5 / 25
七月初旬
しおりを挟む
梅雨も過ぎ去り、本格な夏になり始める7月。
俺は町内放送でとんでもない事を聞いた。
『紅蛇神社周辺に野生の猿が出現しました。見かけた人は決して近づかないように――』
猿!?野生の猿!?嘘だろ!ここでるのか!猿!そして村内放送で放送されるのか!!
慣れたはずの田舎だったが、久しぶりにカルチャーショックを受けた。野生動物が出たら村内放送で放送されるらしい。
といっても今いる場所から神社は結構離れている。俺には関係ない事だろうと思い、たいして気にもせず俺は仕事を続けた。
1日の仕事を終え、俺は自宅に帰った。
俺の家は村の片隅にある、平屋の一軒家だ。この村にマンションやアパートなど存在しない。だから空き家になっていたこの家を借りたのだ。都会にいた時より安い賃料でこの広さ。俺はこの家を結構気に入っていた。
鍵を差し込み、ガラガラと扉を開ける。
「ただいまーっと」
すると目の前には――猿がいた。
猿だ。どうみても猿だ。玄関のど真ん中に猿がいる。俺の靴を噛みしめながらキィィィィとこちらを威嚇していた。俺は静かに扉を閉め、
「まっまま、正人ーっ!!助けてーっ!!」
急いで正人に電話した。
数分後、正人はパトカーで来てくれた。迅速に行動してくれる警察官の頼もしさたるや。だから正人は駐在さんとして頼られているんだなと今更ながら実感した。
「遥、一体どうしたんだ」
「猿が!猿が俺の家にっ!!」
「分かった、下がっていろ。すまないが、土足で入らせてもらうぞ」
「ああ!構わない!」
警棒を持ち、俺の家に入っていった。俺はドキドキしながらその様子を見守る。数分後、正人は玄関から出てきた。
「どこにも猿はいなかったぞ。どうやら、もう出ていったようだ」
「そうか……良かった……」
俺は正人の報告を受けホッとする。これで我が家の危機は去ったのだ。猿の根城になったらどうしようと内心凄く焦っていた。
「テレビがある居間の窓、鍵が開いてたぞ。鍵閉め忘れたんじゃないのか?」
「あーそこ、ね。鍵閉めるのめんどくさくて……今日は別にいいかなーって思って、閉めてなかった」
「泥棒が入ったらどうするんだ!?こんな田舎でも戸締まりはしっかりしろ!」
正人に怒られる。ぐうの音も出ないほどの正論だ。でもこんな田舎じゃ泥棒でさえ出ないと思ったんだ。まさか猿が出るとは思わなかったけれど。俺はしゅんとして正人に謝る。
「ごめん。今度から気をつけるよ」
「……ここにはもう帰らない方がいいだろう。家の中めちゃくちゃに荒さられていて衛生的に危ないし、また猿がやってくるかもしれない」
「えっ!?ここやっと借りれた一軒家だぞ!?他に借りれる場所なんてこの村ないし…!どうしよう!?」
まさか自分の軽はずみな行動がこんなことになってしまうなんて。ホームレスなんて絶対嫌だ。それだけはなんとしても避けたかった。
「…俺の家くるか?駐在所だけれど」
正人は真剣な面持ちで俺に聞いてくる。俺の悲惨な状況に見かねて提案してくれたのだろう。その提案は非常に嬉しかった。俺には渡りに船だけど…警察のルールとか、決まりとかあるのではないのだろうか?
「でも大丈夫なのか?警察的には……」
「野生動物に部屋を荒らされ家なしになった若者を保護したとでも言っておけば大丈夫だろう」
「確かにそうだけど!!言い方!!」
もうちょっと慮ってくれないかな!
あんまりストレートに言われてしまうとちょっと傷つく。
「元々一軒家を改造した駐在所だ。部屋はいくらだってあるし、またこの間みたいに俺が出れない時には対応してくれるとすごく助かる」
「…分かった。じゃあ、お世話になるよ」
俺は住んでいた一軒家を引き上げ正人の元へ居候することにした。
俺は町内放送でとんでもない事を聞いた。
『紅蛇神社周辺に野生の猿が出現しました。見かけた人は決して近づかないように――』
猿!?野生の猿!?嘘だろ!ここでるのか!猿!そして村内放送で放送されるのか!!
慣れたはずの田舎だったが、久しぶりにカルチャーショックを受けた。野生動物が出たら村内放送で放送されるらしい。
といっても今いる場所から神社は結構離れている。俺には関係ない事だろうと思い、たいして気にもせず俺は仕事を続けた。
1日の仕事を終え、俺は自宅に帰った。
俺の家は村の片隅にある、平屋の一軒家だ。この村にマンションやアパートなど存在しない。だから空き家になっていたこの家を借りたのだ。都会にいた時より安い賃料でこの広さ。俺はこの家を結構気に入っていた。
鍵を差し込み、ガラガラと扉を開ける。
「ただいまーっと」
すると目の前には――猿がいた。
猿だ。どうみても猿だ。玄関のど真ん中に猿がいる。俺の靴を噛みしめながらキィィィィとこちらを威嚇していた。俺は静かに扉を閉め、
「まっまま、正人ーっ!!助けてーっ!!」
急いで正人に電話した。
数分後、正人はパトカーで来てくれた。迅速に行動してくれる警察官の頼もしさたるや。だから正人は駐在さんとして頼られているんだなと今更ながら実感した。
「遥、一体どうしたんだ」
「猿が!猿が俺の家にっ!!」
「分かった、下がっていろ。すまないが、土足で入らせてもらうぞ」
「ああ!構わない!」
警棒を持ち、俺の家に入っていった。俺はドキドキしながらその様子を見守る。数分後、正人は玄関から出てきた。
「どこにも猿はいなかったぞ。どうやら、もう出ていったようだ」
「そうか……良かった……」
俺は正人の報告を受けホッとする。これで我が家の危機は去ったのだ。猿の根城になったらどうしようと内心凄く焦っていた。
「テレビがある居間の窓、鍵が開いてたぞ。鍵閉め忘れたんじゃないのか?」
「あーそこ、ね。鍵閉めるのめんどくさくて……今日は別にいいかなーって思って、閉めてなかった」
「泥棒が入ったらどうするんだ!?こんな田舎でも戸締まりはしっかりしろ!」
正人に怒られる。ぐうの音も出ないほどの正論だ。でもこんな田舎じゃ泥棒でさえ出ないと思ったんだ。まさか猿が出るとは思わなかったけれど。俺はしゅんとして正人に謝る。
「ごめん。今度から気をつけるよ」
「……ここにはもう帰らない方がいいだろう。家の中めちゃくちゃに荒さられていて衛生的に危ないし、また猿がやってくるかもしれない」
「えっ!?ここやっと借りれた一軒家だぞ!?他に借りれる場所なんてこの村ないし…!どうしよう!?」
まさか自分の軽はずみな行動がこんなことになってしまうなんて。ホームレスなんて絶対嫌だ。それだけはなんとしても避けたかった。
「…俺の家くるか?駐在所だけれど」
正人は真剣な面持ちで俺に聞いてくる。俺の悲惨な状況に見かねて提案してくれたのだろう。その提案は非常に嬉しかった。俺には渡りに船だけど…警察のルールとか、決まりとかあるのではないのだろうか?
「でも大丈夫なのか?警察的には……」
「野生動物に部屋を荒らされ家なしになった若者を保護したとでも言っておけば大丈夫だろう」
「確かにそうだけど!!言い方!!」
もうちょっと慮ってくれないかな!
あんまりストレートに言われてしまうとちょっと傷つく。
「元々一軒家を改造した駐在所だ。部屋はいくらだってあるし、またこの間みたいに俺が出れない時には対応してくれるとすごく助かる」
「…分かった。じゃあ、お世話になるよ」
俺は住んでいた一軒家を引き上げ正人の元へ居候することにした。
7
お気に入りに追加
350
あなたにおすすめの小説

もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない
バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《 根暗の根本君 》である地味男である< 根本 源 >には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染< 空野 翔 >がいる。
ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない??
イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する
知世
BL
大輝は悩んでいた。
完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。
自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは?
自分は聖の邪魔なのでは?
ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。
幼なじみ離れをしよう、と。
一方で、聖もまた、悩んでいた。
彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。
自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。
心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。
大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。
だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。
それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。
小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました)
受けと攻め、交互に視点が変わります。
受けは現在、攻めは過去から現在の話です。
拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
宜しくお願い致します。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

花香る人
佐治尚実
BL
平凡な高校生のユイトは、なぜか美形ハイスペックの同学年のカイと親友であった。
いつも自分のことを気に掛けてくれるカイは、とても美しく優しい。
自分のような取り柄もない人間はカイに不釣り合いだ、とユイトは内心悩んでいた。
ある高校二年の冬、二人は図書館で過ごしていた。毎日カイが聞いてくる問いに、ユイトはその日初めて嘘を吐いた。
もしも親友が主人公に思いを寄せてたら
ユイト 平凡、大人しい
カイ 美形、変態、裏表激しい
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる