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14 初夜を、もう一度、※

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「リリアーナ、」



「ヴィクトール様、お疲れ様でございます」

「っ!··········御前、しつれい、いたします」


ヴィクトールの声が聞こえ、リリアーナは直ぐに声のした方を振り返りお辞儀をする。
セシルは突然背後から現れた皇帝にびくりと身体を震わせた。そんな彼女の肩をリリアーナが支える。


「セシル様、大丈夫ですよ。」


そう言って、ヴィクトールの方を見たリリアーナの顔が一瞬強張った。
彼の隣にいるセドリックを見つけたためだ。


「リリアーナ様、御前失礼致します。先日の無礼お許し下さい。申し訳ございませんでした。」

「セドリック様、」
「せ·····どりっく、さま、」


「··········セシル、貴女を迎えに来ました。」

「はい······、」


久しぶりにセドリックを視界に捉えて固まったセシルは、地面を見つめたまま頷いた。


「セドリック様、お心は決められたのですね?私から頼みたいことは一つです。セシル様を幸せにしてください。彼女は私の数少ない友人の一人ですので、」

リリアーナの言葉に、セシルは顔をあげる。
そしてセドリックは大きく頷く。

「その頼み、私が責任を持って実行致します。セシルは貴族社会には疎いですので、今後、リリアーナ様からもお力添え頂けますか?」

「勿論で御座います」


そしてリリアーナはセシルの顔を見てにっこりと微笑んだ。その隣にはこの国の皇帝であるヴィクトールが立っている。

温かく美しいリリアーナの魔力が見えてセシルの気持ちは解きほぐされた。凍てつく氷をも溶かす陽だまりのような人。いつも手を差し伸べて、自信をくれる憧れの女性だ。


「セシル様。セドリック様と沢山お話してくださいね。大丈夫です。私にお話してくれるように話せば良いのですよ。また、直ぐに会いましょうね」

「そうだな、セシル嬢。リリアーナと今後も仲良くして貰えるだろうか。これからは儀式で忙しくなるから当分は会えないが、その後は時間を取ろう」

「はい、···········よろしくお願い、します」


セドリックはセシルに近づくと横抱きに抱きかかえ、目の前に立つヴィクトールとリリアーナにお辞儀をしながら転移のネックレスでその場から居なくなった。





─────ぐらり、と視界が揺れ、セシルは目を閉じる。何回体験しても、この感覚には慣れない。

だがそれもほんの一瞬のことで、すぐに足が床につき目を開けた。

紺色と金で統一された、簡素でありながら調和の取れた美しい部屋だ。



「──────せどりっくさま?ここは?」

「私の自室です。セシル、貴女は今日から此処に。貴女の部屋はすぐに隣に用意させますので」

「ちょ、ちょっとまって下さい····。せどりっくさま、」


「セシル、私の妻に、なって頂けませんか?」


「え?」

「手荒に扱った事、申し訳ないと、「ちょっとまって、」」

セシルに遮られ、セドリックは彼女を見つめた。
彼の熱の籠った眼差しに狼狽え、セシルは目を泳がせる。そして俯いて言葉を発した。

「·······せどりっくさま、ごめんなさ─────」


その言葉を最後まで聞かずセドリックは彼女の唇を自分のもので塞ぐ。
直ぐに彼の熱い舌が彼女の唇を抉じ開けて入り、口づけを深いものに変えていく。
頭の芯まで蕩けそうになるその口づけに、流されそうになったセシルは彼の胸板を叩いた。


「、っんんぅっ、、っまっ、、て!」


一通りセシルの口内を堪能したセドリックは唇を話し、セシルの後頭部を両手で包み込みながら彼女の額に自分の額を押し付けた。

「すまない。君に拒絶されても、多分、もう、離せないんだ、」

あまりに儚く散ってしまいそうな声にセシルも両手で彼の顔を包み込んだ。そして彼の顔を覗き込む。
いつもは鋭く強い意思をもった紫の瞳も、いまは弱々しく、初めてみる彼にセシルは驚いた。

「せどりっくさま、ちがうんです。わたしが謝ったのは、発情のりゆう、です。」

「······発情の理由、?」

「はい。わたしがあの日、せどりっくさまを好きだって、そう分かってしまったから······。だから、急に発情期がきてしまって········」

「なるほど。そう、だったのですか」

「せどりっくさまの初夜を、婚姻を、だめにしてしまってごめんなさい」


片手で顔の半分を覆うように俯いたセドリックに、申し訳ない気持ちでいっぱいになったセシルは頭を下げて謝罪する。婚姻が不成立になったのは自分の所為だという負い目がずっと消えなかったのだ。

そんなセシルをセドリックは抱きしめたままの片手で引き寄せた。


「いえ、違うのです。あれは貴女のせいではない。
でもそうか。貴女が私を好きだったなんて······。私もあの日、貴女を愛していると気付かされたので、」


「せどりっくさまが、わたしを、愛している?」


「えぇ。ですからセシル。私の妻となって頂けませんか?自分勝手な事は分かっているつもりですが、どうしてもこの気持ちに嘘はつけませんので」


セドリックは徐ろにポケットから小箱を取り出し、跪いてそれを開ける。
そこには銀色の美しい指輪が輝いていた。指輪は雪の結晶のような模様で出来ており、それが氷魔法を得意とするセドリックの魔力のようでセシルはその美しさに心を奪われた。


「───────っ。私で良ければ······。」


大粒の涙がセシルの目から零れ、セドリックはそれを指で拭う。そして彼女の指にその指輪を嵌めた。





「セシル、初夜を上書きさせて頂けますか?」


彼女の答えを聞く前にセドリックはセシルの唇を再び塞いだ。彼の熱い舌が口内を弄り、セシルは夢中でそれを自分のものと絡める。
何度となく行ってきた彼との口づけだが、こんなに深く溺れるようなものは経験した事がなかった。

くちゅくちゅと二人の唾液が混ざり合う音が響き、彼女は胸の高鳴りを抑えきれず無意識に身体を密着させる。セドリックがそれを見逃すはずもなく、セシルを抱き抱えると、自分の寝台に優しく横たえて上から彼女を見下ろした。


「ああ、リリアーナ様に選んでいただいたのですか?侯爵家でも貴女の為のドレスを何着か頼みましょうね。脱がすのが勿体ないくらいに美しいですが、」


そう言葉を区切ってセドリックはドレスを慣れた手付きで脱がせると彼女の下穿きに手を滑り込ませた。

お互いに愛情を確認しあった後の深い愛情を確認するような口づけでこの後の展開を期待しないほうが難しいだろう。特に、その快感を一度知ってしまったセシルの身体は既に彼を受け入れる準備を整えていた。


「ひあぁぁっ、」

「もうこんなにも溢れている。三日間交尾した介がありましたね。でも日にちが空いてしまっていますから······まだ私の形を憶えていると良いのですが」

割れ目にそって指を這わせたセドリックは、すでに溢れている蜜を掬い取ると、いまはまだ小さく隠れている蕾へと優しく塗るように擦る。


「あぁぁ、ああっ!!」


その求めていた強い刺激に、身体がびくりと跳ねたところで、セドリックは彼女から離れた。
やっと得られた快感から一転、お預けを食らったような気持ちになり、セシルは彼を不満気に見つめる。


「セシル、私は性格上、責め立てる方が性に合っていると思っていたのです。ですが、ヴィクトール様に殴られてから意外とやられるのも悪くない、と思うようになりましてね」


ふっと美しく微笑みながら、セドリックは服を脱いでいく。そして下穿きだけを残して、寝台の上に横になった。枕を何個も重ねて上半身を凭れ掛かるようにしてセシルを見てから口を開く。


「今日は貴女にお願いしたいのですが」


その言葉に緊張したセシルは一瞬顔を強張らせたが、彼の紫の瞳を見つめ、そして小さく頷いた。


「わかりました。ですが、どうすれば·······?」

「そうですね。まずは自分で脱いで、私の所まで来てください」


セシルは言われた通りに自分の下着に手をかけた。
コルセットの代わりに、とリリアーナが選んだ簡易的な補正下着を自分で外すと彼女の大きな胸が零れ落ちる。
そして彼女はその露わになった豊満な胸を気にしながらも下穿きを下ろしていく。正真正銘、裸になった彼女は恥じらいながらも大きな寝台の上を四つん這いになりながら彼の元まで這っていく。

ゆらゆらと揺れる胸と、尻尾があまりにも妖艶でセドリックは唾を飲んだ。


「··········せどりっくさま、」


自分の目の前まで来ると、ぺたりと座りこみ胸を隠しながら自分の名前を呼ぶ彼女にセドリックは堪らず手を広げた。


「よく出来ましたね。僕の子猫セシル、おいで。」
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