、ロキは目の前、池の真ん中にまで延びている開放的な外廊下を見つめる。そしてヴィクトールは廊下の先、池の真ん中に佇む四阿へと彼女を連れて行った。
「ヴィ、ヴィクトールさま?!ロンファ様との会合に、遅れてしまいますよ」
「ああ、あんなのは待たせておけば良い」
新竜王を ”あんなの” と言い放って、ヴィクトールは彼女を前に抱きかかえて腰を下ろした。
「それで、そんなに発情して、欲求不満なのか?」
「ッ!そういうわけではっ······」
“ない”、と言おうとして、ヴィクトールの手が急に蜜口に触れ、彼女は腰を浮かす。
「ひゃんっ!!」
そう、すでに蜜が滴っている、だから蜜口なのだ。
「ほう?こんなに、蜜があふれているのに?」
「いっふぁ、んんんっうむぅ」
リリアーナの顔が羞恥に赤く染まり、何かを言いかける前にヴィクトールはその口を唇で塞いだ。
ねっとりと濃厚な口づけに、頭が酸欠になりぼうっとする。同時にくちゅくちゅと蜜壺に指を抜き挿しされてリリアーナは脱力した。
もう、挿れて欲しいなんて······。
「どうした?もう欲しいのか?貪欲だ、なあ?」
「ヴィクトールさま、いじわる······ですね」
リリアーナは彼の着物の上から手を這わせると、そっと熱塊を握りしめた。あまりに唐突なその行為に、ヴィクトールは目を見開く。
「ヴィクトール様の、熱いですね······。硬くて、熱い」
彼女は、着物の合わせの中に手を滑り込ませると、彼の既にそそり勃った男根を優しく取り出した。
ヴィクトールの上に跨ったままのリリアーナは膝をついて腰を浮かし、その先端を自分の蜜口に触れさせると愛液を塗りつけるかのように煽情的に擦り付ける。
「······っ、」
彼女の濡れそぼった蜜壺に入る事はないそのじれったい行為と光景に、ヴィクトールは息を呑んだ。
そんな彼を見つめ、リリアーナは熱塊を手で握ると、見せつけるように上下に扱き始める。
「っ、なにを······、」
彼女の愛液に濡れた自分のモノがその快感を拾いながら今か今かと挿入の時を待っている。
それは狂暴なその見た目からは考えられない程、美しい露を先端から出していた。
「ヴィクトール様、口でお慰めしても良いですか······?」
その質問にヴィクトールの思考が停止し、言葉を絞り出そうとした瞬間、宮の方でバタバタと騒がしい音が聞こえた。
咄嗟にそちらに目をやれば、威張り散らしながら肩で風を切って此方に向かってくる王弟バロンがいて、ヴィクトールは溜息をつく。
「はあ、こんな時に······面倒なのがきたな」
バロンと側付きの金髪の竜人、それを追うようにロキが四阿にやってくると、その二人の光景を見て少し頬を染め、俯いた。
「、ッ!!番の匂いがしてきてみれば、竜王宮の四阿で交わいなどとっ!」
「だが、私の妻が発情していた。それを慰めるのは夫である私の義務だ。それにお前の番ではない」
ヴィクトールは自分の男根を握るリリアーナの手を導くようにして蜜口へあてると、一気にそれを押し込んだ。
「っふあぁ、あふぅッ!」
「ああ、声を抑える貴女も可愛いな。それに周りに見られていると興奮するのだろう?」
それを見ていたバロンが顔を歪める。
彼にとっては、リリアーナは彼の番。皇国の皇帝に娶られた事も屈辱的だが、目の前で彼女を犯されるなど到底耐えられる事ではなかった。
「······ヴォル、いまならいけるか?」
バロンは隣に立つヴォルに小声で話しかける。
「いえ、主よ。皇帝は危険です。それに後ろには殺したはずの犬もいる。私が皇帝に手を出した瞬間に、あの犬が貴方を殺すでしょう、」
淡々とした彼の分析にバロンは悔しさから両手を強く握りしめた。
爪が皮膚に食い込み、彼の手から血が滴り落ちる。
「力があれば良いのに······、僕が弱いから······ッ!」
「ッあぁァん!だめだめぇッ、ヴィクトールさまぁ」
───煩い、うるさい、ウルサイ!
ぼくの番なのに何故。
なぜ、そんな男のなまえをよぶんだ。
なぜ······他の男のものになった!
ボクの名はバロンだ!その美しい唇から呼ぶ名はバロンであるべきなのに、
ボクの、ボクのなまえを······!
我の名を······つがいよ、我を愛せよ。
「ッうわあぁぁァアアアア!!」
バロンは頭の中の混乱に耐えきれずに叫び声を上げて走り出した。それを隣にいたヴォルが慌てて追いかけていく。
ロキはすれ違いざまに鋭い目つきを向けられ、ぞくりと身体が粟立つのを感じた。
その一瞬でそこまで感じる程の殺気を放たれたのだ。
「ヴォル、とかいう名前だったよな」
なんで死んでいないのか未だ解せないと言った表情だったな、と思って顔を歪める。
そして目の前、走り去った竜人達を全く気にしていない二人をみた。四阿の椅子で向かい合わせに抱き合って、見つめ合っている二人だ。
惚けるような顔で快楽に喘ぎヴィクトールを見つめるリリアーナと、愛しの妻を喜悦の表情で見上げるヴィクトール。
二人は相思相愛で、獣人でいえばきっとこれが”つがい”だ。そして兄のヴィクトールは彼女を独占し絶対に離さないだろう。
リリアーナに懸想する男は何人も知っているが、その願いが叶う事はあるのだろうか?
そう思って、ロキは目を閉じた。
ないだろうな。ずっと生き殺しのように傍で彼女を見続けるだけに決まっている。こうやって見せつけられて、手に入れられないのは分かっていても、想ってしまうんだから愚かなものだ。
そして自分もそんな愚かな男の一人、でしかないのだろう、と。
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】異世界召喚 (聖女)じゃない方でしたがなぜか溺愛されてます
七夜かなた
恋愛
仕事中に突然異世界に転移された、向先唯奈 29歳
どうやら聖女召喚に巻き込まれたらしい。
一緒に召喚されたのはお金持ち女子校の美少女、財前麗。当然誰もが彼女を聖女と認定する。
聖女じゃない方だと認定されたが、国として責任は取ると言われ、取り敢えず王族の家に居候して面倒見てもらうことになった。
居候先はアドルファス・レインズフォードの邸宅。
左顔面に大きな傷跡を持ち、片脚を少し引きずっている。
かつて優秀な騎士だった彼は魔獣討伐の折にその傷を負ったということだった。
今は現役を退き王立学園の教授を勤めているという。
彼の元で帰れる日が来ることを願い日々を過ごすことになった。
怪我のせいで今は女性から嫌厭されているが、元は女性との付き合いも派手な伊達男だったらしいアドルファスから恋人にならないかと迫られて
ムーライトノベルでも先行掲載しています。
前半はあまりイチャイチャはありません。
イラストは青ちょびれさんに依頼しました
118話完結です。
ムーライトノベル、ベリーズカフェでも掲載しています。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる