チート狩り

京谷 榊

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第八章 ルガの故郷

七十六話 救裁

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 スコルドはジョセフの質問に答える。
「ワタクシは人類の救済を行いたいのです。ですが、彼等の間違った文化のあり方にはちょっとした罰が必要です。そこでワタクシは罪なき者には救済を、罪のある者には制裁を下すためにこのように子供たちを作ったのです」
 ヤディス教会の地下ではスコルドたちノソア教団が人類の救済を行おうと、魔力を凝固させて作り出したミーゴ兵が無数にいた。
「彼等の持つ文明をことごとく消し去り、一から全てをやり直させるのです。これぞまさに救裁」
 ノソア教の幹部の一匹がそう言うともう一匹の幹部は。
「その通り、これを機に愚かな人類に希望と言うものを見せつけ、悪徳国家を叩きのめすのです」
 彼らのセリフを聞いてロスたちはたじろいでいる。
「たしかにあの国には過酷な制度や治安の悪いことがあるかもしれませんが、それでも頑張って毎日を生きている人たちがいるんです」
「そうだ、お前たちが何とかしなくても彼等には自分たちの力でどうにかすることができるはずだ」
 ロスとユウはそう言っている上にヤスケや
エフィ、リアもそうだそうだと言わんばかりの表情をしているが、ルガとジョセフの反応は違っていた。
「いや、お前の言っていることにも一理あるかも知れないな。制裁卿」
 それを聞いたジョセフとルガ以外の六人は驚いてルガに視線を向ける。
「何言ってるんですか、ルガさんアイツらの言うことに騙されちゃ…」
「お前たちのその目は節穴か?」
 ここで幹部の一匹であるドゥジャルダンはそう言った。始めユウたちはそのセリフの意味が理解できなかったが、ドゥジャルダン本人が説明した。
「お前たち本当にあの島にいたのか?」
「え、あ、あぁいたさ」
「ならなんでわからねぇんだよ奴らに味方はいたか?国は彼らを助けたか?それにお前はあの場所で何をされた?」
 ここでジョセフたちは、自分たちを助けてくれた百姓のこと、匙を投げたのかいつまで経っても対策を講じない国のこと、そして貧困で飢えている国民たちのことを。
「アレでも自分達のことは自分達で何とかできそうに見えたか?」
 ドゥジャルダンは何度も聞き返した。
「だとしてもお前たちのやり方は間違っている」
「文明を滅ぼすなんて、そんなの悪いことに決まってんでしょ」
「ルガやお前たちが何と言おうと私は戦う」
 その答えを聞いたスコルドはとうとうその姿をあらわにした。彼は黒いベールのようなものを外し身につけている服を脱ぎ捨てた。すると次の瞬間、ルガが七人も前に出て言った。
「お前ら!下がれ‼︎」
「つまらないですね」
 黒い布の中から現れたのは全身が黄ばんだ色をした手が四本、足が二本生えて口元にストローのようなものがついた虫だった。
 そして空中で剣を生成し、右の前手で掴み、思いっきり振る。
 間一髪のところでルガが、食い止めたが珍しくルガがダメージを負っていた。
「お前、強いな」
 ジョセフたちはルガが他人に対して強いと認めたところを見たのはこれが初めてだった。
「あのルガでさえ強いと認めるなんて、スコルドって何者なんだ」
「流石は制裁卿」
「あんな奴ら、私たちで十分です」
「……いけませんねぇ。相手を見た目や言動だけで判断するのは貴方たちの悪い癖ですよ」
 スコルドはそう言って再びルガに一撃を入れる。ルガはそれを受け止めながらジョセフたちに話す。
「お前ら、この騒動を止めたいのなら今すぐ下に行ってミーゴ兵たちを倒してこい」
 ジョセフたちは承知するとその場から下へ飛び降りるが、後もう少しでミーゴ兵の元へ着こうとしていたが、その途中で強化ガラスが張られていてジョセフたちはその上に着地した。
「なんだ、これは」
 ジョセフがそう言うと後から降りてきたムカデの虫人、ペルはジョセフの疑問に答えた。
「彼らに逃げられたら困るんでね、そのようにして強化ガラスを張っているのだ。お前らにはコイツらよりも先に俺の相手をしてもらおう」
 ペルはそう言って戦闘を開始した。ペルは上半身が人で下半身が虫のかなりの巨体で身長は三から四メートルほど、全長は胴体を含めずに七メートルほどだった。
 するとペルは薙刀のような武器を持ち、ジョセフとユウの二人と対戦した。
 一方で、ロスとリアはドゥジャルダンと対峙していた。ドゥジャルダンはクマムシの虫人で多少、ふくよかな体型の女の子だった。
 そして、残りのタイカ、エフィ、ヤスケ、ルガの四人はスコルドとハマダラの二人と対峙していた。
「お前たち三人はあの女の方をやってくれ、俺はスコルドの相手をする」
「ハマダラ、ワタクシたちは隣の部屋で戦います、勝負が終わるまでは絶対にここで舞っていること、場合によっては死んでしまいますよ」
「かしこまりました」
 そうしてルガはスコルドに連れられて隣の部屋へ誘導される。その後、ヤスケたちはハマダラとの戦闘を始めた。
「いつでもかかってらっしゃい」
 彼女はそう言ってヤスケたち三人を挑発する。
 その一方でルガはスコルドと話をしていた。
「なんだ、この部屋は」
 ルガが入ったその部屋にはさっきの部屋よりは広くはないが、さっきまでの部屋と同じように部屋の中央に大きな穴があり、そこに橋がかかっているように道があった。さらに穴の下には巨大な球体のものがあった。
 スコルドはしばらく間を置いてからルガの問いに答えた。
「あなたは、マラリアという病気をご存知ですか?宇宙を駆け回っているあなたなら知っていてもおかしくはないと思われますが、」
「ああ、ご存じだとも」
「なら話が早い、私がこれを使い何をするかを想像するのは容易いでしょう」
「そうだな、なるべくその想像通りにならないように努力するよ」
 そうしてルガとスコルドは互いに拳をぶつけ合う。二人のパンチがぶつかり合った瞬間、金属音のような音がした。
「お前、すげぇなそんなんどこで習ったんだよ」
 ルガはスコルドに聞いた。
「習ったのではない、全て自分で鍛えたのだ」
 スコルドはそう堪えると再び拳を振るう。

 その頃、ジョセフとユウはペルとの戦いに苦戦していた。
「コイツ、なかなか手強いな」
 ジョセフはそう言っている。彼の右手にはいつも使っている鞭状のナイフが握られている。
「大丈夫か、ユウ」
「心配するな、息が上がっただけだ」
 そう答えるユウは武器は使わず拳だけで戦っていた。その傍らペルは柄の部分が七メートル、刃の部分が二メートルもある巨大な薙刀を持って戦っていた。
 しかし、彼の七メートルもある体にはそんな薙刀がとてもよく似合っていた。
「どうした!元チートの割には覇気がないぞ、こんなんじゃダメだ!弱すぎる‼︎」
 ペルはそう言ってジョセフとユウの二人を挑発する。
 するとジョセフは小声でユウにある提案をする。
「ユウ少し俺の話を聞いてくれ、俺が囮になるからその隙にお前はアイツを攻撃するんだ」
「了解!」
 するとユウはペルを錯乱するように彼の周囲を動き回る。ペルはユウの動きを見ていると、ジョセフに声をかけられる。
「オイ!よそ見してんじゃねーぞ、お前はこっちに集中しろ」
 ジョセフはそう言ってペルにナイフの刃先を向ける。
「面白い、だがそれでは簡単すぎる」
 ペルがそう言った次の瞬間、ユウが後ろから不意打ちをする。二人はこれでペルを倒せると思っていたが、それが通用するのは一般のものだけであり我が身を極限まで鍛えた幹部には効かない。
「コイツ、硬いぞ」
「当たり前だ、そんなものがこの俺に通用すると思うなよ」
「ユウ、こっちへ戻れ作戦を変えるぞ」

 その頃ロスとリアの二人は別室にてドゥジャルダンと戦っている。
「アンタたち本当にそんなんでスコルド様の首を取りに来たの?」
「そんなことありませんよ、ただ単にロンド王国への進軍を阻止しにきただけです」
「そんなことより、ちゃっちゃと終わらせてスコルドとやらの首を取りに行くよ」
「…話が噛み合ってない気がする。リアさんふざけないで真面目にやってください」
「冗談よ」
 そして、ロスとリアは交戦の態勢に入る。それと同時にドゥジャルダンも戦闘態勢に入る。
「あの方の元へは行かせない!ここでお前らを叩き潰す」
 そのセリフを吐いたドゥジャルダンに向かってリアは。
「叩き潰すって言った割には防御に特化してるのね」
 ドゥジャルダンの姿はほとんど芋虫で、戦闘態勢に入るといってもその上からさらに甲冑を着ただけだった。
「これじゃあなんだか、いじめてるみたいね」
「フン!ほざいてろ、お前らの攻撃じゃ私に傷付けるなんて不可能よ」
「それじゃあ遠慮なくやらせてもらうわよ」
 リアはそう言うと口から炎を出し、ドゥジャルダンに浴びせる。
「やりましたか?」
 ロスはそう言ってリアに確認を取る。しかし、煙が晴れるとドゥジャルダンはピンピンとしていた。
「やっぱり効いてないわね」
「それなら次は僕が行きます」
 そう言ったロスは杖をかざしてドゥジャルダンに雷を落とす。だが、ドゥジャルダンはまるで何事もなかったかのようにへいぜんとしている。
「なんで強さだ、普段の五倍の強さで攻撃したのに、全く聞いてない」
「それじゃあ次はこっちの番だ」
 ドゥジャルダンはそう言うと天井を見上げて技を発動する。
ハイ・レディオアクティブ
 するとドゥジャルダンを中心に光と熱が広範囲に広がっていく。
「熱っ!それに眩しい」
「何、今の?」
「ダラダラ戦ってると本当に叩き潰されることになるよ」
 ドゥジャルダンの発言にリアは。
「あんなの屁でもないわよ」
という捨て台詞を吐く。
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