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第四章 集団の裏には
三十一話 売り物
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ルガたちはオークション会場に着くなりすぐに受付して席に座った。会場には大勢の客が来ており中には大企業の取締役や著名人から一般人までが多数出席している。
「そんで、そんなオークションに来て一体何界に来たんだよ」
ジョセフはふんぞり返ってまじまじと目の前のステージを眺めている。
「いい質問だ、これを見ろ」
ルガがジョセフに渡したのは今回のオークションに出品される物のリストだった。その中に一つだけチェックのついた項目があり、そこにはグリフォスの箱と書かれていた。
「なんだよこれ」
「オーパーツさ」
「オーパーツ?何それ」
「場違いな工芸品と言う意味です」
ユウの質問にヤスケは簡単に説明する。
「オーパーツと言うのはアウトオブプレイスアーティファクトスの略で」
ユウがさらに難しそうな顔をする。
「簡単に言うと、それが発見された時代や場所とはまったくそぐわない物品のことです」
「要は現代の技術がないと作れないような物が大昔に作られていて、それが発見されたってこと」
なるほどとユウはジョセフの説明に納得する。ルガはヤスケを労ってお疲れとことばをかけた。
「でも、なぜ急にオーパーツなんか」
「コイツのことだ、どうせまた何かすごい物だって言うんだろ?今度は何だ、あの箱から人が出てきてアラビアンナイトみたいに願い事でも叶えてくれるのか?」
ルガはジョセフの名前を呼びしばらく黙ってからジョセフの方を向いて言った。
「ビンゴ」
は?とジョセフや周りの二人は予想外の答えに意味を理解できないでいる。
会場全体が暗くなり、人のざわめきが消えステージがライトアップされる。
「よし、始まった」
その後初めの挨拶や余興など準備が進んでいき、10分後にはオークションが始まった。
ルガは手に持った手札を構えて前のめりに座っている。
オークションが始まり、しばらくしてから困惑から覚めたジョセフはルガに質問責めをする。
「ちょっと待てルガ、オーパーツとは聞いたけど…その…何だ、その中から人が出てきて願いを叶えるってのは冗談なんだよな」
「ああそうとも、呼び出せば箱から出てくるが願いを聞き入れてくれるとは思えないな」
「そういうことじゃなくて、じゃあ何だ⁉︎箱から人が出てくるのは確定事項なのか⁉︎」
「確定事項だ」
するとヤスケは心配そうに注意点をルガに伝える。
「確かにここではオーパーツが売ってあるかもしれませんが、偽物の場合だってあるんです、過去にもそう言う事例がありましたから。それに偽物というのは一般人でも買えるような安値が付いてるんです。だから動画クリエイターやこの類のマニアはこぞってこう言ったものを買いに来るんですよ」
「知ったこっちゃねぇわ、これがいくらかかろうと俺は必ず競り落とす」
「「「嘘だろ⁉︎」」」
そして、とうとうルガの目当ての商品の番がきた。
「続いての品物はこちらです!」
その商品はガラガラとローラーのついた台の真ん中に乗せられて登場した。その箱は一辺が約5センチの立方体でテニスボールほどの大きさだった。さらによく見ると外側は茶色く薄汚い見た目をしており、小さすぎて分からないが面にはビッシリと文字が書かれてある。
ステージ上に立っている司会者が箱を指して進行を続ける。
「こちらの商品はこの星から約二光年ほど離れたところにある惑星アテナイから出土したといわれるオーパーツ、グリフォスの箱」
「こちらの商品、価格はなんと千イータから」(千円)
すると、会場の空気が一変し大笑いが生まれた。
アッハッハッハッハッ…
「ハハハハハハ」
司会者も笑っている。
「これはどういうことだ」
「やはり、パチモンだったてこたでしょうか」
「恥ずかしいからルガ、絶対に札をあげないでくれ」
「いやだ、それじゃ千…」
ルガが札を上げようとした瞬間に他にも二人、手札を挙げた人がいた。
「「千イータ!」」
その二人はお互いのことを察知すると次々と値段を上げて落札しようとする。
「1500イータ!」
「3000イータ」
「5000!」
「1万」
「1万5000!」
「2万」
「5万イータ!」
「……10万」
その声に会場の笑いの渦がざわめきへと変化する。
おい、すごいぞ
なんだありゃ、
そしてついには遊びに乗り出す者もいた。
「20万イータ!」
さっきとは違う男の声だ。
「25万!」
またも違う人の声がする。すると、ユウの近くでこんなコソコソ話が聞こえてくる。
「いやよ!あんなの」
「いいじゃないか、遊ぶだけだよ26万!」
27万!
30!
すると最初に札を挙げた二人のうちの一人がおおきなこえで、
「50万‼︎!」
すると、司会者はその人に入札を決めようと指さそうとすると、
「500万イータ」
と聞こえてきた。会場全体がどよめき、司会者は落札者を決定した。
「そちらのお嬢さん、500万イータで入札ぅ‼︎」
すると会場は瞬く間に大きな拍手に見舞われた。入札した女の子はその場に立って一礼し、支払いをするために会場を後にした。
「ふぅー、よかったルガが札を挙げなくて」
「本当によかったのですか、ルガさん」
「違う、もっとヤバいものを見つけちまった」
ルガはそう言うと背もたれに思いっきり腰をかけて座り直す。
「あれ、どっかで見たことあるような…」
ユウは落札者した女の子の様子を見ている。するとそこへついさっきまで値段を競い合っていたもう片方の女の子が走って落札者の跡を追いかける。
ユウと一緒にその様子を見ていたルガもまた、会場を後にした二人の女の子の後を追いかける。
「チョッ待て、どこ行くんだよ」
「交渉してくる」
「ハァ⁉︎」
その一言だけ伝えるとルガはすぐ様に席を立って行ってしまった。ジョセフとユウとヤスケの三人もルガの後を追いかける。
会場を出た先の広い廊下でルガは二人が話し合っているところに直面する。
「たのむ!この通りだ、あの商品をアタシに譲ってください!」
と茶髪の女の子が深々と頭を下げてお願いをする。
「ごめんなさい、これはどうしても譲れないの」
黒い髪で眼鏡をかけた女の子の方は丁重に断るが、もう一方の女の子もなかなか引かない。
「本当にお願いだ、金なら何倍にしても払う」
「しつこいですね、譲れないものは譲れないのですよ」
ルガはその二人の様子を遠くの方から眺めており、その後ろにユウとジョセフとヤスケが見ている。
「これは交渉なんて無理な話じゃないか?」
「確かに難しいな」
だけど、あの面影どっかで見たことあるような…「思い出した!」
ユウはつい、声を上げてしまい二人の女の子にルガたちのことがバレた。
「誰ですか?」
ユウは堂々と登場するなり二人に近づいて
「やっぱり、アリサちゃんだよね」
この言葉に黒髪の女の子は目をパチクリさせる。
「ユウさん!」
「あの時はありがとうございました、私が今ここにいられるのもユウさんのおかげです」
アリサは丁寧にお辞儀をしてユウと目を合わせる。この二人以外はキョトンとして黙って二人の様子を見ている。するとここでユウが話を切り出す。
「それで…悪いんだけどさ、さっきアリサが買った物を譲ってくれないかな」
ユウは恐る恐る聞いてみる。
「そうですか、それは少々困りましたね」
「実はこれ私のお兄様にプレゼントしなければ行けないのですが」
そんな物をプレゼントするのか?とユウは一瞬思ったが、ルガから聞いた通りのすごい箱だと言うことを思い出した。
「だから、その…」
ユウはそこから言葉が出ずルガたちもユウを見つめて沈黙している。するとそこに静かな足音を立ててアリサの後ろから聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「おやおや、これは珍しい顔ぶれですね」
一同はほぼ同時にアリサの後ろに目を向けるとそこにはアルカディアがいた。
「お前、こんなところで何してやがる。ヤスケ!こいつ逮捕したんじゃなかったのか」
「いいえ、確かにあの後署には連れていきましたが上の者から釈放令が出たんですよ」
ヤスケは立て続けに質問する。
「あなた、こんなところで一体何をしているのですか」
アルカディアは困り顔で質問に答える。
「何をしているも何も、私の妹のお迎えに来ただけですよ」
「アリサはアルカディアの妹だって本当なのか」
ユウは怖い顔をしてアリサに問いかける。
「はい!私の自慢のお兄様ですの」
ユウの質問ににっこりと笑って返す。するとルガは、
「一つだけ二人に質問して良いか?お前たちはその箱を使って何をするつもりだ」
その一言にユウとヤスケとジョセフはハッとする。
「残念ながらお答えできません」
ヤスケは落ち着いた表情で、
「やはり、あなたは私たちの取り調べの時も一切口を割らなかった、いったい何が目的なんですか」
どうせ、答えられないと言い訳すると思いますが。だが、アルカディアは意外な反応を見せた。
「私たちの目的ですか…そうですね、結論から言うと神を作り出すことです。これ以上は何も言えません」
ユウとジョセフは何言ってんだコイツ、と思うが実際に悪魔を呼び出したと言う事実があり、神を作り出すと言うのも意外とやり遂げてしまう可能性もある。
「何言ってんだお前、神を作り出すとかアタシのオヤジみてーなこと言ってる」
そう言ったのは今までアリサに箱を譲ってもらえるように交渉していた女の子だ。
「てか、お前!なに人の交渉の邪魔してんだよぶっ飛ばすぞ!」
女の子はそう言ってユウを指さす。
「そろそろ私たちはお暇します、こんなことに付き合ってられないので」
そう言ってアルカディアは右手を前に出す。
「危ない!」
そう叫んで反応したのはルガだけだった。
「止まれ…」
アルカディアとアリサとルガ以外の四人は
アルカディアの発動した魔法にかかり、体の動きを封じられてしまった。
それではいきましょう、とアルカディアとアリサはそのまま廊下を進んで行って見えなくなってしまった。
「クソ、なんなんだよコレ!」
女の子は叫んでアリサたちを止めようとするが彼らは一向に止まる気配がない。
「おい、ルガなんで追いかけねんだよ」
ジョセフは廊下の脇にあるソファーで座って動けないジョセフたちの様子を眺めている。
「考えてみろ、これからアイツらを追いかけたって止められる保証はない、それにアイツらにはバックがいるんだ、今やったところで治るはずがない。今は泳がせておくべきだ」
四人とも体を動かそうとするが全く体が動かない。
それからしばらくして、魔法が解けて四人は体が動かせる状態となった。それぞれは動くようになった自分の体を見たり、手をグッパしたりなどして体に異常がないかを確認した。
「なんだったんだアイツ」
「神を作り出すとかなんとか言ってましたが」
「そんなことよりルガ!なんで泳がせておく必要があるんだよ」
「だから言ったろ、アイツらにはバックがいるって今のお前らじゃ到底勝ち目なんてねーよ」
「元チートの序列6位がいるのにか?」
この言葉に女の子はピンと反応する。だが話はどんどん進んでいく。
「だってジョセフ、全力出せないんだろ?」
ヤスケとユウはジョセフを目を向ける。女の子も同じようにユウとヤスケの目線をたどってジョセフを見る。
「なんで…何か訳があるのか?」
ジョセフは少し躊躇ってから答えた。
「…………ねえよ」
「でも、やっぱり」
「ストップ!ストォーップ!」
「ねぇ、なんなの?全然話が見えてこないんなけれど。それに人の交渉の邪魔しといてよくそんな呑気でいられるよね」
するとユウは申し訳なさそうな顔をして素直に謝った。
「ごめん、確かに私たちは君が箱を手に入れるための交渉の邪魔をした、本当に済まない」
「あ、謝れば良いってもんじゃないわ」
「ならどうすれば良いのですか?」
ヤスケは女の子に聞いた。
「私をあなたたちの仲間に入れなさい!」
「「「‼︎⁉︎」」」
そーくるか、どおするよ?とりあえずルガさんに聞くしかないですね。ジョセフとヤスケはルガに目線を向ける。
「じゃあ一つ聞こうか、君は闘いの面に関しては何ができる?」
「火属性の魔法や魔術ならほとんど使いこなせるよ!」
女の子は自信満々に言う。
ルガは女の子の姿をよく見ると白とオレンジの民族性のある衣装を着ている。
「それともう一つ、俺たちの目的はついさっき出会った奴の何千、何万、何億倍も強い奴と戦うことだけど」
「大丈夫!アタシも同じような目的だから」
「同じような目的って、具体的には?」
「アタシを馬鹿にした奴らを見返すのさ、そのためにあの箱を使って力を手に入れようとしたんだけどアイツらに取られたってわけさ」
「じゃあ最後にもう一つ、君の名前は?」
「アタシの名前は…タイカだ」
「じゃあよろしく、タイカ」
ルガは右手を出すとそれに応じてタイカも右手を出して握手をした。
「そんで、そんなオークションに来て一体何界に来たんだよ」
ジョセフはふんぞり返ってまじまじと目の前のステージを眺めている。
「いい質問だ、これを見ろ」
ルガがジョセフに渡したのは今回のオークションに出品される物のリストだった。その中に一つだけチェックのついた項目があり、そこにはグリフォスの箱と書かれていた。
「なんだよこれ」
「オーパーツさ」
「オーパーツ?何それ」
「場違いな工芸品と言う意味です」
ユウの質問にヤスケは簡単に説明する。
「オーパーツと言うのはアウトオブプレイスアーティファクトスの略で」
ユウがさらに難しそうな顔をする。
「簡単に言うと、それが発見された時代や場所とはまったくそぐわない物品のことです」
「要は現代の技術がないと作れないような物が大昔に作られていて、それが発見されたってこと」
なるほどとユウはジョセフの説明に納得する。ルガはヤスケを労ってお疲れとことばをかけた。
「でも、なぜ急にオーパーツなんか」
「コイツのことだ、どうせまた何かすごい物だって言うんだろ?今度は何だ、あの箱から人が出てきてアラビアンナイトみたいに願い事でも叶えてくれるのか?」
ルガはジョセフの名前を呼びしばらく黙ってからジョセフの方を向いて言った。
「ビンゴ」
は?とジョセフや周りの二人は予想外の答えに意味を理解できないでいる。
会場全体が暗くなり、人のざわめきが消えステージがライトアップされる。
「よし、始まった」
その後初めの挨拶や余興など準備が進んでいき、10分後にはオークションが始まった。
ルガは手に持った手札を構えて前のめりに座っている。
オークションが始まり、しばらくしてから困惑から覚めたジョセフはルガに質問責めをする。
「ちょっと待てルガ、オーパーツとは聞いたけど…その…何だ、その中から人が出てきて願いを叶えるってのは冗談なんだよな」
「ああそうとも、呼び出せば箱から出てくるが願いを聞き入れてくれるとは思えないな」
「そういうことじゃなくて、じゃあ何だ⁉︎箱から人が出てくるのは確定事項なのか⁉︎」
「確定事項だ」
するとヤスケは心配そうに注意点をルガに伝える。
「確かにここではオーパーツが売ってあるかもしれませんが、偽物の場合だってあるんです、過去にもそう言う事例がありましたから。それに偽物というのは一般人でも買えるような安値が付いてるんです。だから動画クリエイターやこの類のマニアはこぞってこう言ったものを買いに来るんですよ」
「知ったこっちゃねぇわ、これがいくらかかろうと俺は必ず競り落とす」
「「「嘘だろ⁉︎」」」
そして、とうとうルガの目当ての商品の番がきた。
「続いての品物はこちらです!」
その商品はガラガラとローラーのついた台の真ん中に乗せられて登場した。その箱は一辺が約5センチの立方体でテニスボールほどの大きさだった。さらによく見ると外側は茶色く薄汚い見た目をしており、小さすぎて分からないが面にはビッシリと文字が書かれてある。
ステージ上に立っている司会者が箱を指して進行を続ける。
「こちらの商品はこの星から約二光年ほど離れたところにある惑星アテナイから出土したといわれるオーパーツ、グリフォスの箱」
「こちらの商品、価格はなんと千イータから」(千円)
すると、会場の空気が一変し大笑いが生まれた。
アッハッハッハッハッ…
「ハハハハハハ」
司会者も笑っている。
「これはどういうことだ」
「やはり、パチモンだったてこたでしょうか」
「恥ずかしいからルガ、絶対に札をあげないでくれ」
「いやだ、それじゃ千…」
ルガが札を上げようとした瞬間に他にも二人、手札を挙げた人がいた。
「「千イータ!」」
その二人はお互いのことを察知すると次々と値段を上げて落札しようとする。
「1500イータ!」
「3000イータ」
「5000!」
「1万」
「1万5000!」
「2万」
「5万イータ!」
「……10万」
その声に会場の笑いの渦がざわめきへと変化する。
おい、すごいぞ
なんだありゃ、
そしてついには遊びに乗り出す者もいた。
「20万イータ!」
さっきとは違う男の声だ。
「25万!」
またも違う人の声がする。すると、ユウの近くでこんなコソコソ話が聞こえてくる。
「いやよ!あんなの」
「いいじゃないか、遊ぶだけだよ26万!」
27万!
30!
すると最初に札を挙げた二人のうちの一人がおおきなこえで、
「50万‼︎!」
すると、司会者はその人に入札を決めようと指さそうとすると、
「500万イータ」
と聞こえてきた。会場全体がどよめき、司会者は落札者を決定した。
「そちらのお嬢さん、500万イータで入札ぅ‼︎」
すると会場は瞬く間に大きな拍手に見舞われた。入札した女の子はその場に立って一礼し、支払いをするために会場を後にした。
「ふぅー、よかったルガが札を挙げなくて」
「本当によかったのですか、ルガさん」
「違う、もっとヤバいものを見つけちまった」
ルガはそう言うと背もたれに思いっきり腰をかけて座り直す。
「あれ、どっかで見たことあるような…」
ユウは落札者した女の子の様子を見ている。するとそこへついさっきまで値段を競い合っていたもう片方の女の子が走って落札者の跡を追いかける。
ユウと一緒にその様子を見ていたルガもまた、会場を後にした二人の女の子の後を追いかける。
「チョッ待て、どこ行くんだよ」
「交渉してくる」
「ハァ⁉︎」
その一言だけ伝えるとルガはすぐ様に席を立って行ってしまった。ジョセフとユウとヤスケの三人もルガの後を追いかける。
会場を出た先の広い廊下でルガは二人が話し合っているところに直面する。
「たのむ!この通りだ、あの商品をアタシに譲ってください!」
と茶髪の女の子が深々と頭を下げてお願いをする。
「ごめんなさい、これはどうしても譲れないの」
黒い髪で眼鏡をかけた女の子の方は丁重に断るが、もう一方の女の子もなかなか引かない。
「本当にお願いだ、金なら何倍にしても払う」
「しつこいですね、譲れないものは譲れないのですよ」
ルガはその二人の様子を遠くの方から眺めており、その後ろにユウとジョセフとヤスケが見ている。
「これは交渉なんて無理な話じゃないか?」
「確かに難しいな」
だけど、あの面影どっかで見たことあるような…「思い出した!」
ユウはつい、声を上げてしまい二人の女の子にルガたちのことがバレた。
「誰ですか?」
ユウは堂々と登場するなり二人に近づいて
「やっぱり、アリサちゃんだよね」
この言葉に黒髪の女の子は目をパチクリさせる。
「ユウさん!」
「あの時はありがとうございました、私が今ここにいられるのもユウさんのおかげです」
アリサは丁寧にお辞儀をしてユウと目を合わせる。この二人以外はキョトンとして黙って二人の様子を見ている。するとここでユウが話を切り出す。
「それで…悪いんだけどさ、さっきアリサが買った物を譲ってくれないかな」
ユウは恐る恐る聞いてみる。
「そうですか、それは少々困りましたね」
「実はこれ私のお兄様にプレゼントしなければ行けないのですが」
そんな物をプレゼントするのか?とユウは一瞬思ったが、ルガから聞いた通りのすごい箱だと言うことを思い出した。
「だから、その…」
ユウはそこから言葉が出ずルガたちもユウを見つめて沈黙している。するとそこに静かな足音を立ててアリサの後ろから聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「おやおや、これは珍しい顔ぶれですね」
一同はほぼ同時にアリサの後ろに目を向けるとそこにはアルカディアがいた。
「お前、こんなところで何してやがる。ヤスケ!こいつ逮捕したんじゃなかったのか」
「いいえ、確かにあの後署には連れていきましたが上の者から釈放令が出たんですよ」
ヤスケは立て続けに質問する。
「あなた、こんなところで一体何をしているのですか」
アルカディアは困り顔で質問に答える。
「何をしているも何も、私の妹のお迎えに来ただけですよ」
「アリサはアルカディアの妹だって本当なのか」
ユウは怖い顔をしてアリサに問いかける。
「はい!私の自慢のお兄様ですの」
ユウの質問ににっこりと笑って返す。するとルガは、
「一つだけ二人に質問して良いか?お前たちはその箱を使って何をするつもりだ」
その一言にユウとヤスケとジョセフはハッとする。
「残念ながらお答えできません」
ヤスケは落ち着いた表情で、
「やはり、あなたは私たちの取り調べの時も一切口を割らなかった、いったい何が目的なんですか」
どうせ、答えられないと言い訳すると思いますが。だが、アルカディアは意外な反応を見せた。
「私たちの目的ですか…そうですね、結論から言うと神を作り出すことです。これ以上は何も言えません」
ユウとジョセフは何言ってんだコイツ、と思うが実際に悪魔を呼び出したと言う事実があり、神を作り出すと言うのも意外とやり遂げてしまう可能性もある。
「何言ってんだお前、神を作り出すとかアタシのオヤジみてーなこと言ってる」
そう言ったのは今までアリサに箱を譲ってもらえるように交渉していた女の子だ。
「てか、お前!なに人の交渉の邪魔してんだよぶっ飛ばすぞ!」
女の子はそう言ってユウを指さす。
「そろそろ私たちはお暇します、こんなことに付き合ってられないので」
そう言ってアルカディアは右手を前に出す。
「危ない!」
そう叫んで反応したのはルガだけだった。
「止まれ…」
アルカディアとアリサとルガ以外の四人は
アルカディアの発動した魔法にかかり、体の動きを封じられてしまった。
それではいきましょう、とアルカディアとアリサはそのまま廊下を進んで行って見えなくなってしまった。
「クソ、なんなんだよコレ!」
女の子は叫んでアリサたちを止めようとするが彼らは一向に止まる気配がない。
「おい、ルガなんで追いかけねんだよ」
ジョセフは廊下の脇にあるソファーで座って動けないジョセフたちの様子を眺めている。
「考えてみろ、これからアイツらを追いかけたって止められる保証はない、それにアイツらにはバックがいるんだ、今やったところで治るはずがない。今は泳がせておくべきだ」
四人とも体を動かそうとするが全く体が動かない。
それからしばらくして、魔法が解けて四人は体が動かせる状態となった。それぞれは動くようになった自分の体を見たり、手をグッパしたりなどして体に異常がないかを確認した。
「なんだったんだアイツ」
「神を作り出すとかなんとか言ってましたが」
「そんなことよりルガ!なんで泳がせておく必要があるんだよ」
「だから言ったろ、アイツらにはバックがいるって今のお前らじゃ到底勝ち目なんてねーよ」
「元チートの序列6位がいるのにか?」
この言葉に女の子はピンと反応する。だが話はどんどん進んでいく。
「だってジョセフ、全力出せないんだろ?」
ヤスケとユウはジョセフを目を向ける。女の子も同じようにユウとヤスケの目線をたどってジョセフを見る。
「なんで…何か訳があるのか?」
ジョセフは少し躊躇ってから答えた。
「…………ねえよ」
「でも、やっぱり」
「ストップ!ストォーップ!」
「ねぇ、なんなの?全然話が見えてこないんなけれど。それに人の交渉の邪魔しといてよくそんな呑気でいられるよね」
するとユウは申し訳なさそうな顔をして素直に謝った。
「ごめん、確かに私たちは君が箱を手に入れるための交渉の邪魔をした、本当に済まない」
「あ、謝れば良いってもんじゃないわ」
「ならどうすれば良いのですか?」
ヤスケは女の子に聞いた。
「私をあなたたちの仲間に入れなさい!」
「「「‼︎⁉︎」」」
そーくるか、どおするよ?とりあえずルガさんに聞くしかないですね。ジョセフとヤスケはルガに目線を向ける。
「じゃあ一つ聞こうか、君は闘いの面に関しては何ができる?」
「火属性の魔法や魔術ならほとんど使いこなせるよ!」
女の子は自信満々に言う。
ルガは女の子の姿をよく見ると白とオレンジの民族性のある衣装を着ている。
「それともう一つ、俺たちの目的はついさっき出会った奴の何千、何万、何億倍も強い奴と戦うことだけど」
「大丈夫!アタシも同じような目的だから」
「同じような目的って、具体的には?」
「アタシを馬鹿にした奴らを見返すのさ、そのためにあの箱を使って力を手に入れようとしたんだけどアイツらに取られたってわけさ」
「じゃあ最後にもう一つ、君の名前は?」
「アタシの名前は…タイカだ」
「じゃあよろしく、タイカ」
ルガは右手を出すとそれに応じてタイカも右手を出して握手をした。
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