【完結】君と恋を

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その後の二人

一ヶ月後の解禁話 2※

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 カチッカチッ、と針が進む時計を、裕はソファの上に体育座りしながらじっと睨み続け、今か今かと待ち人を待っていた。

 ダイニングカウンターの上に置かれている、カレンダー。
 それはもうずらりとバツが連なり、夕方、

「帰ってきたらいっぱい触らせてね」

 なんて名残惜しそうに家を出ていった蓮。
 その言葉を思い出しながら、今日から休みだった裕は花丸しか残っていないそのカレンダーを未だ落ち着かない様子で眺め、一ヶ月間セックス禁止令を出したのは自分だというのにザマァねぇなぁ……。なんて一人ごちたが、けれどもあの時、神様から与えられた罰だなんて悲しい事を言った蓮の言葉に、そんな訳があるかと少しだけ腹が立ってしまったのだ。

 確かに以前の蓮がどういう風にしてきたかは知らないが、けれどもそのせいで幸せになってはいけないなんて道理は哀しすぎるだろうと、だからこそ裕は罰という言葉を使って一ヶ月セックス禁止令を命じ、そんなもんぐらいで神様は許してくれるだろ。という意味も込め笑ってやったのだ。


 だから今日この日を待ち望んでいたのは俺だって同じなんだよ。と裕はモジモジと腰を揺らし、先ほどお風呂場で綺麗に洗いしっかりと解しておいたお尻が早く蓮の熱いモノを咥えこみたいとキュンキュンと疼くのを感じて、堪らずはぁと熱い息をこぼしてしまった。

 ……はやくれんとえっちがしたい。

 その事ばかりが頭を占領し、卒論やらなんやらでゴタゴタだったせいもあり年始にして以来約二ヶ月半もしていないせいで、すっかりばかになってしまった。と思いつつ、ちらりと時計を見やれば時刻は深夜の一時を指していて。
 日付が変わり、やっと花丸の付いた日になったのだから一部のみの出勤だった蓮はきっと絶対早く帰ってくる。と確信めいた想いで唾を飲み込む裕。
 その瞬間、ガチャッといささか乱暴に玄関の扉が開く音がして、

「ゆう、ただいまっ!」

 と息を切らした蓮の声が聞こえた。


 バタバタと慌ただしく廊下を走る音が聞こえ、勢いよくリビングへと入ってきた蓮が肩で息をしながら、切羽詰まったような表情をしている。
 それを見て、まさかお店から走って帰ってきたのかよ。と吹き出した裕は愛しさと可愛さでいっぱいになったまま、おいで。と蓮に向かって手を広げた。


「っ、ゆう~!!」

 猪の如く突進し、ラグに膝を付きながらソファの上に座る裕を下からむぎゅむぎゅと抱き締めてくる蓮。
 その体からは色んな香水と蓮自体は吸わないのに染み付いてしまった煙草の香り、アルコール、それから少しだけ汗の匂いがして、裕は首に腕を回しながら汗ばんでいる短い襟足に、指を絡めた。
 下に座っているせいで珍しく蓮の旋毛が見え、その可愛らしい旋毛にちゅっちゅっと口付けてくる裕の唇の感触に顔をあげ、

「ごめん、俺臭いよね。でも今お風呂入る余裕ない。……今すぐ抱きたい」

 なんてすりっと鼻先で裕の首筋を撫で、少しだけ乱れた呼吸のまま甘く切羽詰まった声で囁く蓮に、裕もぞくぞくと背筋を震わせた。

「いいよそんなん。蓮からするこの匂い、嫌いじゃねぇし。……それに、俺ももう限界」

 だなんて裕が笑い、それから容易く張り詰めハーフパンツを押し上げている場所を、蓮の腹に擦り付けるよう腰を揺らした。

「っ、ぁっ、」
「っ、ゆう、」

 ビクンッと身を震わせあえかに息を漏らした裕が、蓮の唇から紡がれた自身の名と熱い吐息に、またしてもビクビクと体を揺らす。
 それすら抱き潰したいと高ぶった様子の蓮が、優しさなんて微塵もない狂暴な獣が牙を剥くよう唇を塞げば、やはり少しだけアルコールの匂いが鼻についた。


「ん、ふ、」
「っ、ん、」

 漏れる吐息がクチュクチュと絡まる唾液の音と重なり、熱い舌がぬるりと咥内をなぶる感触に、背筋を反らす裕。
 重なる互いの舌が、ピチャッ……と卑猥な音を立たせてゆく。
 そのまま上顎を舌先で撫でられ、ぐるりと中をなぶられ、ぞくぞくとした快感に目尻を赤く染めた裕は、すがるよう蓮の背に腕を回した。

 足の間に居る蓮の体を引き寄せるよう開いた足を腰に巻き付ければ、密着した下半身がごりっと擦れてゆく。
 お互いもう完全に勃ちあがっているソレに、高鳴る鼓動のまま長い口づけをしながら、

「あっ、ん、れんっ、」

 と涙声で裕が喘げば、堪らないといった表情をした蓮が性急な手つきで裕のハーフパンツをずらし、それから自身のベルトをガチャガチャと外して、ジーッとファスナーを下げたのが見えた。

「……ぁ、」
「一旦出そっか。俺も、やばい」

 一度強く舌先をじゅっと吸ったあと、唇を艶々と濡らしたままコツンと額を合わせた蓮がそう囁き、甘さと劣情で塗り潰された瞳で裕を見る。
 その猛々しい表情に胸をときめかせたまま頷いた裕が期待するよう腰を少し浮かせば、ズルッと一気にボクサーパンツまで下にさげられ外気に晒された陰茎がぶるっと震えたが、先端からはもう先走りが漏れており、部屋の照明でぬらぬらと照らされていた。


「はは、ガチガチ……」

 なんて笑った蓮が、でも俺も。と目を伏せ自身の陰茎をボクサーパンツから出し、裕の陰茎へとピタッと触れ合わせる。

「は、あ、」

 ドクドクと脈打ち、赤黒く血管を浮き立たせた蓮の陰茎の熱さに短く喘いだ裕の目尻にちゅっと口付けながら、両手で互いの陰茎を握り込み、手を動かした蓮。

 ぐちゅ、ぐちゅ、と溢れた先走りが水音を響かせ、リビングの宙へと溶けてゆく。

「あ、う、ぁっ、は、」
「っ、く、」

 背骨さえも痺れてしまいそうな快感が走り、久々の行為に、……もう無理。と生理的な涙を浮かべ蓮を見る裕。
 美しい切れ長の瞳をくたりと蕩けさせ、ぽろぽろと真珠のような涙を落としては頬を赤く染めたまま、

「あ、ん、れ、れん、も、いく、あ、あぅ、」

 と真っ赤に熟れた唇でそう呟いた裕の噎せ返る色気にあてられた蓮がぐっと顔を近付け、またしても熱い熱い口付けをしかけた。

 ぬるぬると交わる舌。
 ぐちゅぐちゅと耳にまで響いてくる先走りの音。
 強く握られ擦られるたびにバチバチと火花が散るような快楽が全身を駆け巡り、裕が背を丸める。

「んっ、んむ、んんん、んぁっ、」
「っく、」

 蓮の大きな掌に包まれた互いの陰茎がごりごりと擦れ、先走りが潤滑油代わりとなり、ぬちゃっと糸を引いてゆく。
 ぐぷっと先端に爪を立てられ、その鋭い痛みにも似た快感にひぅっと目を見開いた裕が声もなくゴプッと精液を吐き出せば、つられるよう蓮もぐぐっと強く自身を握り込み、白濁を吐き出した。




 
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