チート狩り

京谷 榊

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第八章 ルガの故郷

七十一話 里帰り

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 魔王軍を撃退し、ジョセフたちと再開したルガは自分の故郷に帰ろうと宇宙船を治そうとしていた。
「結構やられたな…これは修理するより買い直した方が安くつくんじゃない?」
「えーーーーー!嫌だ、新しいの買いたくない」
「しょうがねえな、こんなの俺じゃなきゃ治せねえぞ」
「治してくれるの?やった!」
 ルガとタイカはそうやって会話をしているとジョセフがタイカを呼んだ。
「タイカ、そろそろ行くぞ」
「どこへ?」
「この近くにとてもお世話になった百姓の家があるんだ。そこに挨拶に行くんだよ」
「俺も行こうか?」
 ルガはそう言ってジョセフについて行こうとすると。
「やめてくれ、余計ややこしくなる」
「ごめんね、ルガ…私たちが出かけてる間も修理頼める?」
 タイカは申し訳なさそうな顔で手を合わせてルガに懇願する。
「いいだろう、お前たちが帰ってくる前に修理を終わらせとくぜ」
「ありがとう!」
 タイカは笑顔で感謝する。この後、ルガの行うことに絶望するのはまた少し先のはなしである。

 ルガがいるところから歩いて数分、数日の間お世話になったウックやカット、ラキに条件付きで助けてもらったことに感謝の気持ちとしてプレゼントをしようとしていたが、彼らのようにこの国人々は他の星の人々や覇星機関など一切関わりがないため、外星からこの星の人々に贈り物をすることは禁止されている。
「すみませんが、わたしたちから贈り物やプレゼントなどはありませんが、感謝の言葉を伝えにきました」
 ロスはそう言うと、ラキたち三人はにっこりとした笑顔でジョセフたちに。
「そんな、贈り物だなんていりませんよ」
「あの魔王軍の進行を食い止めるだけでなく、本拠地に乗り込んで撃退してくるだなんて。なんとお礼を言って良いのやら」
「いいえ、お礼をするのはこっちの方ですよ」
 その後も、ジョセフたち全員から個人個人で感謝の言葉を伝えて、ジョセフたちはさっさと帰っていった。
「本当にあれだけでよかったんですかね?」
「大丈夫だろう、あの人たちもこまかくは気にしてなかったし」
「それに、こっちは家に止めてもらったお礼、あっちからすれば魔王軍を撃退してもらった恩があるからウィンウィンだったりして」
 タイカはそう言って、先頭に立った。
「そういえば、あの鳥のお姉さん今頃何してるんだろう」
「あー、あの戦闘が始まってすぐに伸びてた鳥の?」
「アイツなら心配いらねえだろ」

 その頃、鳥人の女はというと故郷の村に帰って魔王軍の侵攻が始まる前の生活に戻った。それだけでなく、彼女は魔王軍を退けたことによる祝いの宴を挙げていた。

 ジョセフたちがルガの元へ帰ってきた。ルガはそれに気づくと、立ち上がってジョセフたちに姿を見せる。
「ただいまー」
「おかえり」
「宇宙船どうなった?」
「もうバッチリよ、ブルーシートかけてあるから取り除いてみてみるといいよ」
 彼はそう言って、タイカがその宇宙船だと思っているものを見ようとするのをルガはじっくり眺めている。
 すると、ロスはブルーシートのかかったものを見て。
「あれ?宇宙船ってあんなに小さかったっけ?」
 そして、タイカがブルーシートを取り、宇宙船だったものを見ると絶句した。
「なんなのよこれはぁ‼︎」
 タイカは青筋をたてて喚く。
「悪いな、修理するにしても部品が足りなくて思うように治せなかったんだ。だから隣の大陸が俺の故郷なんだが、そこまで移動するために車に改造させてもらった」
 タイカが所有している宇宙船は大部分が破損しており、完全に修理するのはほぼ不可能だった。
「大丈夫、ちゃんと人数分が乗れるようにしてあるから」
「どうりでサイズが小さいと思いきや車に改造されてたのか」
「そういえば思ったのですが、元は宇宙船だから飛行機とか空を飛べるような乗り物に改造すればよかったのでは?」
「しかも、よりにもよってオープンカーかよ」
 ヤスケやジョセフがそう言ってルガに聞く。
「しょうがねぇだろ、屋根になる部材が無かったんだよ」
「ってかダラダラと話してないで早く次の目的地に行こうぜ」
 ルガはそう言うと、絶句して立ち尽くしているタイカを車に乗せ、ルガは運転席にジョセフが助手席にのり、その他の六人は後部座席に乗ると早速出発した。
「そういえばルガ」
 エフィが後部座席からルガに話しかける。
「おう、どうした」
「詰め込んでいた荷物や食糧はどうしたのだ」
 すると、その瞬間エフィのセリフを聞いた周りの者たちは絶句し、ルガに尋問する。
「オオイ!」
「お前っ!俺たちの荷物どこにやったァ!」
「安心しろ、俺の異空間に収納できる技でいつでも取り出せる状態になってる。欲しいものがあったらいつでも言ってくれ、俺が取り出してやる」
「じゃあ、本、本が欲しいです」
「ゲーム機出してちょうだい」
「わたしにもゲーム機を」
 ロスとリアとエフィは各々で欲しいものをねだった。
「他の人は?」
 ルガが他の四人に聞くと。
「わたしは外の景色を眺めているからいい」
「わたしも」
「俺は寝てる」
「わたしは車酔いするかもしれないのでこのままでいいです」
 各々はそう言うと、ルガはオーケー、と返事を出してそのまま運転を続けた。そして、ジョセフはさっそく眠りにつき、タイカとユウはぼんやりと外の景色を眺めていた。
 しかし、ヤスケはさっそく顔色が悪くなり、目を閉じて上の方を向いている。するとヤスケを気遣ったルガは。
「ヤスケ、一番後ろの座席が嫌なら前にくるか?」
「いいんですか?」
「ああ、大丈夫だ。ちょっと待ってろ」
 と言いながらルガは指パッチンをすると瞬時にヤスケとジョセフのいる場所が入れ替わった。
「すごい、一瞬で」
 すると次はヤスケに三半規管を強化する術をかける。
「これで大丈夫だろ」
「ありがとうございます、何から何まで」
「なーに、気にすんな。これからお前にかなり嫌な思いさせることになるかもしれんが、それのお詫びだと思ってくれ」
「えっ⁉︎」
 それ以降、会話はなかなか起こらなかった。そして、酔ったわけでもないが、ヤスケの顔色が少し悪くなった。

 それからしばらくすると海が見えてきた。その光景を前にロスは、ルガに質問をぶつける。
「あれ、どうやって渡るんですか?橋があるわけでもなさそうですよ」
「このままでいいんだよ」
「わたしの出番ってわけね」
 リアはそう言いながら立ち上がり、羽を出して広げようとするが、ルガに断られてしまう。
「いや、いいんだこのままで」
 ルガはそう言うと、そのまま海に向かって突っ込む。すると、水面上をタイヤでスイスイと走っている。波の影響を受けて船のように車が揺れるわけでもなく、ただただ海の上を今までと同じようなスピードで走りつづけている。
「すごい、どんな仕組みですかこれ」
「なあに、ちょっと重力装置をいじらせてもらっただけさ」
「あと言い忘れてたが、こっからは本当に退屈になるから適当に過ごして待っててくれ」
 ルガが放ったこの台詞の本当の意味は後になってから知ることになる。
 それから6時間後、未だに陸が見えてこない。だからといって周りを見ても風景が変わることもなく、長い時間ずっと車に乗っていた。しかし、途中からそれに耐えられなくなった八人は席を立って足を外に出して釣りをしたり、ルガに頼んでサーフボードを出してもらい海の上で遊んだりなどをして暇潰しをしていた。
「ねぇ、まだつかないの?」
 リアは不満を言う。
「こんなに時間がかかるならわたしが飛んで運んでいったのに。どうしてわざわざ車なんかにしたのよ」
「それは後で話す、」
「ダメ、今話して」
 リアに急かされるルガはやむを得ず、車で大陸間を移動しているわけを話した。
「いいか、これから行く俺の故郷なんだが、これから行く大陸に住んでいるのは人間じゃないんだ。さっきまで俺たちがいた国、ヴリト王国は昔一度これから行く大陸、ミゲー大陸に武力行使したことがあったんだ。しかし、結果は大陸側が圧勝してヴリト王国の人口は四分の一にまで減った。それでも宗教戦争として異端の者を放って置けないヴリト王国の者たちはそれでも侵攻をやめなかった。それでミゲー大陸の者たちは、戦争を避けるためにこの大陸自体をバリアで覆って外側から見えないようにしたんだ。
 だからリアみたいに空から大陸に入ろうとしても、それ自体が見えないからミゲー大陸に辿り着かないんだ、だから車で入り口のある地点まで行くってわけよ」
 それから大陸まではさらに2時間かかった。
「あともうちょっとだ、見てみろ入口が見えるぞ」
 ルガはそう言いながら周囲に目をやると、全員ともくたくたになり、魂の抜けたような表情をしている。
「やっとつきましたか…。」
「ものすごく疲れた」
「首が痛い…」
「あれ見て、陸地が見える」
 ユウが指を刺す先には海の上にちょこんと小さな陸地とその上に乗っかるように壁のようなものが乗っかっている。
 車が陸地に上がるとルガたちは車から降りて石壁のようなものに近づく。
「やっとついた、」
 タイカやヤスケは車から降りると、体を伸ばしてリラックスする。
 ロスは石壁のようなもののところへ行き、それに触るとあることに気がついた。
「これって、ワープ装置ですか?しかも、この周辺に貼ってあるバリアって…」
 するとルガはロスの言うワープ装置に手を触れると、アーチ状になった石の門の内側にある石壁が砕け、向こう側に吸い込まれていき、ワープが開いた。
「それじゃあ、いくぞ」
 ルガは車に乗ると、ほかの者たちも車に乗り、ワープの中へ向かって進んでいく。

 その向こう側へ着くと、そこは山の中で目の前には広大に広がる草原と、所々にある畑の風景と傾いて赤い色をした夕日が目に映った。
「山の中?なんで、山の中なの?」
「ワープで繋げるとしたら首都とかに繋げる者だと思っていました」
「まさかだけど、ここがこの大陸の国の首都?」
「そんなわけないだろ、ここは俺がお世話になった場所だ、首都とかはまた別にある」
 これが、ルガの言っていた故郷である。
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