チート狩り

京谷 榊

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第二章 不思議な力たち

十四話 事件

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 次の日、四人は朝早起きして昨日と同じ場所に向かう、出発際にロスとジョセフが並んで会話をしていた。
「ジョセフさん、今日は何をしますか?」
「何もすることなんざねえよ昨日で全部終わっちまったからな」
後ろ髪を親指以外の四本指でぽりぽりかいてあくびをしては眠たそうな顔で不安定にゆらゆらと歩いている。
「悪いな、今日も私の練習に付き合ってくれて」
「いいえ、全く問題ありませんよ。それにしてもたった1日であんなに魔術を使えるようになるなんて並大抵の人じゃそんなこと出ませんよ」
ロスはとにかく現在進行形で自分が尊敬しているユウを褒めまくった。
「へ~…それならロスは初めての1日でどれくらいの魔術を取得したんだ?」
彼女の質問にロスは墓穴を掘られた。
「え、え~っとそれは…ですね…」
そこにガーネットがトドメを刺した
「ロスくんは君のおよそ五倍の魔術や魔法を1日で取得したんだよ」
「へ~五倍もか、すごいじゃないか」
ユウはロスの目を見て言う、その反応として下を向いてロスの声はだんだん小声になっていく。
「そそ、そんなことあ、ありませんよ…」
「ロスくんは元から魔素量が他に人より多かったからね、一日中練習してもバテなかったのはロスくんだけだよ」
「だってさ」
音楽で言う一拍置いてユウは一言そう言った。ジョセフも連なって
「いい加減、自分はすごいって認めたらどうだ」
と言う言葉に感化されロスに自信が湧いてくる感じがした。
ロスは両手をグッと握って言った。
「自分はすごい。」
「そろそろ着くわよ」
ガーネットは周りの三人に告げると自分たちの行手をそっと指さした。
その指さした向こうには大きな城があり、まだ朝という薄暗さと朝日の逆光によってできた城の影はまるで数百年間誰一人立ち入っていないような廃城の不気味さとまた、美しさも醸し出している。
それを見てジョセフは、
「綺麗だな」
と一言、その一言に誰一人反応せずジョセフは少しモヤモヤした気持ちで三人と一緒に、その綺麗な城の中絵入っていく。
 中に入りまた、ワープホールの中へ入っていくと一気に図書館についた。
今はまだ朝だからなのか昨日よりも少し人の数が少なく無尾に近い状態である。
「そう言えば、ここってこんな朝早くからやってるんだな」
「違うよ、ここは休みとか無くて24時間ずっと営業しているのよ」
「マジか?」
「うん、この建物は有名な施設でね、特にこの図書館にはとても貴重な本があったりするから監視体制が厳重なんだよ」
「だけど年に2、3日ほど休業したりするかな」
この放っておけば長くなりそうな話にジョセフは口を出した。
「いい加減どこかに座ろうぜ」
「そうだね」
ガーネットは簡単に返した。
ロスとジョセフが席につき残りの二人が席につく前にガーネットは提案をした。
「あ!そうだ、そんなことより飛行の練習でもしない?」
「飛行?杖などを使って空を飛ぶやつですか」
「いいんじゃないか、ルガたちも帰ってこないし」
「僕たちはここで本でも読んでますよ」
既に席について休んでいる二人に背中を押され、嬉しい気分と申し訳ないような気持ちが混ざった表情を最後にユウはガーネットについていった。

ユウとガーネットは滑空場に着くとそこには誰もが魅了するような絶景を目の当たりにした。
「綺麗ですね」
「そうよ、この時間帯にここに来るとこの景色が見られるの、私はこれが好きで修行中嫌なことがあったら、よくここにきてたわ」
二人は清々しい日の光を感じた。ここから遥か遠くの場所にある地平線から朝日が登ってくる様子を二人は見ていた。
しばらくその光景を眺めあさひが完全に登りきるとユウは練習モードに切り替わった。
ガーネットは先生としてのスイッチが入り、ユウの目を見て話す。
「それじゃあ、まずは私の杖を貸してあげるから」
そう言うと自分の杖を瞬時に大きくして両手で持った。
「あなたはまず、私が杖の前の方に乗るから後ろの方に乗って、まずはそれでイメージを掴んでみてね」
と二人は滑空場の端の方まで来るとガーネットは杖を跨ぎ、ユウはそれを真似して前の師匠の肩を掴んだ。
「捕まるのは私の方じゃ無くて、杖を掴んで」
「はい、」
緊張気味にユウは自分がまたがっている杖を力強く握った。
「こ、こうですか?」
「もっと体全体の力を抜いて、そんなに強く力んじゃだめ、リラックスして」
ガーネットは前を見ながらそう言うとユウは深呼吸して心の準備が整うと返事をした。
「それじゃあ、行くわよ!」
ガーネットは勢いよく地面を蹴り前に飛び出すとまっすぐ前へ飛んでいった。
「どお?周りを見て、怖くないでしょ」
ユウはぎゅっと閉じた目をゆっくり開ける。
するとガーネットはいきなり戸惑うようなことを言い出した。
「初心者にはきついかもしれないけれど一気に急降下するわよ」
ガーネットは杖の先を下に向けハイスピードで下へ降っていった。
「キャーーーーー」
「…っ…」
ガーネットがはしゃいでいる中ユウの口からはぐうの音も出なかった。
そしてガーネットは少しずつスピードを落としゆっくりと同じ施設の飛行練習用の着陸場についた。
「どお?本当は初心者が飛行なれするにはああ言うやり方が一番なんだけれど」
「やっぱり、刺激強かった?」
ガーネットはそっとユウに話しかけるが大きすぎる衝撃でユウは杖から降りた後もフラフラしている。
「はい…。」
「でももう大丈夫です」
ユウ本人の様子を見ると全く大丈夫ではない。それに心配したガーネットはお節介をかける。
「大丈夫?ヒールかける?」
「やっぱりお願いします…」
ガーネットは回復の魔法をかけユウの酔いを覚ました。
「少し休んでから練習する?」
「そうですね、あんなことがあった後にすぐにやれって言われてもできないことはありませんが、嫌なことを思い出しますね」
ここでユウはルガと初めて会った時とその後3ヶ月ほどの修行をさせられたことをガーネットに全て話した。
「へーそんなことがあったんだ。すごいじゃん」
この話をしている間に彼女自身の気が変わりすぐにでも練習を再開したいと言い出した。
ユウの話が終わることには二人とも滑空場に着いていた。
「それじゃ、私は下の着陸場で待ってるから心の準備が出来たらいつでも来るといいわ」
「はい!」
ユウはやる気に満ち溢れた元気な返事をした。

それから10、20分と待ってもユウは降りてこなかった。
まさか怖気付いたのではないかと思ったが数10分後に来たのは彼女本人ではなく戦闘員からの報告だった。

それから数時間後、
「今に至ると言うわけか」
「はい」
ルガとロスは初めてにしてはすっかり意気投合している。呪いを負ったカイト、シリュウそしてユウは既にワープホールでエターナルシティに移動しており、ルガとロスだけがこの街に残されることになった。
二人は今現在、今まで自分らがいた病院から巨大な城、図書館を目指して商店街を歩きながら話を進めている。
「ここからエターナルシティまでおよそ数千キロあると聞いて実際に調べてみましたが、ここからエターナルシティまでおよそ四千キロあるそうです」
「そぉ~かー、四千キロもね。ところで何で僕らは汽車に乗れないのかな?」
ロスは何の問題もなさそうに話し出した。
「実は僕、移動手段で使われる乗り物や一部の公共機関で出入り禁止になっているんです」
「自慢げに話すことじゃないよ?」
話を聞くと彼は周囲の魔素を勝手に吸い込んでしまう体質らしい、それで彼自信が気を遣ってあまり人の多いところには行かないようにいているらしい。
「まぁ~実際俺も似たようなところあるからな」しかもお金ないし。
そんなことなど気にもせずワクワクした様子でロスは言い出した。
「それでは徒歩で四千キロ先の都市まで行くのはきついかもしれないので、ここから八十キロメートル先にある都市に行ってそこからいくつかのワープホールを経由してエターナルシティまで行きましょう」
「まて、その前にいくつかやることがあるから、それが終わってから行こう」
まず、二人は図書館の前に着くとガーネットと七人の戦闘員たちはこれから戦が始まるかのような真剣な面構えで待っていた。
そこに全く空気を読まずにルガは話しかけていった。
「すいません、お待たせしてしまって」
「いえ、そんなことありません」
ガーネットはとてもお茶目な性格とは思えないような話し方また、緊張混じりのニコッとした表情を見せ、ルガとロスを出迎えた。
「それでは、これから私たちはエーテルシティにこの重要危険物を持ち帰り調査します」
いつになく真剣な様子の師匠にロスは驚いていた。
初めて見た、師匠のこんな真剣な顔。
するとロスの驚いた顔を見てガーネットは母親が子供を慰めるときのような温和な表情で
言い放った。
「こんな急な形でお別れすることになったけれど、いつでも戻ってきていいんだからね」
「大丈夫ですよ心配いりません、今度帰ってくる頃にはもっと立派な魔法士になって帰ってきます」
ガーネットの言葉に相変わらず悠長に応えるロス。
「それともう一つ、これからのやることなすこと無茶してもいいけど、無理しちゃダメよ」
ガーネットの表情とその言葉にロスは一切声も出さずに二人の話は終わった。
「それではルガさん、これから私の弟子のことをよろしくお願いします」
「わかりました。それではわたくしたちはこれから今まで滞在していた村に戻り後片付けを済ませようと思います」
話し終えたルガは方向転換しようとするが、それをする前に引き止められた。
「すいません、最後に一つよろしいですか?」
「何でしょう」
「大変伝えづらいお話なのですが、あなたからは出会った時から不思議と嫌な雰囲気がしますし、なぜか…あなたとは初めて会った気がしないのです」
「そう…ですか」
「すみません、今の話は無かったことにしてください」
申し訳なさそうな感じの愛想笑いで謝った。
「じゃあね、ロスくん」
「はい、師匠。」
そしてルガとロスは振り返り、手を振りながら去っていったが人混みの中に入るとすぐに見えなくなってしまった。
すると七人の戦闘員のうちの一人がガーネットに話を切り出す。
「それではガーネット様、我々についてきてください」
「ええ。」
ジョセフもロスくんも大丈夫かしら、あのユウと、あとルガって言う人にも何か悪いものを感じるわ、二人ともいい人だといいのだけれど。
それに…ユウ、まさか君が〝あの〟種族の生き残りとはね、あの人たちはそのことを知っているのかしら。
ガーネットは意味深な思考を残してその場を去っていった。

そしてルガとロスはというと、二人はアンデットが出没する所の近くの村に行き、村に人に大まかな現状報告と犠牲になったカーナさんの寝顔を拝み、森中に仕掛けてあるトラップを解除してルガとロスはこの年を出ようとした。
「大変申し訳ございません、カーナさんを守りきれず…」
ルガはそう話すと村人は
「そう気を落とさないでください、彼女やあの怪物に殺されていった人たちの無念を晴らしたのですよね?」
「その事については、また後ほど戦闘員の方々から連絡があると思うので言えませんが、あなた方村人はもう安全ですよ」
と言うとその話を聞いていた村人たちが明るい表情になり大はしゃぎまではいかないがほとんどの村人が喜んでいる。
その場を足早に去り、森の方へ行くとルガはロスに魔法についてのことで話を始める。
「悪いな、旅立ち早々こんなところに連れてきちまって」
「いえ、僕は平気です、お亡くなりになった人がいるのであればしっかり弔ってあげなければ行けませんしね」
「そうだな、お前の言う通りだよ」
「今回は俺のわがままに付き合ってもらったお礼にすげー物を見せてやるよ」
ルガはロスの前をゆっくりぶらぶらと歩きながら言う。
「まずは質問、トラップや魔法を解除するために使われる魔法は何だ」
「無形魔法のリスィジョンをかけて解きます」
「そう、そしてその魔法を使った時の見た目は?」
「効果がある場合は青色に光り、効果がなかった場合は一瞬だけ白く光ってすぐに消えます」
「よし、それじゃあ無形魔法を目にみえるように象化するにはどれくらいの魔力がかかる?」
「術式によりますが、最も適正率の低い氷魔法は高い確率で失敗しますし、使用する魔素の量も半端じゃありません」
「だろう?けれどもそれはこの世界での基本だ宇宙に行くとそれよりもさらに別な場合だってある、これが一つの例だ」
と言うとルガは大空に向かって両手を広げて言った。
「大自然よ私の望みに応えよ、この森に雪を降らせよ…リスィジョン」
すると天気が急に荒れ始め気温が低くなり、空がくもで覆われるとともに雪が降り出した。
「すごい、あんな一瞬で雪を降らせるなんて一体どんな魔法を使ったのですか」
ロスはそう聞くとルガは
「それをこれからの旅で見に行くんだろ?」
だけ告げ、前を振り向くと雪が積っていく。
そして雪が積もると次は、目の前の積もった雪が青く光だし森全体が幻想的な青色の輝きを見せ、その光が何事もなかったかのように瞬く間に消えてしまった。
「それじゃあ俺は、この森の中にちょっとした用事があるから今から行ってくる」
そう言い残すとルガは森の中へ入り、10分足らずで帰ってきた。
「そういえば、中に爆発系のトラップを仕掛けてあると言っていたけど大丈夫かな」
ロスは若干不安そうな表情でルガの帰りを待った。
ロスが常日頃から持参している魔術または、魔法でしか解けない知恵の輪で遊んでいるとルガが帰ってきた。
「ルガさんお帰りなさい」
「おう、ただいま」
ロスは続けて質問する。
「中で何をしてきたのですか?」
「何もしてないよ、忘れ物があった気がしたけど何もなかったから」
「そうですか」
ロスはその忘れ物が何なのかを聞こうと思ったがさほど気にならなかっため、そのことを聞くのをやめ。
「それじゃあ行きますか」
そう言って二人は旅路についた。

それからまた数時間後、今現在に戻る。
二人は道も果てもない草原をただ歩き続け、数時間が経過した。そんな自分たちの目に見えるのは雲ひとつない透き通った空と緑一面の草原そして遠く長々と連なる山々。
二人は道なき道を進み林の中へ入り、しばらくしてから陽が落ちて夜が来た。
このまま、林の中を進んでいくのは危険だと判断し、二人はその日林の中で野宿するこのにした。薪を集め、火を灯し、近くの川で魚を取り腰をかけるのにちょうどいい丸太に腰を据えて二人で一緒に食べ、過ごした。
「まさか、旅の1日目からキャンプすることになるなんてユウと一緒だな」
ルガは目の前の焚き火とその奥に座っているロスを見て話す。
「そうですねでも、憧れのユウさんと同じなら僕は嬉しいです」
夜の森の静けさとパチパチと鳴る焚き火の音に耳を傾け、リラックスしている中ルガの質問に答えた。
「そういえば、ルガさんはガーネットさんに覗かれなかったんですか?」
唐突にロスは意味の分かりにくい質問をした。
「覗かれた?」
「はい、ガーネットは特異能力を持っていて」
「特異能力ってあれか?修行積んで得る言わば必殺すぎるみたいなあれか?」
「はい、ガーネットさんには他人の過去を覗く能力があるんです」
「他人の過去?俺は多分大丈夫かな」
ルガは何故か少し自信ありげに言った。
「それにしても過去を覗くなんて凄い能力だな」
「はい、まぁ、でも覗けるのは過去だけでその人の感情や考えてること、本人の記憶は覗くことはできませんがね」
「いや、過去を覗いている時点で記憶以上の物が見られると思うよ?」
「そうですね」
こうして楽しそうに会話をしている二人に予想外のことが起こった。
「あなたたち!こんな所で何をしてるの!」
その声は甲高くまた、子供っぽい声をしている。ロスとルガの二人は驚き声のする方を向くと、そこにはロスより少し背の高い白に近い水色の長髪の女の子だった。





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