【第一章/王国離縁編】王太子に離縁されました?上等です。最強の皇帝陛下の【魔眼】と共に、世界攻略を致しますので!【R18・完結】

猫まんじゅう

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第一章 王国、離縁篇

14.皇国執務室は、息が詰まる

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「以上で全てになります!」

 ルーカスはレベロン王国についての諜報活動で得られた報告を全て話し切った。副団長としての初めての単独任務そしてヴィクトール陛下への直接の結果報告である。
 要点も纏め、しっかりと伝わったと思う。思うのだけれど、想定外の状況に脳が警笛を鳴らしている。


 目の前、執務机に座るヴィクトールから殺気が止まらないのだ。誰かれ構わず縋りついて助けを求めてしまいたいほどには困っていた。
 あまりの圧に息をして立っているのもやっとであり、少し気を抜いたらそのまま失神してしまいそうだ。


 ────この殺気はいつからだっただろう?

 あれは王太子妃リリアーナが記憶を失った後の話をした後······。

 その瞬間、殺気を放っていた張本人ヴィクトールが静かに口を開いた。 


「シド」


 愛称を呼ばれた宰相セドリックは待っていました! とばかりに顔を輝かせる。


「はい、ヴィクトール様。ご許可頂ければ直ぐに舞踏会出席のための準備と日程を調整致します。ヴィクトール様がご出席なさる事、一応レベロン王国には知らせを出させて頂きますね」

「あぁ、だが間違っても魔法で飛ばすなよ。魔力の無駄遣いだ」

「では、伝書鳩で飛ばすことに致しましょう。少なくとも舞踏会の四日前頃にはあちらに着くでしょう」



 舞踏会の四日前······。
 レベロン王国にしてみればこの手紙を受け取ってから約二日でルドアニア皇国皇帝陛下一行が来国してくるという事態になるのだ。


『それは流石に遅くないでしょうか?レベロン王国の皆様に、迷惑がかかりませんでしょうか?』
 などとは、国のツートップを前にしてルーカス如きが言える筈もない。

 そして、そんなルーカスの心配も虚しく目の前では有能なセドリックが早速手紙の準備に取り掛かっている。

「で、」

 ヴィクトールの冷たい視線が向けられ、ルーカスは直ぐに背筋を正すと自分の今までの思考をすぐさま消し去った。

「あの王太子はそうか、そうだな」

 ヴィクトールの綺麗な唇が弧を描く。

 ヴィクトールが笑っている。ルーカスは目を疑う。しかも普通の笑みではない、悪魔のような不敵な笑みで笑っているのだ······。
 その瞬間、全身の穴という穴から汗が吹き出す。
 殺気とは違う何か、闇のようなものが全身をゆっくりと這ってくるようなゾワゾワした感覚。

 こんなの、何度もやられたら精神が殺られるやつだ。そう思った時、目の前でセドリックがヴィクトールに微笑んだ。


「陛下、良いではないですか?あの無能王太子のおかげで妖精姫が手に入るかもしれないのですよ。それに、」

 少し間があいて、セドリックは歌でも歌うかのように軽やかに言葉を紡ぐ。

「姫が手に入ってから、滅ぼしてしまわれれば」


「ひぃっ·······っ」

 少し漏れてしまった心の悲鳴を、少しでも戻そうとルーカスは口を手で覆った。

 人はヴィクトールを『悪魔の落とし子』と呼ぶが、セドリックほど『悪魔』のような思考の持ち主はいないだろう、とルーカスは震えながら思う。
 むしろ彼の美しい外見も加えるなら『堕天使』というところだろうか······。


「ふっ、まあそれもそうか」


 直後、ヴィクトールの殺気が和らぎルーカスはここぞとばかりに深呼吸をして空気を身体にとりいれた。


「はい。早々にヴィクトール様に同行する王国行きメンバーの編成を致しましょう」


 セドリックの手元を見れば、既に王国への公式な手紙作りを終えており、出来上がったそれにヴィクトールが国印を押している。その後もテキパキとした動きで出来上がった手紙を皇国の伝書鳩にくくりつけて窓から飛ばした。

 ここまでざっと見ても十分もかかっていないだろう。仕事が早い、とは噂には聞いてはいたが、初めてみるヴィクトールとセドリックの連携にルーカスは開いた口が塞がらなかった。


 本当に、この人達には抜けがなさすぎる。言うならば、化け物だ。自分も副団長という地位に就いたからには、有能な彼らと顔を合わせる機会は増えるだろう。 もっと成長しなくてはいけないし、一先ずこの殺気に慣れることは必須だろうな·····。

 そっと目を伏せ、思念を巡らせていたルーカスは不意にセドリックの声で現実に引き戻された。


「さて、そろそろ到着してもいいのですがね」


 ちら、と扉を見たセドリックにつられ、ルーカスも反射的に執務室の扉に目を向ける。

 そして、新たに入室してきた二人を見て身体を硬直させた。
 国の重要人物がこの執務室に四人も集まっているという現実に、ルーカスは目眩を憶える。
 この状況は、副団長になったばかりの彼にはとても御せるものではなかったのである。

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初投稿です。初めましての皆様への注意書きです。1.想定以上に話のスケールが大きいです。こちら第一章『王国、離縁篇』50話位を予想しています。2.メインキャラのR18は未だありません。エロメインは第二章『皇国、慣らし五夜篇』お待ち下さい。3.最後に、変態が多めとなっています。たまにコミカルですが8割シリアスで重めです。では、ご準備が出来ました方から。七つの国からなる不本意な世界へいってらっしゃいませ!優先投稿はなろうです。 https://ncode.syosetu.com/n2302hx/2/
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