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16. ドラファルトでの、閨②※

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 豹獣人の女官が退出し、ヴィクトールは自分の膝をポンポンと叩く。リリアーナは『ここに座れ』という意味のそれに、黙って従い、彼の膝に腰を下ろした。


「ああ、やはりドラファルトの着物は良いな。リリィによく似合っているし、誓約紋が良く見えて本当に良い気分だ」
「もう、ヴィクトールさまったら」
「お前は俺のものだしな。誰にも渡すことはできない」
「私はどこにも行きません。それに、永遠に一緒と、婚儀で誓ったではないですか」


 二人で見つめあい、軽く唇が触れるだけの口づけを交わす。
 早く、深く求めあうような口づけが欲しい、とヴィクトールによく慣らされたリリアーナの身体が欲に忠実に反応してきた時。ふと、彼は唇を離した。


「そうだ。そういえば、ドラファルトで流行っているらしい “これら” を用意させたんだが」

 ちら、と視線が動き、ヴィクトールの目線を辿れば、机に等間隔に並んだ玩具が目に入り、リリアーナは顔を赤らめる。

「え、あの······、」
「ん?まだ張形は挿れてなかったろう?」
「そ、それはそうですがっ······」

 不満がありそうなリリアーナの表情をみて、ヴィクトールはふっと笑みを零す。

「まあ、それは後で考えるとしよう。だが、まずは」

 ヴィクトールはリリアーナを膝から下ろし、立ち上がると寝台へ向かう。そして、そこに腰かけた。
 一人残されたリリアーナは、手招きをされて、彼の後を追う。
 
 リリアーナがヴィクトールの目の前までやってくると、彼は身の毛もよだつような妖艶な笑みを向けて、彼女の目の前に手を翳した。

「······っ?!」
「俺の白狼メスは、言う事が聞けるのだろう?」

 白狼と言われ、リリアーナは顔を顰める。そして頭に手を伸ばし、そのモフモフとした耳に驚愕した。

「っえ?!いつから······?な、なんでっ······」


 リリアーナは咄嗟に部屋の周りを見渡して、玄関の入口に置かれた独特な絵柄の入った陶器を視界に捉えた。そこから微かに白い煙が上がっており、ハッとする。


「······香、ですか······?」
「ああ、正解だ。それより。言う事が聞けるのか?それとも、躾が必要か?」
「っ······ヴィクトールさま、意地悪です······」

「王弟バロンに言われて、もう少しで膝をつく所だったのではないか。儀式とはいえ、俺の許可なく他の男に身体を許すなど、俺は認めた覚えはないのだが?」
「······っ、それは」

 リリアーナは覚悟を決めてヴィクトールの前に両膝をつくと、胸の前に両手を重ねた。

「ヴィクトール陛下の、お心のままに」

 そして、重ね合わさっている手前の裾を開くと、目の前に腰掛けているヴィクトールを見上げる。

 彼は満悦げに微笑んでその手を彼女の秘部へと伸ばした。その笑みがあまりにも艶やかで、リリアーナの身体は不覚にも疼く。

 早くヴィクトールに触って欲しい。それが、どんなに獣人の女性にとって屈辱的な儀式だとしても、ヴィクトールにされるのであれば······
 スッとヴィクトールの手が秘所に伸びて軽く触れ、リリアーナはびくりと身体を震わせる。

 だが、これから訪れる快感を待ち望むように腰が揺れるのを見て、ヴィクトールは徐ろにその手を引いた。

「ああ、リリィ、言い忘れていた」
「······え?」


 全く予期せぬタイミングで、ヴィクトールの手が離され、リリアーナは驚きに目を見開く。

「格上の雄が触る前は、濡れている事が前提であると、しきたりで決まっている様だ」
「なん······て?」

 そしてヴィクトールは口角をあげ、不敵な笑みを浮かべ彼女の前に粘液の入った瓶を置いた。

「っ、これは······!?」

 リリアーナの脳裏に着物屋の出来事が思いだされ、鼓動が速くなる。そんな彼女に気付いたヴィクトールはにっこりと微笑み、言葉を続けた。

「ああ、心配ない。これは、あの時のとは違うから大丈夫だ。温度に弱く、体温が上がればすぐに液化するらしい。ドラファルトでは本当に潤滑剤として使用されているらしいからな」

 そしてヴィクトールはそれを開けると、リリアーナの手に乗せる。
 ヴィクトールの言うところの、何が “大丈夫” なのかは全く分からないが、皇帝の言う事は絶対だ。リリアーナは渋々、それを自分の秘所に宛がった。

 同時にその粘液がにゅるにゅると動きだす。
 自身の核とも言える大切な部分を蹂躙されるようなその感覚に全身が毛羽立ち、そしてその快感に吐息が零れた。

「っふぁ、あ······」
「ほう?反応は良さそうだな?これで催淫効果がないとは凄い。我が国にも仕入れようと思うのだが······どうだ? くくっ、皇后リリアーナ、皇国の国母として役に立っているぞ?」


 揶揄うようなその言い回しに、『こんな事で国母としての役割を果たしていると言われても全然嬉しくないわよ!』と、リリアーナは内心で不平不満を零す。
 だが、それを言葉に変換する余裕などないまま、リリアーナは快楽に呑み込まれる。不平不満を言う事の叶わなかった口からは、代わりに「んあっ······あっ」と、甘い喘ぎ声だけが零れ落ちた。
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