逃げられない檻のなかで

もうの

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その後

翌五月5※

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 今日で約1ヶ月。正人は明日帰ってくる。帰ってくるまで、あと少し。

 今日もまた、料理を作りすぎた。揚げすぎたからあげはちゃぶ台の上で冷えきっている。片付けもせずに居間でボーッとテレビを見るが、内容なんて入ってきやしない。一人だけの駐在所は、とても広く感じた。

「あれ、おかしいな……俺」

 ふと、目頭に熱い感触がする。視界も段々とぼやけてきて、絶えきれずとうとう大きな雫を流した。

「都会にいた時は一人でも大丈夫だったのに……」

 退職手続きの為に都会へ戻った1ヶ月。あのときはこんな感情を抱かなかった。なのに今は涙が全く止まらない。ポロポロと涙がこぼれて、ズボンにシミを残した。

 いや、気づいているんだ。理由なんて。
 きっと、この村に、一人でいることが耐えられないんだ。正人との暖かい思い出が詰まった、この村に。

 寒い、冷えきった家に、一人きり。ばあちゃんのあの目を思い出す。
 俺は、もう、世界で、一人きり。

「っ!!」

 堪えきれず二階へと駆け上がり、勢いよく俺達の部屋の扉を開け中に入った。

「正人っ……正人っ!」

 電気も点けずにガシャガシャとクローゼットの中を探す。目当てのものを剥ぎ取りぎゅっと抱き締めた。そのままふらふらとベッドに倒れる。

「正人……!」

 握りしめているものは、正人の制服。警察官の服が正人を思い起こした。俺を愛してくれる、唯一の人を。
 俺は一人じゃない。大丈夫、大丈夫。そう言い聞かせて、自分を落ち着かせた。

 この制服を握っていると、まるで正人に抱きしられているようで安心する。
 この制服は一番最初に襲われた時に着ていた服と一緒のもの。倒れたこのダブルベッドは正人と体を重ねた記憶を思い起こさせる。

『気持ちいいか?』

 何回も何回も激しく。

『まだ終わらないからな』

 燃えるような程熱い視線を携えて。

『……遥』
「……ん」

 1ヶ月間触られなかった体が、疼いた。


 熱い、熱い、熱い。
 ネクタイをほどき、シャツをはだけさせる。ベルトを抜き取り自分のちんこを取り出した。横向きに寝て、少しだけ頭を持ち上げているそれを手に取り、上下に擦る。

「う…んぅ…はぁ…」

 口もとには正人の制服だ。既に涙と涎でぐちゃぐちゃになっている。でも、手放す事なんて出来なかった。
 ごめん、後で洗うから。今だけは貸してくれ。
 体を丸めて一心不乱にちんこを擦る。

「っ…なんでぇ…!」

 けれど、もう立派に勃ちあがっているのに、一向に射精しない。ずっと先走りを流しているだけだ。

「……まさか」

 不意に正人の言葉を思い出した。

『俺がいないと駄目な体にしてやるよ』

 俺は本当に正人がいないと駄目な体になってしまったのか…?後ろの刺激がないとイケない体に。
 そんなことないと首を振るが、どれだけ擦っても射精しない。むしろ後ろがむずむずとしてくる。

 自分で後ろを触るのは…でも、もうこれしか手がない。
 少し迷ったあと、俺はパンツとズボンを脱ぎ捨て下半身だけ裸になる。そしてゆっくりと自分の後ろの穴に指を入れた。

「ぅっ…!」

 キツイ。全く使ってなかったからか、固く閉ざしている。正人がしてくれるようにゆっくりとナカを弄くる。すると自分のイイところを見つけた。

「あぁっ!あっ、ふぁっ……」

 涎をだらだら流して喘ぎ続ける。久しぶりの快楽に口を閉じることができなかった。自分の前立腺とちんこを刺激して射精を促す。

「あっ、うっ……ふっ」

 気持ちいい。気持ちいい。でも、足りない。
 出ないんだ。どれだけ前を触っても、後ろを触っても。
 また涙が溢れてくる。ぎゅっと正人の制服を握りしめた。

「うっ……うぅっ……」

 ああ、気づいてしまった。
 違うんだ、出ないのは性的な刺激じゃないんだ。この行為が愛し合う為のものだと気づいてしまったから。
 一人では寂しすぎるんだ。


「遥!!」

 いきなり、バタンと大きな音を立てて扉が開かれる。見上げた先、そこには大きく目を見開いた正人がいた。

「まさ、と……?」

 帰って来たばかりなのか、かっちりと紺色の制服を着ている。廊下の明るい光が正人を照らしていた。
 どうして…?帰ってくるのは明日のはずなのに…俺は夢でも見ているのだろうか?

「……遥」

 ゆっくりとドアを閉じ、正人はこちらへと近寄ってくる。廊下の光が閉ざされ、月の光が淡く部屋を照らした。

 トスンとベッドに座り、正人の重みでベッドが軋む。
 俺はただただ呆然と見ているだけだった。握っている制服も、後ろに突っ込んだ手もそのままに。

「……何をしていたんだ?俺の制服を握りしめて」

 そして、一人遊びしている――と、突っ込んでいた指をなぞられる。
 その刺激で、俺はとんでもない姿を正人に見せていることにと気づいた。 急いで手を抜き去り、起き上がって正人の胸ぐらを掴む。

「お前のせいで、俺は……!」

 怒鳴ってやりたかった。責めてやりたかった。
 なのに、優しく笑って手を握ってくるもんだから、その怒りは収まってしまう。

 もう、さっきからどうしようもないんだ。
 正人の近くにいるだけで、動悸がする。
 正人が触れる度、ピリリと電流が走る。どこもかしこも気持ちいい。
 正人がいるだけで、俺は満たされるんだ。

「くそやろう、本当にお前がいないとダメになった……!どうにかしろよ!責任とれよ!」

 お前がいないともう俺は駄目なんだ。
 心も、体も叫んでいる。

「正人がほしい。俺を奥までついて」

 その瞬間、むさぼるような口づけをされた。息まで食われてしまうようだ。舌と舌が絡み合い、ぴちゃぴちゃと卑猥な音が鳴る。

「あっ、ふっ……ぁっ」
「遥っ……!」

 ああ、気持ちいい。もっとこうしていたい。カラカラだった大地に水が染み込むようだ。このまま俺の望むものがくる。そう思ってたのに。
 正人は途中で止めてしまった。肩を押され、唇と唇が離れる。離れたくないとでもいうように、銀色の糸が俺達を繋いだ。

 なんで、いつもはがっついてくるのに。なんで、今日は。

「……急いで帰って来たんだ。だから、汚いし」

 それを聞いて、くしゃりと顔を歪めてしまう。
 なんで、なんでだ?お前そんな事気にする奴じゃないだろ?
 俺が、今までそっけない態度をとっていたからか?だから、愛想つかしたのか……?
 考えたくもない想像が、俺の中で駆け巡った。

「まさと、おれ、おまえと……」
「……服も着替えないと。」

 やんわりと続きの行為を否定されてしまい、止まった涙がまた出そうになった。1ヶ月間、一人だった俺の心は簡単に悪い方へと考えてしまう。
 こんな愛想のない俺なんか、見放されても仕方がないんだ。どうやったら、お前は振り向いてくれる?俺で気持ちよくなってくれたら、お前は振り向いてくれるかな?
 なら、今まで正人がしてくれたように、俺も沢山奉仕しないと。

「……汚れが気になるなら、俺が綺麗にしてやるよ。」
「遥っ!?」

 制服のボタンを外し、上着とシャツを脱がす。服を床に投げ捨て上半身を裸にした。
 鍛えられた体にゴクンと生唾を飲む。正人は驚いた顔で俺を見ていた。

「……今から、気持ちよくしてやるからな。」

 ペロッと首筋を舐める。体を震わせる正人に、いとおしくなった。
 でも、これだけでは足りない。もっと、もっと俺で感じて欲しい。

 ベルトを外して、ズボンのジッパーに手をかける。ゆっくりと下ろし、ガチガチに勃っている一物を取り出した。
 なんだよ、お前も反応してるじゃないか。

「遥、何を……」
「正人、キレイにしてあげるな。」

 微笑んだあと、ゆっくりと顔を下げていく。そしてぱくりとちんこを食べてやった。
 ビクッと正人は大きく反応する。嬉しい。ちゃんと感じているみたいだ。

 こんなこと、いつもはしない。むしろ避けていた事だ。でも心が弱っていた俺はすがるようにそれを舐めた。正人を気持ちよくするには、これぐらいしないと。
 口の中に全く収まらないちんこを一生懸命ペロペロと舐め、収まらない部分は両手で擦った。舐める度に口に広がる独特な苦味。でも、正人のだと思うと舐められた。

「んっ……はぁ、ふっ」

 犬や猫がする伏せのような状態で、正人のちんこを一心不乱に舐める。もっと舐めようと体を動かしたら、俺のちんこがベッドに擦れた。

「ふあっ……!!」

 突然の快感に、腰が震える。俺の体は最高潮まで高められていた事をすっかり忘れていた。
 そのせいで正人が現れてからも、俺のちんこはずっと勃起したままだった。だからやっと来た快感に、俺のちんこは喜んでいる。
 その快感を捉えようと上下に動く腰を止めることは出来なかった。

「あっ、ああっ、んあっ……ふぅっ」

 気持ちいい。腰が止まらない。ベッドにちんこを擦りつけて喘ぐ。駄目だ、俺が気持ちよくなるんじゃなくて、正人を気持ちよくさせないといけないのに。けれど浅ましく腰を動かしてしまう。

 すると、ふいに手を頭に置かれた。そのお陰で、少しだけ正気に戻る。思わず正人を見上げると、いいこだなとでもいうように、頭を撫でられた。止めようとせず、優しく触れるその手が嬉しくて、目を細めた。

「っ……!」
「ふっ……!?うっ」

 急に正人のちんこが大きくなる。口の中が急に圧迫され、苦しくなった。

「遥、もうっ……」

 そう言うのに、手はがっしりと俺の頭を掴んでいて離さない。このまま舐めて欲しいと言われているような気がして、頭ごと動かし射精を促した。正人のちんこから先走りが漏れ、じゅぶじゅぶと厭らしい音が鳴る。

「遥っ……悪い!」
「っ!」

 食いしばるような声を出したあと、正人は俺の口の中にだした。大量の精液が口の中に満たされる。
 これはっ…
 噎せかえる程の男の匂いとドロリとしたその液にちょっとだけ怯んでしまう。でも外に出すことなんて出来なくて、俺はそれを飲み込んだ。

「遥っ…飲んだのか!?」

 慌てて正人が話しかけてくるが、俺の感心は目の前のちんこだ。せっかく綺麗にしていたのに、また汚れてしまった。それに出したせいで萎えてしまっている。これじゃ、奉仕が出来ない。

「もう一回綺麗にしないとな」

 俺は再びちんこをペロペロと舐め始める。飲みきれなくて飛び散った精液やまだちんこの中に残っている精液を全て舐めとった。正人は顔を真っ赤にして歯を食い縛りながら俺を見ている。初めて見る顔だ。俺がそんな顔にしていると思うと嬉しかった。

「はるか、ちょっ……」
「はぁっ…んっ……」

 ずっと刺激を続けていると、また正人のちんこは再び反り上がってくる。まっすぐ勃ち上がった姿を見て、満足げに微笑んだ。

 そして体を起こし、正人の体に股がる。手は正人の首へと回した。正人はただただ顔を真っ赤にして俺を見ている。

「は、るか……」
「止めてっていっても止めてやらないからな」

 ふふ、と笑いかけ、そして腰を少しずつ下ろした。こんな体勢初めてで、腰がガクガクと揺れる。

「あっ……!」
「っ……!」

 正人の鈴口が俺の穴に当たった。その刺激に思わず震える。すると正人が腰を支えてくれた。正人の力も借り、ゆっくりと入れていく。一番大きな部分が入り、あと少しだと思ったその時。
 カリが、俺のイイところに当たった。

「あああぁぁぁあっ!!」
「う……!!」


 その刺激に堪えきれず、一気に腰を落としてしまう。直腸まで突かれ、正人の腹筋でちんこを擦られた俺は射精してしまった。
 あんなに出なかったのに。正人が触れただけで、俺は。

「遥……一体どうしたんだ」

 正人が困惑した声で俺に聞いてくる。
 そうだよな、いつも素っ気ない態度をとっていたのに、いきなりこんなことされたら困惑するよな。
 でも、俺は耐えきれなかったんだ。お前がいない生活に。
 腕も、足も絡めて全身で正人にすがりつく。

「……寂しかった。辛かった。この家がとても広く感じるんだ。ご飯、間違えて二人分用意してしまうんだ。一人で寝るベッドは冷たすぎるんだ……!!」

 体を起こし、両手で正人の顔を包む。キラキラ輝いている瞳を見つめて、告げた。

「俺だってお前がいない生活なんて考えられない」
「遥っ……」
「正人、大好きだ。だからもっと、ずっと俺を求めて」

 そう言った途端、いきなりベッドの上に押し倒された。繋がったまま押し倒されて、思わず声を上げてしまう。

「ひゃうっ!」
「やっと堕ちてきてくれた……」

 射ぬくような、剣呑ともいえる視線。絶対離さないと全身から伝わる。ああ、これが俺は欲しかったんだ。

「よく頑張ったな。ご褒美に奥まで突いてやるよ」
「いっ!あぁっあっ!」

 いきなりちんこを動かされ、ビクッと震えてしまう。でも激しく求められることが嬉しくて、思わず笑ってしまった。

「遥っ!ああもう!」
「あぁっ!はげしっ……!んんぅっ!!」

 直腸にぐりぐりと先端を押し付けられ、その刺激に背中を反らす。
 奥の奥まで入っているのに、更に中に入ってこようとする。もう暴かれる所なんてないのに。俺の全ては、正人に暴かれているのに。まだ俺を求めてくれる。それにとてつもない喜びを感じた。

「あっはっ!」
「遥っ!はるかっ!お前は俺のだっもう絶対に離さない……!」

 所有の証を残すように、がぶっと首筋に噛まれてしまった。その遠慮のない痛みが、甘く響く。
 嬉しい。嬉しい。嬉しくて涙が出る。俺を求めてくれて。正人は俺の側からいなくならない。
 もう一人じゃないんだ。

「正人は、んっ!俺のだっ……おれのモノなんだっ」
「遥っ!」
「俺もっ、お前を離さない……死ぬまで、ずっと。」

 お返し、とばかりに俺も肩に噛みついてやる。上手くついた噛み跡に、満足げに微笑んだ。

「っ!!」

 肩を両手で押され、正人と距離が離れてしまう。近くにあった肩も手を伸ばさないと届かない。
 なんで距離を取られたのか分からなくて首を傾げていると、正人の様子がおかしいことに気づいた。
 歯を食い縛り、フーッと唸る。涎もポタポタと落ちてきた。まるで肉食獣だ。
 耐えているのか。そんなことしなくてもいいのに。
 だから、両手を広げ、迎え入れてやった。

「正人、いいよ」
「っどうなっても知らないからな!」

 遠慮など一切なく俺を求められる。
 食いちぎる勢いで首筋を噛まれ、それから腕、胸、体中に噛みつかれた。その間も際限なく直腸や前立腺を刺激される。
 気が狂いそうな刺激に身をよじった。

「あぁっ、あっ!ふぁっ!」
「っ……!!」

 その炎が燃え盛るギラギラとした瞳に、射ぬかれながら噛みつかれることに胸が震える。ああ、もう俺もおかしい。噛み跡を残される事が嬉しいだなんて。

「まさとっ……ぁん、あっ!」
「はるかっ……!」

 片足を持ち上げられ、ラストスパートだとでもいうように激しくピストンされる。
 ねっとりと俺をふくらはぎを甘噛みされ、その刺激でナカを締めてしまった。

「っ!!もう出すぞ!」
「やっあぁぁぁっ……!!」

 最後に俺のイイ所を突き上げられ、俺は果てた。一歩遅れて正人が俺のナカに出す。最奥まで届くその熱を愛おしく感じた。

 はあはあととお互い荒い息をする。
 1ヶ月間セックスしていなかった体はもう疲労困憊だ。体中が軋む。正人もそれを感じたのか、ゆっくりとちんこを俺のナカから出そうとした。

 この熱が、去る。
 そう思った瞬間、正人の腰に足を絡ませて抜くのを止めた。少しだけ目を見開いた正人は優しく微笑みながら、俺を窘めた。

「遥、駄目だろう?そんなことしたら抜けないじゃないか」

 まるで小さい子どもに注意するように窘められ、恥ずかしくなる。けれど、俺が言いたいことはもっと恥ずかしいことで。
 直視して言うことが出来なくて、正人の首に腕を回し引き寄せる。そして頭を正人の首に埋めながら言った。

「…もっと、して」
「嬉しいな…遥がねだるなんて。初めてだ」

 たっぷり味わわせてやるよ。そう呟く正人の目の奥にはまた燃え盛る炎が見えている。
 恋い焦がれていた熱がまたくる、と期待に目を輝かせた。
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