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4 宰相セドリックの婚約※

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執務室でジェイドが山積みの釣書を机に置いた。


「まだあるのですか、」



セドリックはそれを見て顔を歪める。


「ヴィクトール陛下がご結婚される事になるとセドリック様が周知させたからでしょうか?周りも合わせて婚儀を取り付けているようですね」

「ヴィクトール様の件は喜ばしい事としても。本当に、面倒ですね」


セドリックは興味がなさそうにその中から一つを適当に開いて眺める。

侯爵家当主でありながら宰相という役職の優良物件である彼には人並以上の縁談が舞い込んでいた。
選り取り見取り。入れ食い状態であろうそれは、普通の男であれば喜ばしい事だがセドリックには一切の興味がなかった。



「私の後継者を産んでくれればそれでいい」



セドリックは性格破綻者である、と自覚している。

ヴィクトールの『魔眼』を見てから、いや、戦場での漏れ出す圧倒的な闇と魔力を見てからだろうか。
彼しか見えなくなったのだ。もしかしたら既にあの『魔眼』に支配されているのかもしれない。
だが、それでも良いと思える程には自分の主君に陶酔していた。


全ての優先順位はヴィクトールにある。
陛下の為になるよう自分は動く、ただそれだけ。


レベロン王国でリリアーナと婚約を結び付けたばかりの主君を思い、何も出来ていない自分に苛立ちが募る。彼のために完璧な成果をあげようと思うのに、何故こうもうまくいかないのか。

訪問先である王国の城下町で偶然陛下が遭遇した密輸組織の件も。国での議題には何度もあがっていたのに、対処が遅れたのは自分の失態なのだから。



「──────魔石、自体は別に良いが。何を言いたいかは、分かるな?」



ヴィクトールの少し怒ったような、低い声が耳の中に残って消えないでいる。

魔石だけは········。いや、正確に言えば、魔石に魔力を入れる”詠唱文言スペル”だけは絶対に他国に漏らすわけにはいかない。

あり得ない、この皇国皇帝の右腕である自分が、こんな失態を醸すなど。あってはならない事なのに。



「私のこの人生の汚点、レーボックとやら王国も纏めて消して差し上げましょう」



セドリックは表情を歪めて執務室の上にあった短剣を思い切り壁に突き刺す。
その刺さった部分をじっと見つめていた彼からゆっくりと怒りと共に魔力が漏れる。剣に氷魔法が纏わりつき、刺さった壁が凍り始めた所で、黙ってみていたジェイドが声を発した。



「セドリックさま、そこから氷魔法で壁を駄目にしてしまうのはおやめくださいませ?」

「・・・ジェイド、」

「はい」

「どこか、貴族位の最下位あたり、二女か三女かあたりの未婚の女性を見繕って貰えますか」

「承知致しました」




実は問題だったのは魔道具の流出だけではなかった。最近ではレベロン王国から数種類の媚薬が皇国の市街地に流入しており、その安全性も未だ確かではない。

そういう中毒性のある薬の類は早いスピードで拡がり、そこからじわじわと蝕んでいくのだ。
最悪、国が亡びるという事も十分にあり得る。

セドリックは焦りと憤りに駆られ、直ぐに市街地から押収した媚薬を持って研究室へと調査依頼を出した。だが、数日経っても得られない成果に腹が立ち、自分で被検体(サンプル)を確保し媚薬を使用して結果を見る日々。



────────そして時は少し前に遡る。
媚薬の調査に関する進捗を聞きに向かったあの日。


研究室にすっかり馴染んでいたセシルを見て自身の苛立ちは彼女に向かった。自分しか居場所がなかった筈の彼女は、今では研究者となり居場所も仲間もいるという事に何故か怒りが沸々と沸く。

そして何の罪もないセシルを執務室に連行し、媚薬の実験という名目で初めて彼女に無粋を働いてしまったのだ。勿論最後まで手出しはしていない。彼女は大切に匿ってきた自分の物だ。


───────だが、とセドリックは思い出す。


セシルを立たせたまま、彼女に白衣を自分で捲り上げさせて下穿きを下ろした時のあの高揚感。


口づけだけで、彼女が濡れていたことは確認して分かっていたことだったが、下穿きを下ろした時に初めて見た彼女の美しい恥部から見えた蜜糸。
誰にも見せたことない、自分しか知らない姿。
もうその瞬間には既に理性が飛んでいたのかもしれない。

脚を開かせて、未だ触れられることすら知らないであろう秘所を両手で触れて開けば、蜜で艶やかに色づいた薄紅色の入り口とその上の蕾が顔を覗かせた。



「っ。しぇ、どりっくさま、こんなこと········」

「セシル、ダメな子だという自覚はあるんですよね?なら研究員として実験には付き合いなさい、」



セドリックは”闇夜の蝶”の瓶を開け、そのねっとりとした液体を少量指に取り、その蕾の上に当てがう。



「─────っ!っひやぁぁあん!!」


くるくると弧を描くようにそれを塗りつければ、彼女は身体を善がらせる。


「あぁああっ、やめっ、てぇぇ、、っ」

「ああ、また蜜が溢れてきた。貴女は感度が良いんですね。それとも媚薬のせいですか?」


そう言って彼女の顔を下から見上げて、息を呑む。
ついこの間まで、少女だった彼女は、もうこんなにも煽情的な顔で···············────────────
───────私を煽るなんて。


セドリックは堪らず蜜の溢れるその泉の入り口に舌を這わせた。その間もその上にある芯を持ち出した蕾を弄る指は止めない。


「────ッひぃ、ん、、ぃやぁぁあァ、っ!」


じゅるじゅると、卑猥な水音が執務室に響き、セシルは声に鳴らない声をあげた。


「大丈夫、そのままイキなさい。」

「ぃ、やぁ、、ッ、へん、になっちゃう、、ッ!」


固く大きく開花しかけたそれをぎゅっと押し潰せば彼女の身体がびくんと大きく跳ねる。
そして脱力した彼女を抱きかかえて、邸へと転移し彼女を宮へと送り届けたのだが。


セドリックは思い出しただけで膨張し始めた己を制し、目先の仕事に関する問題の解決策に思考を切り替える。自分の肉欲ごときのために主にこれ以上迷惑をかけるわけには行かないのだから。



媚薬の検体数サンプルは果たして足りるだろうか。
魔石の管理はもっと厳重にするべきだろうか。




そして何よりも、もうすぐ結婚されるヴィクトールのために自分も早く結婚し跡継ぎを作らなければ。
次期宰相としてヴィクトールの御子を支えられるような跡継ぎを。

だから、セドリックは貴族の末端の女でも良かった。血筋を気にする皇国の貴族達に、建前でも良いから結婚している事を見せて子供さえできれば良いのだ。




こうして数週間後、ヴィクトールが皇国に帰還して少し経った頃にセドリックの婚約者候補となったのが、タリタン子爵の二女、シエナだったのである。

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